[IF.花丸を貰う以前に何かがダメな君たちへ]
※『娘が母子相姦もののエロ本隠し持ってた……』のパロです。ちゃんねる形式ではないのでご注意ください。
※腐表現がっつり
※アホなノリの下ネタ、ネットスラング出てきます
「あああああもう!! 掃除くらい月一でもいいからしろよなあいつらー!」
ガタガタ、どったんばったん、少々の破壊音を出しながら俺は弟である六つ子の部屋の押入れを大掃除している。普段目に見える部分は母さんや兄弟内では綺麗好きに入る方のトド松なんかが偶に掃除しているのだが、普段見えない共有スペースである押入れなんかは好き勝手にごっちゃ煮になってしまっている。なんで押入れなのにこんなに埃が溜まるんだよと思うほどには汚い。ってかこんなぐちゃぐちゃでよく自分のものがどこにあるのかわかるな。
邪魔な前髪をピンでとめて高校時代に使っていた体操服を着て四つん這いになりながら雑巾がけをしていく。弟たちの持ち物なんて見れば大体どれが誰の物かなんてわかるから、とりあえず適当にそれぞれの引き出しやスペースに敷き詰めていく。どうせ二ヶ月か三ヶ月もしたらこの状態に戻るのだからあまり丁寧にしても時間の無駄だろう。ハァ…うち母さんも父さんも結構こういうことに関しては几帳面な筈なんだけどなぁ…誰に似たんだろう。
三分の二が片付いたところで一息つき、汗を拭いながらとある箱へと手を掛けた。押入れの奥の奥へとしまい込んであったもので、どうせあいつらのことだ、AVとかエロ本とか入ってんだろなんて思いながら一応中身の確認のため蓋を開けてみた。偶に生もの隠す奴(紫とか黄色とかな!)がいるので放っておくと大惨事になることも偶にあるからだ。
ぱか、と軽快な音を立てて開いた蓋を持ったまま、俺は中身の正体を認識し固まった。
「???……??…??…」
冷や汗を流しながら無言で蓋を閉じる。今見たものは一体何だったのだろうか。少なくとも俺には到底理解できないようなものだったのは確かだ。あんなもの今まで二十数年生きてきた中でお目にかかったことはない。
……六色の付箋が貼ってあったのもまるで「これは俺の」というマーキングのようでぶっちゃけ見たくなかった。…見なかったことにするべきだろうかこれ。そうだ、俺だけの胸の内にしまっておこう。そうしたほうが平和なのだ。
…因みに中身はどんなことになっているのだろうか。 俺は好奇心に負けてもう一度蓋を開けてしまった。普段滅多に見ることはないし自分から見ようとも思わないから、未知の世界に抱かなくてもいいダメな方の好奇心を抱いてしまったのだ。
見てからすぐに後悔することなんてわかりきっていたのに、所謂『見えてるどころかむき出しで看板誘導まである地雷』だったというのに…。
***
「…」
「……」
「………」
「…あの、」
「ファ!? あ、はい、なんですか…?」
「敬語やめてくれる!?」
今現在俺は大掃除ルックで正座している。すぐ目の前には顔色は決して良くない弟たち、俺と弟との間にはあの箱がぽんと置かれていた。
まさかこいつらがこんなもの…『兄弟相姦物のエロ本』を持っていたなんて…。しかも揃いも揃って弟×兄と来た。おそ松まで持ってて俺もう何も信じられない。
チョロ松が気を使って話しかけてくれたが今はまともな返答ができない。あんなものを…あんなものを見てしまった俺は……俺は…。
「…あ、あのな? 別に、その、お前らの性癖を一々口出しとかは、お兄ちゃんぶっちゃけしたくないよ? めんどくさいってのもあるけど…そ、そういうのって人それぞれじゃん?」
「う、うん」
「でも…なんて言ったらいいかな、えっとな……えっと…」
「…あ、あのさあ名松」
「ああああああごめんなさいごめんなさい犯さないでください!!」
「いやいやいやいやしないよ!流石に白昼堂々とはしないよ!」
「"とは"!?じゃあ夜間ならやるんだね!? 『昼間じゃ見せない姿、俺に見せてよ兄さん…』とか言ってハメ倒すんだろ!?」
「やめろ抜粋すんな!!」
トド松が「それ僕のやつのじゃん…!」と小さくつぶやいたのを俺は聞き逃さなかった。そうだよお前のだよ、ちゃんと全員分の見たからねお兄ちゃん。
「ご、誤解だって名松!」
「え…じゃああれお前らのじゃねーの…?」
「…い、いや…俺らのだけど…」
「ファ―――www」
やっぱてめえらのじゃねえか。
誤解も何もねえよ、なんも誤ってないよ俺名探偵だよ。物理的に距離を取るべくずりずりと後ずさると慌てておそ松が手を動かす。
「や、違うから! そういうんじゃなくて!」
「どうせマニアックなプレイとかする気なんだろ!? ローター突っ込んでそのまま仕事行かせる気だろ!? 『同僚に恥ずかしい姿見られて興奮してんの?』ってやつなんだろ!?」
「抜粋やめろっつってんだろ!? てかそれ全然マニアックじゃねえよ!」
「えっ」
「あっ」
「おそ松兄さんのバカ!」
今恐ろしい言葉を聞いたような気がした。結構えぐいとこ抜粋したつもりだったんだけど、違うの?
恐怖の対象を見る目でおそ松を見つめれば罰の悪そうな顔をして視線を俺から外す。ちょっと、何とか言ってよ。
「あ、え、ぇあ、…そ、そっかあ…スタンダードな方、なんだあ…」
「ちがっ、ほ、ほんと誤解だって! おそ松兄さんの中ではスタンダードでも僕は違うから!」
「てめえチョロ松! 何自分一人だけ点数稼ごうとしてんだよ!」
「はあ!? ほんとのことだろ!? 少なくとも兄弟の仲で一番まともなの僕だけ―――「……僕知ってるんだけどなあ…」…え?」
点数稼ぎも何も…とう言おうとしたら、十四松が袖で口を隠しながらチョロ松の方を見てぽつりとつぶやいた。
思わぬ伏兵にその場に居た全員の動きが止まる。
「…チョロ松兄さん、この箱の以外にも隠し持ってるよね」
「なっ…!」
「は? そうなの?」
「しかも、『監禁、薬漬け、拘束強姦』当たり前のすっごい際どいヤツ」
「まっ…じゅ、十四松…!? おま、なんで…っ」
「ほら、この前兄さんコミケ来てたでしょ? その時買ってるの偶然見ちゃった。いや〜びっくりしたけどあのサークルさんの結構人気なんだよ〜 ――――良い趣味してるよね!」
素晴らしい笑顔で言い放った十四松に薄ら寒いものを感じ俺は今度こそ本気で物理的な距離を取る。マジでこいつら怖すぎなんだけどなんなの…!?
監禁って…! 薬漬けって…! 拘束ご、強姦って…!! 何!? お兄ちゃん虐めてそんなに楽しいの!?
ガタガタ震え出した俺を見てチョロ松が慌てたようにするも、言い訳が見つからないのか言葉が出てこない。俺はスッと無言で土下座をした。
「薬だけは…お願いします……薬だけは…っ」
「待って待って待って!! しないからね!? 薬漬けなんてしないからね!?」
「普段まともまとも言ってるやつが一番やばいんだよなぁ…」
「フッ…チョロ松も火遊びがしたい年頃なんだろう」
「お前を火炙りにしてやろうか」
「ひ、火炙りプレイもちょっと…!」
「そんなプレイねえよ!!」
ダメだ、何を言っても何が出てきても疑心暗鬼の目で弟たちを見てしまう。
「あああ…父さんと母さんに何て言えばいいんだよ…」
「名松ってば保護者みたい」
「同じようなもんだろ? やっぱ高校時代に構ってやれなかったのがいけなかったのか…? お兄ちゃんなりにできるだけ寂しい思いさせないようにって構ってたつもりなのに…」
「お、重い感じにしないでくれ名松!」
「子供のころは俺がいないと絶対寝ない可愛い子たちだったのに…!」
「いつの話してんの…」
うわあああ…と悲壮感に暮れながら頭を抱える。弟たちが一気に遠くに行ってしまったように思えてしまうのは何故だろうか。まあ物理的に距離取ろうとしてるからなんだけど。
昔は何をするにも後ろをちょこまかと着いてきて「名松兄ちゃん!」と慕ってくれていたというのに…いつの間にか身長もほぼ変わらず、体格に至ってはカラ松や十四松の方が良い、しかも名前は呼び捨てに変わった。
本当にお兄ちゃん弟たちが遠くに行きすぎてどうすればいいのかわかんないよ…。
「と、兎に角! これに至っては本当に誤解と言うか何と言うか…!」
「じゃ、じゃあこうしよう。俺が今から言う事を宣言して」
「宣言?」
「そう。『自分たちは実の兄を犯したいとも思ってないし、思ったこともありません』っていうの」
「何それ!?」
「だぁーってそうでもしないと不安なんだもんー!! 怖くて熟睡できねえよ! 俺が寝てるときに『寝てても感じちゃうとか、やっぱりエッチだね』とか言いながら睡姦しちゃうかもって不安なんだもんー!!」
「だから音読するのをやめろ!」
「じゃあ今すぐ宣言!!」
「えっ……あー…」
するとすぐに言い淀む六つ子たちを見て俺の顔はサァ、と絶望顔に染まる。それを見てカラ松がいつもの調子で弁解を述べた。
「なあ名松、一旦落ち着いてみないか?」
「落ち着きすぎて底突き抜けるよ俺…」
「やはり落ち着こう。そもそも、俺たちと名松との間で何かがすれ違っているかもしれないだろう?」
はぁ、すれ違いッスか…。ジト目でカラ松を睨めばどこ吹く風で奴は両手を上げる。
「まず事実の確認だ。名松の言う"犯す"とは?」
「…え?」
「い、一応! そう、一応だから!!」
「ほら、食い違いってあるでしょ? 辛子味噌、マスタード、タバスコ、七味を全部からしって言っちゃう人みたいな感じで!」
「例えがすっげえ分かりにくいけど…ま、まあ確かに…そう、なのか…?」
「そうそう! だから一回名松の言う"犯す"の範囲を明確にしたいっていうか!」
「んー…なるほど、じゃあ俺は範囲内で一番境界線に近いものから言っていけばいいんだな?」
「ヨロシク」
まあ、一理あるな。…あるのか? まあいいや、取り敢えずこれを済ませておけばはっきりできるのは間違いないのだから。
正座をしている六つ子の前で俺は人差し指を立てる。
「じゃあまず一つ目、"キス"」
『えっ』
「えっ」
『えっ?』
「えっ?」
また空気が凍った。主に俺の。
弟たちは皆が皆ハァ? みたいな顔をしていて、今この場で一番まともなことを言っているのは俺の筈なのに何だか俺がおかしいみたいにしている。ちょっと待てよお前ら。
「…普通兄弟でちゅーってするでしょ」
「しねえ―――よ!!!! するか!!バカか!!?」
「いやいやいや、普通に口のキスだよ? 下の口でとかそういうんじゃないんだよ?」
「当たり前だろバカか!!? むしろそのつもりで言ってたら今すぐ縁切っとるわボケェ!」
「ぼ、僕らがするんじゃなくて、一般的にだよ?」
「しねえよ! 何が悲しくて野郎同士、しかもお互い成人してる兄弟でキスしなきゃなんねーんだよふざけろ!!」
「名松、お、落ち着いて!」
肩で息をしながら叫ぶ。
背後にあるソファにしがみ付きながら半泣きで弟に怒鳴り散らすが、彼らは基準を改める気はないらしい。出鼻から挫かれたらどうすればいいんだ俺は。
「…や、待て、キスがアレってことは…えっと、色々とアレってことだよな…?」
「なんか心底屈辱的なんだけどその言い方…」
「なんかもう俺ではこの話題無理…お前らがどの基準なのか言ってくれよ…お兄ちゃん疲れちゃったよ…」
「ええ…」
「出来るだけ柔軟に対処するから、ちゃんとお前らで話し合って決めな? てかお願いします」
既に体力的にも精神的にも限界が近い俺は弟たちにこの話題を一度丸投げすることにした。……普通男同士で口のキスなんか兄弟でもしねーよなあ…。
弟たちは輪になってごにょごにょと話し始めた。手持無沙汰になった俺は一先ず部屋の一角にひとまとめにしていた雑誌を持ってゴミ捨て場まで行くことにした。帰ってくるまでに終わっているだろうか…ハァ…。
一体どうしてこんなことに…こんな大騒動になってしまうのなら部屋の掃除なんかしなきゃよかった…いやでも母さんに頼まれてたし、結局遅かれ早かれやらなきゃいけなかったんだよなぁ…。
できるだけ時間をかけて部屋へと戻れば会議は終了していたようで、先ほどと同じ態勢になっていた弟たち。俺も神妙な面持ちで先ほどと同じポジションにつく。
「…あー、あのさ」
「お、おう」
「そのぉ…多分、ね、何を基準っていうか、ラインにしても…」
「うん」
「……無理かなあ、って…」
「……んんwwwwwwwww」
ちょっと待って、今までの俺の努力は一体何だったんだ? お前らのあの必死な弁解姿勢は一体何だったんだ? クソ茶番かな??
「あの、やっぱり…ヤりたいし…」
「ハァァァ!? バカか!?」
「だ、だってえええ!! 本気で名松とヤりたいんだもん!」
「大バカか!」
わああああん!! と泣きついてくる六つ子の一番上と一番下。普段ならなんなんだとなるが今ではただただ身の危険しか感じない。
「最初ので正解じゃんか! 俺何も間違ってなかったじゃん!」
「す、すまない…! 本当に悪いと思っているが…どうしても名松としたいんだ!さっきの言葉責めがしたい!」
「んなこと聞いてねえよおおぉ! 弟が怖いいぃぃ!!」
「し、静かにしてくれないなら犯すよ!?」
「ドグサレバカかよおお!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ六つ子。その顔は必死すぎて本当に不気味だ。
いつもの日常風景の中で見れば「あーまたクソみたいなことしてんだろーなー」ぐらいで済ませられるものを、今では全力でご遠慮したいくらいには必死オーラがにじみ出ていた。
「ぶっちゃけさあ今の名松本当やばいんだって!」
「ハァァ?逆切れ乙ー!!」
「何その体操服…高校の時のでしょ?」
「いやそれが何?」
「完璧誘ってるでしょ?!」
「ウルトラ超ド級のバカだった!!!」
「そのピンも何? 可愛いですよアピール? それ以上可愛いアピールしてどうすんの? 犯されたいの?」
「バカに失礼しましたって謝りたくなるくらい清々しいバカだァ――――!!!」
今度こそ俺の方が泣き出して部屋からログアウトしようとすれば、ガシィと足を掴まれる。
「離せ! もうお兄ちゃんお前らのことなんか知らん! ホモでもゲイでも好きな世界に行きなさい! 一人で!!」
「嫌だァー! 名松とヤりたい! 名松のケツにちんこぶち込みたい!!」
「ケツは入り口じゃなくて出口だよドアホ!!」
「そのピン名松のちんこにつっこんで空イキ耐久セックスしたいぃ〜!!」
「ちんこも入り口じゃなくて出口だよド低能共!!」
「ちんことか言うなよ興奮するだろ!?」
「もうヤダ父さん母さーん!!!」
すったもんだの大騒ぎはこの後父さんが「近所迷惑だろう!!」と怒鳴り込んでくるまで続いた。
この日から家は安らぎの場ではなく戦場に変わったのはまた別の話。
※腐表現がっつり
※アホなノリの下ネタ、ネットスラング出てきます
「あああああもう!! 掃除くらい月一でもいいからしろよなあいつらー!」
ガタガタ、どったんばったん、少々の破壊音を出しながら俺は弟である六つ子の部屋の押入れを大掃除している。普段目に見える部分は母さんや兄弟内では綺麗好きに入る方のトド松なんかが偶に掃除しているのだが、普段見えない共有スペースである押入れなんかは好き勝手にごっちゃ煮になってしまっている。なんで押入れなのにこんなに埃が溜まるんだよと思うほどには汚い。ってかこんなぐちゃぐちゃでよく自分のものがどこにあるのかわかるな。
邪魔な前髪をピンでとめて高校時代に使っていた体操服を着て四つん這いになりながら雑巾がけをしていく。弟たちの持ち物なんて見れば大体どれが誰の物かなんてわかるから、とりあえず適当にそれぞれの引き出しやスペースに敷き詰めていく。どうせ二ヶ月か三ヶ月もしたらこの状態に戻るのだからあまり丁寧にしても時間の無駄だろう。ハァ…うち母さんも父さんも結構こういうことに関しては几帳面な筈なんだけどなぁ…誰に似たんだろう。
三分の二が片付いたところで一息つき、汗を拭いながらとある箱へと手を掛けた。押入れの奥の奥へとしまい込んであったもので、どうせあいつらのことだ、AVとかエロ本とか入ってんだろなんて思いながら一応中身の確認のため蓋を開けてみた。偶に生もの隠す奴(紫とか黄色とかな!)がいるので放っておくと大惨事になることも偶にあるからだ。
ぱか、と軽快な音を立てて開いた蓋を持ったまま、俺は中身の正体を認識し固まった。
「???……??…??…」
冷や汗を流しながら無言で蓋を閉じる。今見たものは一体何だったのだろうか。少なくとも俺には到底理解できないようなものだったのは確かだ。あんなもの今まで二十数年生きてきた中でお目にかかったことはない。
……六色の付箋が貼ってあったのもまるで「これは俺の」というマーキングのようでぶっちゃけ見たくなかった。…見なかったことにするべきだろうかこれ。そうだ、俺だけの胸の内にしまっておこう。そうしたほうが平和なのだ。
…因みに中身はどんなことになっているのだろうか。 俺は好奇心に負けてもう一度蓋を開けてしまった。普段滅多に見ることはないし自分から見ようとも思わないから、未知の世界に抱かなくてもいいダメな方の好奇心を抱いてしまったのだ。
見てからすぐに後悔することなんてわかりきっていたのに、所謂『見えてるどころかむき出しで看板誘導まである地雷』だったというのに…。
***
「…」
「……」
「………」
「…あの、」
「ファ!? あ、はい、なんですか…?」
「敬語やめてくれる!?」
今現在俺は大掃除ルックで正座している。すぐ目の前には顔色は決して良くない弟たち、俺と弟との間にはあの箱がぽんと置かれていた。
まさかこいつらがこんなもの…『兄弟相姦物のエロ本』を持っていたなんて…。しかも揃いも揃って弟×兄と来た。おそ松まで持ってて俺もう何も信じられない。
チョロ松が気を使って話しかけてくれたが今はまともな返答ができない。あんなものを…あんなものを見てしまった俺は……俺は…。
「…あ、あのな? 別に、その、お前らの性癖を一々口出しとかは、お兄ちゃんぶっちゃけしたくないよ? めんどくさいってのもあるけど…そ、そういうのって人それぞれじゃん?」
「う、うん」
「でも…なんて言ったらいいかな、えっとな……えっと…」
「…あ、あのさあ名松」
「ああああああごめんなさいごめんなさい犯さないでください!!」
「いやいやいやいやしないよ!流石に白昼堂々とはしないよ!」
「"とは"!?じゃあ夜間ならやるんだね!? 『昼間じゃ見せない姿、俺に見せてよ兄さん…』とか言ってハメ倒すんだろ!?」
「やめろ抜粋すんな!!」
トド松が「それ僕のやつのじゃん…!」と小さくつぶやいたのを俺は聞き逃さなかった。そうだよお前のだよ、ちゃんと全員分の見たからねお兄ちゃん。
「ご、誤解だって名松!」
「え…じゃああれお前らのじゃねーの…?」
「…い、いや…俺らのだけど…」
「ファ―――www」
やっぱてめえらのじゃねえか。
誤解も何もねえよ、なんも誤ってないよ俺名探偵だよ。物理的に距離を取るべくずりずりと後ずさると慌てておそ松が手を動かす。
「や、違うから! そういうんじゃなくて!」
「どうせマニアックなプレイとかする気なんだろ!? ローター突っ込んでそのまま仕事行かせる気だろ!? 『同僚に恥ずかしい姿見られて興奮してんの?』ってやつなんだろ!?」
「抜粋やめろっつってんだろ!? てかそれ全然マニアックじゃねえよ!」
「えっ」
「あっ」
「おそ松兄さんのバカ!」
今恐ろしい言葉を聞いたような気がした。結構えぐいとこ抜粋したつもりだったんだけど、違うの?
恐怖の対象を見る目でおそ松を見つめれば罰の悪そうな顔をして視線を俺から外す。ちょっと、何とか言ってよ。
「あ、え、ぇあ、…そ、そっかあ…スタンダードな方、なんだあ…」
「ちがっ、ほ、ほんと誤解だって! おそ松兄さんの中ではスタンダードでも僕は違うから!」
「てめえチョロ松! 何自分一人だけ点数稼ごうとしてんだよ!」
「はあ!? ほんとのことだろ!? 少なくとも兄弟の仲で一番まともなの僕だけ―――「……僕知ってるんだけどなあ…」…え?」
点数稼ぎも何も…とう言おうとしたら、十四松が袖で口を隠しながらチョロ松の方を見てぽつりとつぶやいた。
思わぬ伏兵にその場に居た全員の動きが止まる。
「…チョロ松兄さん、この箱の以外にも隠し持ってるよね」
「なっ…!」
「は? そうなの?」
「しかも、『監禁、薬漬け、拘束強姦』当たり前のすっごい際どいヤツ」
「まっ…じゅ、十四松…!? おま、なんで…っ」
「ほら、この前兄さんコミケ来てたでしょ? その時買ってるの偶然見ちゃった。いや〜びっくりしたけどあのサークルさんの結構人気なんだよ〜 ――――良い趣味してるよね!」
素晴らしい笑顔で言い放った十四松に薄ら寒いものを感じ俺は今度こそ本気で物理的な距離を取る。マジでこいつら怖すぎなんだけどなんなの…!?
監禁って…! 薬漬けって…! 拘束ご、強姦って…!! 何!? お兄ちゃん虐めてそんなに楽しいの!?
ガタガタ震え出した俺を見てチョロ松が慌てたようにするも、言い訳が見つからないのか言葉が出てこない。俺はスッと無言で土下座をした。
「薬だけは…お願いします……薬だけは…っ」
「待って待って待って!! しないからね!? 薬漬けなんてしないからね!?」
「普段まともまとも言ってるやつが一番やばいんだよなぁ…」
「フッ…チョロ松も火遊びがしたい年頃なんだろう」
「お前を火炙りにしてやろうか」
「ひ、火炙りプレイもちょっと…!」
「そんなプレイねえよ!!」
ダメだ、何を言っても何が出てきても疑心暗鬼の目で弟たちを見てしまう。
「あああ…父さんと母さんに何て言えばいいんだよ…」
「名松ってば保護者みたい」
「同じようなもんだろ? やっぱ高校時代に構ってやれなかったのがいけなかったのか…? お兄ちゃんなりにできるだけ寂しい思いさせないようにって構ってたつもりなのに…」
「お、重い感じにしないでくれ名松!」
「子供のころは俺がいないと絶対寝ない可愛い子たちだったのに…!」
「いつの話してんの…」
うわあああ…と悲壮感に暮れながら頭を抱える。弟たちが一気に遠くに行ってしまったように思えてしまうのは何故だろうか。まあ物理的に距離取ろうとしてるからなんだけど。
昔は何をするにも後ろをちょこまかと着いてきて「名松兄ちゃん!」と慕ってくれていたというのに…いつの間にか身長もほぼ変わらず、体格に至ってはカラ松や十四松の方が良い、しかも名前は呼び捨てに変わった。
本当にお兄ちゃん弟たちが遠くに行きすぎてどうすればいいのかわかんないよ…。
「と、兎に角! これに至っては本当に誤解と言うか何と言うか…!」
「じゃ、じゃあこうしよう。俺が今から言う事を宣言して」
「宣言?」
「そう。『自分たちは実の兄を犯したいとも思ってないし、思ったこともありません』っていうの」
「何それ!?」
「だぁーってそうでもしないと不安なんだもんー!! 怖くて熟睡できねえよ! 俺が寝てるときに『寝てても感じちゃうとか、やっぱりエッチだね』とか言いながら睡姦しちゃうかもって不安なんだもんー!!」
「だから音読するのをやめろ!」
「じゃあ今すぐ宣言!!」
「えっ……あー…」
するとすぐに言い淀む六つ子たちを見て俺の顔はサァ、と絶望顔に染まる。それを見てカラ松がいつもの調子で弁解を述べた。
「なあ名松、一旦落ち着いてみないか?」
「落ち着きすぎて底突き抜けるよ俺…」
「やはり落ち着こう。そもそも、俺たちと名松との間で何かがすれ違っているかもしれないだろう?」
はぁ、すれ違いッスか…。ジト目でカラ松を睨めばどこ吹く風で奴は両手を上げる。
「まず事実の確認だ。名松の言う"犯す"とは?」
「…え?」
「い、一応! そう、一応だから!!」
「ほら、食い違いってあるでしょ? 辛子味噌、マスタード、タバスコ、七味を全部からしって言っちゃう人みたいな感じで!」
「例えがすっげえ分かりにくいけど…ま、まあ確かに…そう、なのか…?」
「そうそう! だから一回名松の言う"犯す"の範囲を明確にしたいっていうか!」
「んー…なるほど、じゃあ俺は範囲内で一番境界線に近いものから言っていけばいいんだな?」
「ヨロシク」
まあ、一理あるな。…あるのか? まあいいや、取り敢えずこれを済ませておけばはっきりできるのは間違いないのだから。
正座をしている六つ子の前で俺は人差し指を立てる。
「じゃあまず一つ目、"キス"」
『えっ』
「えっ」
『えっ?』
「えっ?」
また空気が凍った。主に俺の。
弟たちは皆が皆ハァ? みたいな顔をしていて、今この場で一番まともなことを言っているのは俺の筈なのに何だか俺がおかしいみたいにしている。ちょっと待てよお前ら。
「…普通兄弟でちゅーってするでしょ」
「しねえ―――よ!!!! するか!!バカか!!?」
「いやいやいや、普通に口のキスだよ? 下の口でとかそういうんじゃないんだよ?」
「当たり前だろバカか!!? むしろそのつもりで言ってたら今すぐ縁切っとるわボケェ!」
「ぼ、僕らがするんじゃなくて、一般的にだよ?」
「しねえよ! 何が悲しくて野郎同士、しかもお互い成人してる兄弟でキスしなきゃなんねーんだよふざけろ!!」
「名松、お、落ち着いて!」
肩で息をしながら叫ぶ。
背後にあるソファにしがみ付きながら半泣きで弟に怒鳴り散らすが、彼らは基準を改める気はないらしい。出鼻から挫かれたらどうすればいいんだ俺は。
「…や、待て、キスがアレってことは…えっと、色々とアレってことだよな…?」
「なんか心底屈辱的なんだけどその言い方…」
「なんかもう俺ではこの話題無理…お前らがどの基準なのか言ってくれよ…お兄ちゃん疲れちゃったよ…」
「ええ…」
「出来るだけ柔軟に対処するから、ちゃんとお前らで話し合って決めな? てかお願いします」
既に体力的にも精神的にも限界が近い俺は弟たちにこの話題を一度丸投げすることにした。……普通男同士で口のキスなんか兄弟でもしねーよなあ…。
弟たちは輪になってごにょごにょと話し始めた。手持無沙汰になった俺は一先ず部屋の一角にひとまとめにしていた雑誌を持ってゴミ捨て場まで行くことにした。帰ってくるまでに終わっているだろうか…ハァ…。
一体どうしてこんなことに…こんな大騒動になってしまうのなら部屋の掃除なんかしなきゃよかった…いやでも母さんに頼まれてたし、結局遅かれ早かれやらなきゃいけなかったんだよなぁ…。
できるだけ時間をかけて部屋へと戻れば会議は終了していたようで、先ほどと同じ態勢になっていた弟たち。俺も神妙な面持ちで先ほどと同じポジションにつく。
「…あー、あのさ」
「お、おう」
「そのぉ…多分、ね、何を基準っていうか、ラインにしても…」
「うん」
「……無理かなあ、って…」
「……んんwwwwwwwww」
ちょっと待って、今までの俺の努力は一体何だったんだ? お前らのあの必死な弁解姿勢は一体何だったんだ? クソ茶番かな??
「あの、やっぱり…ヤりたいし…」
「ハァァァ!? バカか!?」
「だ、だってえええ!! 本気で名松とヤりたいんだもん!」
「大バカか!」
わああああん!! と泣きついてくる六つ子の一番上と一番下。普段ならなんなんだとなるが今ではただただ身の危険しか感じない。
「最初ので正解じゃんか! 俺何も間違ってなかったじゃん!」
「す、すまない…! 本当に悪いと思っているが…どうしても名松としたいんだ!さっきの言葉責めがしたい!」
「んなこと聞いてねえよおおぉ! 弟が怖いいぃぃ!!」
「し、静かにしてくれないなら犯すよ!?」
「ドグサレバカかよおお!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ六つ子。その顔は必死すぎて本当に不気味だ。
いつもの日常風景の中で見れば「あーまたクソみたいなことしてんだろーなー」ぐらいで済ませられるものを、今では全力でご遠慮したいくらいには必死オーラがにじみ出ていた。
「ぶっちゃけさあ今の名松本当やばいんだって!」
「ハァァ?逆切れ乙ー!!」
「何その体操服…高校の時のでしょ?」
「いやそれが何?」
「完璧誘ってるでしょ?!」
「ウルトラ超ド級のバカだった!!!」
「そのピンも何? 可愛いですよアピール? それ以上可愛いアピールしてどうすんの? 犯されたいの?」
「バカに失礼しましたって謝りたくなるくらい清々しいバカだァ――――!!!」
今度こそ俺の方が泣き出して部屋からログアウトしようとすれば、ガシィと足を掴まれる。
「離せ! もうお兄ちゃんお前らのことなんか知らん! ホモでもゲイでも好きな世界に行きなさい! 一人で!!」
「嫌だァー! 名松とヤりたい! 名松のケツにちんこぶち込みたい!!」
「ケツは入り口じゃなくて出口だよドアホ!!」
「そのピン名松のちんこにつっこんで空イキ耐久セックスしたいぃ〜!!」
「ちんこも入り口じゃなくて出口だよド低能共!!」
「ちんことか言うなよ興奮するだろ!?」
「もうヤダ父さん母さーん!!!」
すったもんだの大騒ぎはこの後父さんが「近所迷惑だろう!!」と怒鳴り込んでくるまで続いた。
この日から家は安らぎの場ではなく戦場に変わったのはまた別の話。