「俺はこのトキワジムのジムリーダー、グリーンだ。よろしくな新人」
最初の印象は爽やかそう、あとモテそうイケメン爆発しろ。目の前でニカッと人懐こそうな笑みを浮かべるジムリーダーに私は少しだけ緊張を緩めて宜しくお願いします、と頭を下げた。
私の新しい仕事、それはジムトレーナー。ジムリーダーに挑戦するトレーナーを足止めもしくは撃退するのが役目。勝っても負けても特にこれと言ったお咎めはないらしい。だがやはり勝てばそれなりの報酬所謂ボーナスは貰えるようで、これはがんばらなくてはいけない。
貯金だってそんなにないし、収入の四分の一は実家に送らなければいけないのだから。
「これから特訓でもしようか、ハピナス」
「ハピ〜」
パートナーであるハピナスの頭を撫でながら私は立ち上がる。
力試しだと言われてここのバトルトレーナーと闘ったのはもう昔のようだ。実際一週間もたってないけど。
私のハピナスは基本的におっとりとしていて優しい、家庭的な女の子だ。最初エリートトレーナーのヤスタカさんという人に「ハピナス一匹?何ができんの?」と鼻で笑われた時、真正面からの悪意ある言葉に私の心は早くも折れそうだった。
グリーンさんがそれならと言って一対一のバトルを私とヤスタカさんに命じた。初日からバトルですか、と叫びたい気持ちを堪えて私はハピナスと共に彼に挑んだ。
結果は、何とか勝った。
どうやらヤスタカさんはハピナスは特防しか能がないと思われていたようで、私のハピナスが一発目から放った地球投げに心を折られてしまったんだと言う。その後は特に反撃という反撃もされずに勝負は着いた。
数少ない友人たちにも、「お前のバトルってえぐい」とよく言われていた。
そんなことがあって自然と幸先の良い(しょっぱいけど)スタートとなり、今ではヤスタカさんと買い出しが出来る程度には仲良くなっている。
「何だ、特訓か?」
「! グリーンさん」
真後ろからひょっこり覗き込まれ、特に意識はしていないのに心臓がドクンと鳴った。急だったのと、イケメンだからなのと。
本当に店長は何故こんなイケメン有名人と知り合いなのだろうか。歳も全然違うし、パッと見接点なんて出来そうにもない。 …それは私もなんだろうけど。
グリーンさんは今出勤だったようで小さ目のリュックを背負っている。
「はい。ちょっとトキワの森まで」
「そうか。でもあんまり奥には行くなよ」
はーい、と返事をすればグリーンさんは私の頭に手を置いた。何故か彼は私、というか年下を無償に可愛がる癖があるようだ。子供を相手にする時のグリーンさんの顔はそれはもう穏やかだ。元々世話焼きなんだろう。じゃないと私をジムトレーナーにすることも無かっただろうし。
行ってきます、と言えば彼も行ってらっしゃいと返してくれる。
いざ行かん、トキワの森。
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