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▽無題

工藤姉

まるで人形のようだと思った。

喫茶店の片隅で静かにページをめくる指先は細く、長い睫毛に縁取られた瞳はゆったりとした動作で文字を追う。
情景を思い描くように、一語一句取りこぼさないようにとまるで慈しむように追う姿は、心の底から本が好きなのだと感じられた。
窓際から射し込む陽ざしに照らされて読書をする姿は、絵画に描かれたかのように画になる。

「工藤さん、素敵ですよね」

かの有名な推理作家、工藤優作と日本を代表する元大女優の工藤有希子の娘という経歴に加え、高校生探偵の工藤新一を弟に持つという彼女もやはり、他とは違った空気を纏っていた。

「ええ。まるで一枚の絵画のようだ」

ただ静かに本を読んでいるだけなのに、其処だけ別世界のように感じる程、彼女が纏う空気は他とは違っていた。

「こんにちは梓さん、安室さん」
「こんにちはコナン君」
「いらっしゃい。今日は一人なのかい?」

普段は蘭さんたちと来ることの多い少年はどうやら彼女と待ち合わせをしていたらしく、その旨を説明するとそのまま彼女の向かい側に腰掛けた。
本に集中しているのか、待ち人が来た事にも気付かずに本に向けられたままの視線。

「…姉ちゃん」

呆れたような、それでいて優しさを含んだ声が彼女を呼ぶ。

「…コナン君」
「相変わらず本の虫なんだね」
「コナン君もでしょう?」

無表情が多い彼女が一瞬だけその表情を和らげた。
きっと他の人は気づかないであろう、ほんの僅かなその変化に気づけるようになったのはいつからだろうか。
微かに緩んだ口角と、優しさを含んだ暖かい眼差しが彼へと向けられる。
普段は無機質で何を考えているか読み取れないその瞳は、今は慈愛のこもった色を浮かべていた。

「ホームズはしょうがないよ」
「ホームズに限らず全ての本はとても素晴らしくて熱中してしまうと思うよ」
「まぁ姉ちゃんは何でも読むからね」

やはり彼女は本を読むのが趣味らしい。
気づけば何時もの無表情で本を鞄へとしまい込んでいて、もう帰るのだと察した。
…今日はもう見れないのか。
いつの間にか本を読む彼女を見るのが楽しみに感じていた自分に気付いた。

「もう行くの?」
「そのホームズを読みに早くお家に行きたいのでしょう?」
「そうだけど、もう少しゆっくりしててもいいんだよ?」

席を立とうとした彼女に彼が言うも、控えめに横に首を振って手を差し出した。

「きっと君と一緒に本を読む方が私は嬉しいと思う」
「…そっか、じゃあ行こう」

慣れ親しんだように仲良く手を繋いだ二人はまるで姉弟のようで、やはり画になると思った。
それは彼女が持つ不思議な雰囲気のせいか、それとも二人がまるで長年の付き合いかのように自然な姿をしているからか。

「ありがとうございました」
「ごちそうさまでした。またお伺いします」
「またね、安室さん」
「ええ、またのご来店お待ちしております」

直接声を掛けて彼女の話を聞きたいのに、未だそれができないで居る俺は今日も業務的な言葉を掛けるだけだった。

ーーーーーー

ある日の昼下がり。

ポアロの買い出しを終えて店へ帰る途中で視界の端に捉えた後ろ姿。
それは工藤家の長女である彼女のものだった。
何やら笑いかけながら腕を引く男に無表情のまま付いて行く様子はとても親しい仲とは思えなかった。
コナン君や蘭さんたち等親しい仲の人間に手を引かれる彼女は、必ず互いの手を握って居る。
だが彼女を引く男は無造作に手首を掴んだまま、まるで誘導するかのように人気のない路地へと向かって足を進めていた。
…何を考えて居るかわからないその横顔は、無防備そのものだった。
胸の内に広がる感覚の不快さに、思わず舌打ちをするのを堪えてあとを追った。

「こっちなら人も居ないし大丈夫だろ。本当はお姉さんの話を聞き出せって言われたんだけど、こんなにイイ女なんだ、少しばかり俺の相手してもらってもいいかな?」
「お相手、ですか…では私はどのようにすればいいのですか?」

頭が痛くなるような会話だった。
どう考えても男の言葉には下心が含まれているのに、彼女はそれに気付いていないかのように表面の言葉を拾って問いかける。
真っ直ぐに、純粋な瞳に男をうつして。
下心を露わにする男に真っ直ぐなあの瞳が向けられていることに、どうしようもない位に不快感を感じて気づけば口を開いていた。

「こんな所に女性を連れ込んで何をするおつもりですか?」

漸く此方の存在に気付いた男は邪魔者が入ったとでも言うように舌打ちをこぼした。
一方の彼女は何故俺が此処にいるのだろう。とでも思っているのだろう。
貴女を助けに来たんだと言えばいいのだが、どうにもこの口は素直に言葉を吐き出せないらしい。

「ちょっと彼女に話があっただけだよ」
「そうでしたか。申し訳ありませんが実は彼女と約束をしてまして、先約は僕ですので今日のところはお引き取りください」

そっと彼女の肩を抱いて告げれば、男は見せつけられるようなその姿が気に入らなかったのか、瞬時に怒りの表情を浮かべた。
彼女もこれくらいとは言わずとも、もう少し分かりやすく表情を浮かべればいいのに。
困る様子も嫌がる様子も見せない彼女は、俺に肩を抱かれても何一つ表情を変えることはなかった。

「こっちは大事な仕事できてんだよ!関係ない奴は引っ込んでろ!」
「おや、そうでしたか。この方に見覚えはありますか?」
「いえ、担当の方とも出版社の方とも違います」

言い方からして彼女の職業は物書きなのだろう。
仕事の人間ならばアポが必ずあると続けた彼女に男は言葉を詰まらせた。

「もういい、あんたと話さなくてもどうにでもしてやるさ!」

覚えけておけ!とまるで負け台詞のテンプレートを吐き捨てて去っていった男に、彼女が何かを感じることはあるのだろうか。
なんの色も映さない瞳は、何を考えているのだろう。

「何故見知らぬ男についていったんですか?」
「話があるといわれたらからです」

聞きたいのはそんな言葉ではない。
業務以外で初めて会話を交わした気がするが、今はそんな事はどうでもいい。
見るからに怪しい見知らぬ男について行って何もされないと思っていたのかと遠回しに言っているのに、彼女は表面の言葉だけを拾って言葉を返した。

「では、何をされるかも分からないのに何故人気のない場所までついていかれたんですか」
「先ほどもお伝えしましたが、お話があるといわれたので、その場所までご案内いただこうと思ったからです」

顔を覆って思い切り息を吐き出したかった。
店内で交わされる彼女と親しい人間との会話を耳にして知ってはいたが、やはり彼女はズレている。

「襲われる危険性については考えなかったんですか?」

全く危機感を感じない彼女ならはいと頷きそうだと思いながらも問いかければ、返ってきたのは予想外の言葉だった。

「それは性的な意味でですか」

真っ直ぐな瞳に射抜かれてされた質問は、ぼかしたにも関わらずハッキリと言えと言われているようだ。
何のためにぼかした表現をしているのか分からないとでもいう態度で彼女は俺に問いかける。

「そうですね、一概に全てがそうとは限りませんが、今回の件に関してはそんな展開もあったでしょう」
「…そうですか。それは気付けない私がいけませんね。どうもありがとうございました」

本当にわかっているのだろうか。
さっきのような事が今まで全く無かったとは限らないだろう。
その度に彼女はどうしていたのだろうか。
不意に彼女の名を呼ぶ声が聞こえた。

「沖矢さん」
「帰りが遅いので迎えに来ました」

ーーーー
ひい、工藤姉はしっかり書こうとするとつかれちゃいますね…!!!!!
ネタだから書きたいところだけ書くはずが、なんか妙に続かせなくてはとプレッシャーを感じる謎。
お母さんが襲われたことが両親の死のきっかけだったので、この後姉は母の事考えるんじゃないんですかね。
沖矢さんははっきりと貴女が心配なんですよ〜と伝えてくれるので、徐々に時間守ってお家に帰るように意識をし始める。
帰るとは言っていない。
多分読みふけって普通に閉館時間になって気付くことも多々ある。
これをきっかけにあまりに遅いようなら電話かかってくるようになってたらいい。
気づけば過保護になっている沖矢昴。
まるでお兄ちゃんみたいですねとか微笑まれて複雑な気分を味わえばいい。
安室さんはやたら気にかけてくれる人って印象。
でも工藤姉の頭の中には居ない。
沖矢さんは時間を見るたびに沖矢さんに心配かけてしまうだろうか。この時間ならまだ大丈夫だろうか。って思うようになるから意識してもらえてる。
そりゃあ余裕もありますね。
安室さんはかっこつけたり遠回しな言い方しないでストレートに言ったら伝わるからがんばって。
工藤一家から攻略聞いてる沖矢さんと、一切の情報なしで自分で探っていく安室さんでは差も出ますね。
頑張れ安室さん。
ちゃっかり候補に上がってるのは沖矢さんというか赤井さん。
家族ぐるみだからね、しょうがないよね。

2017/06/11(20:52)


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※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません
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