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▽無題

赤井妹


ふわり。
なんとなく円を作るように吐き出した煙に一つの記憶が過った。
まだ妹が中学生だった頃、ハッキングをしているのを見つけ、このままでは将来どんな悪事に手を染めるか分からないと思いアメリカへと連れ出した妹は、それまで以上に自分に文句を言うようになった。
クソ兄貴と呼ばれるようになったきっかけは確かにあの出来事が原因だろう。
それでも野放しにするよりは自分の監視下に置いておく方が安心できた。
…頻繁に学校から呼び出しを食らったことに関しては随分と胃を痛めたが、そのおかげで今で大抵の不祥事は慣れたものだ。
そんな万年反抗期の妹が珍しく寄ってきたのは、今みたいに煙草を吹かしている時だった。

「兄貴さ、あれできる?」
「…なんだ?」
「あれ、あの、ふわってやつ」
「抽象的すぎて伝わらん」
「こう、ドーナッツみたいなやつ」
「ドーナッツ」
「おいこら笑うなクソ野郎」

妹の口から出た随分と可愛らしいたとえに声をかみ殺すようにして笑えば、案の定拗ねた顔でふくらはぎを蹴られた。

「おー、やっぱヘビースモーカーは違うね」

ふわり。
リクエスト通りに煙でドーナッツを作ってやれば、子供のように目を輝かせて眺めていた。
その姿がとても新鮮に映ったのは何年も経った今でも思い出せる。
ふわり。
作るたびに面白そうにけらけらと笑う姿は、泣き声一つあげなかった幼児の頃とは別人で、その成長に微笑ましいとすら思えたのだ。

「毎回毎回よく飽きないね。沖矢昴ってヘビースモーカーだったか?その面で煙草の匂い染み付けないように気をつけろよ」

そう言いながら放り投げられたメモリーカードを受け取れば、しっかり振り込んどけよ。とお決まりの台詞が投げられた。

「ドーナッツ、お好きでしたよね」
「ドーナッツ?っていうかやめろ、沖矢昴で喋んな」
「おや、もうドーナッツは飽きてしまいましたか?」

なんの事だと言いたげな妹にあの時と同じように煙を吐き出せば、やはりその顔はあの時と同じ色を見せていた。

「おー、やっぱヘビースモーカーは違うね」

全く同じ台詞で同じように目を輝かせた妹。
ふわり。続けざまにもう一つ吐き出せば、やはりあの時と同じようにけらけらと笑うのだ。


ーーーーーー
いつもボロクソ言われてるばかりじゃないんだよって話が書きたかっただけです(笑)
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赤ん坊は長期間放置されると泣かなくなる。
昔何かで読んだことあることをふと思い出した。
それと同時に浮かぶのは、泣くことも手間を掛けさせることもなかった、まだ幼かった頃の妹の姿だった。
きっと両親はどこかで妹がそんな環境に居たのではと気付いて居たのかもしれない。その上であえてこの子は将来お淑やかな女性になるといったんじゃないんだろうか。
まぁ残念なことにとんだ問題児に育ってしまったけど、それでも人生を楽しんでるのが伝わってくるものだから、ついつい絆されてしまうんだ。
秀吉。と妹のくせに呼び捨てで友達みたいに絡んでくる妹を嫌と思った事はなかったし、どちらかというと家の中にも友人がいるようで楽しかったとも思う。

「お、秀吉!由美タンとても美人だね」
「開口一発目に何言ってるんだお前」
「いや、最近会ったから挨拶しといた」
「え、ちょっ、口説いてないよね!?」
「なんで兄貴の将来の嫁口説くんだよ」
「いやまぁ将来の嫁って言ったらそうなんだけど…って照れてる場合じゃないんだよ!お前は自覚ないけど、言動はただのナンパ男だからな」
「はあ!?ふざけんなよあんな脳みそスカスカな野郎共と一緒にすんな!!」
「自覚ないのが一番タチ悪いぞ」

笑顔でさらっと聞いてるこっちが恥ずかしくなるような台詞も言ってみせる妹が、由美タンに何も言わないわけがない。絶対口説いたろお前。
中性的で綺麗な顔立ちに部類される妹は、男装したらさぞモテるのだろう…中身は問題しかないけれど、それでも女性に対しては紳士的に振る舞う事も多いし、やっぱり多少なりともモテるに決まっている。

「あーもー…変な事言ってないだろうな?」
「私がいつ変な事言ったよ」
「お前の言動は普段から変なんだよ」
「クソ兄貴よりも?」
「お前を基準にしたら変な人なんてこの世から消える」
「お前なんで私にばっかそんな辛辣なんだよ!!」

もう知らん、帰る。
すっかり不機嫌になって踵を返す背中に名を呼べば、面倒そうな顔が此方を振り向いた。

「元気そうでよかったよ」
「…お前のほうがよっぽど変な事いってんだよバーカ」

べ。と行儀悪く舌を出して駆け出した背中を、今度は静かに見送った。
うん、やっぱりあいつはあれくらいが丁度いい。
世界一自己中でわがままで、言いたい事は言う自由な性格。
自分の人生を謳歌するその姿は、兄としてその成長が喜ばしく感じる。

「まぁ、お守りは秀一兄さんの仕事だしね」

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頑張って秀一兄さん。
秀吉と妹は友人感覚がお互い強いけど、でも兄でもあるからその成長が微笑ましく思えちゃったりする。
一方、呼び出し食らいまくりのお兄ちゃんは大変だったに違いない。
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「ド畜生!!」

二階の部屋から聞こえてきた怒鳴り声は赤井さんの妹のものだった。

「…またやらかしたな」

ふぅ、と目元をおおいながら静かにため息を吐き出した沖矢昴の姿は、完全に兄である赤井秀一となっていた。

「え、またどっかの犯罪組織に手を貸したの?」
「さぁな。あの馬鹿は金さえ積まれれば大抵のことはやり遂げる馬鹿だ」

馬鹿って…いや、でも彼女に振り回されてきた赤井さんからしたら、そうも言いたくなるのだろう。

「それで、どんなおいたをしたんだ?」
「うるせぇ。つーかそんなんじゃねぇし!」

明らかに不機嫌です。といった顔で入ってきた彼女はそのままソファーへ顔面を埋めるようにしてダイブした。

「…くっそう、あの鳩野郎…ぜってー焼き鳥にしてやんよ」

…ああ、キッドのやろーか。
妹である世良がキッドに服を剥がれてからというもの、彼女は殺す気で彼奴を探している。

「おい」
「な、なに?」
「お前確かキッドキラーなんて大それた異名持ってるよな?」
「次郎吉おじさんが勝手にそう呼んでるだけだよ」
「でもそう呼ばれるってことは殺せる力があるってことだ」

おい、誰がそのままの意味だなんて言ったよ。直訳すんな。

「寸前のところで逃げられるのそろそろ腹立たしいからマジで殺らね?」
「そういう物騒なのはちょっと…」
「小学生にする話題ではないな」

いや、小学生じゃなくても殺害計画持ちかけるのはどうかと思うよ。
なんだこの兄妹、ズレてんのか?
赤井さんはまともだと信じていたが、まさかこの人もシスコンなんてオチないよな?
俺の中の赤井さん像が崩れていくからやめくれ。

「だから言ったろ、俺が出る」
「チ、やっぱ実行犯は兄貴のが向いてるか」
「お前は情報を集めろ。なに、逃しはしないさ」

おーいキッド、この兄妹まじだぞ。早いとこ謝るか自首するか腹を決めたほうがいいんじゃないか?
…まぁこの兄妹に許すなんて選択肢はねーだろうけど。

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赤井兄妹がアップを始めました。
末っ子をみんなで可愛がってたらいいなという願望。多分秀吉も知ったら参加してくれると思う。頭脳犯が多い。

2017/10/05(19:42)


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※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません
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