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▽無題

赤井妹


「いだっ!?」

聞こえてきた叫び声に駆けつければ、そこには頭を抱えた涙目の姉さんと、両腕を組んで仁王立ちするママが居た。

「姉さん今度は何したんだ?」
「この状況だけでお前が何かやらかしたこと前提で問いかけられる気分はどうだ」
「…返す言葉もありません」

ママの言葉に更に縮こまって項垂れる姉さんは相変わらずだった。
姉さん昔からなにかとやらかすからいっつもママに怒られてたもんなぁ。
秀兄も昔は怒られてたけど、多分姉さんの方が溜息を吐かれる回数は多かった。
というかボク以外の家族はみんな姉さんに頭を抱えて居た気がする。
まぁ秀兄の監視元に置かれてからはずっと秀兄が面倒みてたみたいだけど、だからといって姉さんのトラブルメーカーっぷりが変わるかっていったらそんなことなかったよな。

「姉さんも懲りないね」
「やりたい事やって何が悪いんだろうね」
「やりたい事をやるのが悪いのではなく、犯罪に手を貸すなといっているのがわからないのか?次は拳骨だけでは済まないと思え」
「すみませんでした!!骨はやめて!!!」

見事な土下座だった。
ジャパニーズドゲザって姉さんが一番うまいと思う。
それくらいボクの姉さんは母さんに土下座を披露している。
嫌なら最初からやらなきゃいいのに。

「次はない」
「肝に命じます」

どうせまたやらかすのになぁ。
わかってて言ってるママもなんだかんだで甘いのかもしれない。
…まぁ躾的暴力は手加減ないけど。
特に秀兄と姉さんには。

「秀一は元気にやってるか?」
「元気に無茶してんじゃないの」
「姉さん一緒に住んでるんだろ?」

まるで他人事のように返す言葉に首を傾げれば、にやりと悪戯っ子のように歪んだ顔がこちらを向いた。

「今家出中だから」

ママの溜息が聞こえたけど、姉さんは気にしてないらしい。

「だってあいつの監視下息が詰まるんだもん。だからこうして息抜きを兼ねて真純に会いに来たんだよ」
「じゃあ秀兄は姉さんがここにいること知らないのか?」
「勿論。だってあいつが仕事行った隙に出てきたもん」
「あいつ?お前はいつから自分の兄にそんな口をきくようになったんだ?どうやら躾が足りないらしいな」
「…秀一兄さんが仕事に行った隙に家を出てきました」
「姉さん、多分そういうことじゃないと思うぞ?」

呼び方もそうだけど、家出についても怒られてると思うよ。

「学校はどうする気だ」
「あぁ、大学ならとりあえず出席は足りてるし気にしなくて…いいわけないですよね!はい!今すぐアメリカ戻ります!!」

姉さんは涙目だった。
まぁボキボキ関節鳴らしながら睨み上げてくるママをみたらそうなるよな。
姉さんはママには弱いからなぁ。

「じゃあね真純!また会いに来るからね!!お姉ちゃんのこと忘れないでね!!」
「いつも言ってるけど大丈夫だって。姉さんこそ気をつけて帰るんだぞ?」
「ううっ、私の妹がこんなにも天使…!」
「さっさと行け」

ママの手によってボクから引き剥がされた姉さんはそのまま放り投げられていた。


ーーーーーー
学生時代はしょっちゅう家出して妹に会いに来てた。
そして胃を痛める長男。
ーーーーーー


どうしてそんなことができるかとか、いつからとか、そんなこと分かるわけがない。
全神経を集中させた後の倦怠感。
くらくらと脳が揺れる感覚。
ふらふらと覚束ない足取り。
心身ともに休息を求める反応は、猛烈な眠気に近い。

「…もうむり」
「よくやった。後は任せろ」

硬い胸板で抱きとめられて、視界を覆うように被せられた大きな手に意識を手放した。
…報酬、絶対期日までに振り込めよクソ兄貴。

ーーーーーー

犯人を見事に仕留めた妹がよろめいたのを抱きとめれば、いつものように限界の言葉を弱々しく呟いた。

「よくやった。後は任せろ」

仲間が犯人を取り押さえるのを眺めながらそう告げれば、小さく頷いたような気がした。
そのまま寝ても構わないと手のひらで視界を覆えば、すぐに聞こえてきた寝息。

「ほんと、この子には毎回驚かされるわね」
「今回もやらせるまでに手を焼いたがな」
「それは貴方の交渉が下手だからでしょ。私の妹分でもあるんだからあんまりいじめちゃダメだからね」

そう言って妹の頭を撫でるジョディはこいつがいかに我が家の問題児であるかを知らないから言えるんだろう。
散々胃を痛めつけられた身としては甘やかしてくれるなと言いたいくらいだ。

「こうしてると可愛い普通の女の子なのにね」
「そうやって見た目に騙されると痛い目を見るぞ」
「あら、経験者の証言ってやつかしら?」
「それ以前の問題だ」

物心ついた時点で我が家のトラブルメーカーとなったこのじゃじゃ馬の面倒は長男である俺に投げられた。
一番俺の言うことを聞かないというのに、どうやって大人しくさせることができるというのか。

「素直に言うことを聞く日がくればいいんだがな」
「私はとっても素直でいい子だと思うけど」
「お前にはな」

こいつが女に反抗する日など一生こないのだろう。
それ程までに女には弱い。

「…将来が思いやられるな」
「ため息ばっか吐いてると老けるわよ」


ーーーーーー
FBIの仕事手伝わされてる妹。
毎回長男が回収してくれる。
全神経使うので終わった後疲れて意識を失います。
ーーーーーーーー


微かに感じたタバコの匂い。
きっと普段なら気付かないほどのそれは、恐らくついさっきまで神経を研ぎ澄ませていたからだろう。
ほんと、嫌になる。
まだその感覚が抜けて居ないのか、全ての事へ対して敏感に反応してしまう辺り、自分のコントロールができていない証拠なんだろう。

「…一応シャワー浴びて新品の服着ていけ」

子供たちと出かける約束があるらしい沖矢昴の皮を被った兄に言えば、普段は細められている目が此方を真っ直ぐと見据えてくる。
…その優男の面苦手なんだよな。

「どこで何をしていた」
「なんで成人済みの大人がンなこと兄貴に報告しなきゃいけないんだよ」
「お前が集中しなくてはならないほどの事があったんだろ。感覚が抜けてない辺り、そう時間は経ってない筈だ」

言え。
そう威圧してくるこの兄が、苦手だ。
なんでも見抜いてこようとするし、把握しようとする。
過保護もいい加減にしてほしい。
それは真純にだけ向けられるべきだ。
あの子は見ているこっちがハラハラするくらい危ないことに首を突っ込む。

「用事があるから出てくる」
「待て」

咄嗟に掴まれた右手首。
感覚が抜けていないせいで、そう強く握られたわけでもないのにびくりと肩が震えてしまう。
…ああ、最悪だ。
それになにより、この肌に触れている熱が熱くてどうにも気持ちが悪い。
人の体温すらも敏感に感じ取ってしまうせいで、気持ち悪いんだ。

「…悪い」
「別に」

バツの悪そうな顔で静かに解放された手首。
その顔が沖矢昴の仮面を被っているせいで、不快感は割増だ。

「今は無理には聞かん。だからここに居ろ」
「…私の勝手だろ」
「その状態でまともに外に居られるとでも?」

そう言われてはいい返す言葉もなく、舌打ちを一つ残して自室にしている部屋へと戻った。
未だ鼻に残る微かなタバコの匂いにまた舌打ちをして、ベッドへと飛び込んだ。
…だめだ、繊維の匂いすら感じてしまう。
この体は不便だ。


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神経研ぎ澄ませると相手の行動をほんの少し先読みできちゃう超人だけど、それやった後は怠くなったり、直後はずっと敏感なままになってたりもする赤井妹。
だから本人はあまりやりたがらないはずなのに、そんな状況になってるのに気付いて追及する長男。
これに関しては心配だからだけど、その辺お互いに不器用だから伝わってない。
ーーーーーー


2017/11/15(20:13)


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※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません
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