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▽無題

弱ペダで福富くんの幼馴染




◯福富くんの幼馴染
基本的にへらへらしてるイメージが強い女の子
のんびりしていて割とめんどくさがり。
ロードレースには特に興味はないので、試合を見に行ったことはない
だから福富が強いかどうかはわからないが、きっと強いんだろうとぼんやりと思っている程度。
試合観に行ってないから強いとは言わないけど、かっこいいとは昔からずっと言っている。
「寿一はかっこいいよ」
断言しちゃう位には幼馴染が大好き。
性別はおまけみたいなもの。
女だから男だから。その手の言葉が苦手。

ーーーーーーーー

周りからのイメージというやつは、その本人の本来の性質までもを変えかねない。
そう思うのは、そこそこ私がそのイメージに弱りつつあるからだろうか。
黒髪なのはただ単に染めていないだけ。
あまり喋ろうとしないのは、余計なことを言って面倒ごとを起こさないため。
成績がそこそこいい方なのは、楽をする為。
かといって目立ちたくも無ければ元々頭がいいわけではないから中途半端といえば中途半端な成績だ。
言葉遣いだってそんなに良くもないし、たまに雑になる事だってある。
だけど人は私を真面目で大人しい、優等生とすら思うのだろう。

「…だるいなぁ」

誰も居なくなった教室で、一人書き終わった日誌を前に呟いた。
完全に押し付けられたそれは一度や二度ではない。
頼めばなんでもやってくれる便利屋だとでも思ってるのだろうか。
それでも嫌だと言う方が面倒なことになるのはよく知っている。
私はただ相手のイメージのままに動いていた方がきっと楽に生きていけるのだろう。

「そんなに嫌なら断ればいいだろう?」
「寿一が良かった…」
「折角迎えに来たってのにそりゃないぜ」

そう言ってとなりの席に腰かけたのは新開隼人くん。
私の幼馴染と同じ自転車競技部に所属する副部長。
因みに部長は私の幼馴染である寿一だ。
私は試合を見たことはないし、精々部活中の姿をたまに見かける程度だからその強さを目の当たりにしたことは無い。

「結局中学最後の試合も観に来なかったな」
「わざわざ行く程興味を注がれない」
「相変わらずだなぁ」

パワーバーとやらをムシャムシャと食べる新開くんこそ相変わらずだと思うけど。と言う言葉は飲み込んでおいた。
もう喋ることすら面倒だ。

「おめさん、自分では悪い癖だって言ってるが、別にいいんじゃないか?」

なにが?と視線で問えば、彼はまたムシャリと大きな口でパワーバーに噛み付いて、そして暫し咀嚼した後飲み込んで再び口を開いた。

「すぐに顔に出るところ。特に面倒だと思った時。ってよく言ってたろ?」
「…周りのイメージにはないものだからね。そんな人だと思わなかった。なんでそんなこと言うの?って言われること程面倒なことはないよ」

別に優しいわけじゃない。
どうでもいいし、面倒だから合わせてるだけ。
なのに相手は勝手に私が優しいからだと勘違いしてそのイメージを押し付ける。
たから隠すようにした。

「高校デビューでもしてみたらどうだ?」
「…めんどくさい」
「おめさんそればっかだな」

そう言って笑う新開くんの声を聞くのは、面倒ではない。

「もうすこしだけ、自分らしく生きてみようかな」
「そりゃあいい、応援するぜ?」

面倒だからと遠回りする方がもっと面倒なのかもしれない。
やりたい事を制限される方が損だろう。

「高校行ってもさ、今みたいに話してくれる?」
「それを今更聞くのかい?」
「ヒュウ、新開くんかっこいー。寿一の次にだけど」

彼の口癖を真似れば、やっぱりおめさんは相変わらずだな。と笑った。
私の中で一番かっこいい人は福富寿一と決まっている。

ーーーーーーーー


○高3の冬

「あれって自転車部じゃない?」

隣を歩く友人で顎で示したのは、この寒い中雪遊びをする自転車競技部の三年の姿だった。
その中には寿一も居て、あぁ、多分寿一が遊びたそうにしてたのかな。と勘付く位には私は彼らの事を知るようになっていた。
彼らはみんな寿一のことが大好きなんだろう。

「高校生にもなってなにやってんだか」

はぁ、と吐き出されたため息は真っ白で、この寒さを表してしているようだ。
そのままマフラーに口元を埋めた友人はいかないの?と視線だけで私に問いかける。
…流石にこの寒い中雪遊びをする元気はない。
首を横に振ろうとしたその時、荒北くんに向かって雪玉を投げた寿一と目があった。
あ、嫌な予感。
そして見事雪玉を食らった荒北くんが寿一の視線を追って私を見つける。
…これ無理なやつだ。
そっと視線を逸らして背を向けようとしたその瞬間、逃がさないと言わんばかりに叫ばれた私の名前。
野獣に見つかったの運のツキだろうか。
いや、あの幼馴染と目が合った瞬間にこうなる事は決まっていたのだろう。
そして荒北くんの私を呼ぶ声に続いて新開くんからも招く声が掛けられる。

「…ねぇ」
「嫌よ」
「でもさぁ」
「絶対嫌」

一緒に巻き込まれてと頼もうとも、ハッキリと拒否する言葉を告げる友人は絶対に付き合ってはくれないのだろう。
そして耳に届いた寿一の声に、私は友人に別れを告げて愉快な集団の元へと駆け出したのだ。
…私も大概寿一に弱いんだもんなぁ。
荒北くんのことは言えないかもしれない。

ーーーー

○上の続き
荒北視点

「手、寒すぎてヒリヒリするんだけどなぁ」

そう言って困ったように笑いながら駆け寄って来たのは、福ちゃんの幼馴染の女。
一部で福チャンの女と噂される女でもあるが、二人は付き合っているわけではない。

「手袋はしていないのか」
「ポケットに入れとけばいいかなって。あと手袋あんまり好きじゃないんだもん」
「…冷えてるな」
「寿一も冷たいよ」
「お前程ではない」
「本当に?」
「俺は強い」
「うん、そうだね。そんな寿一はかっこいいよ」

体温を確かめるように触れる福チャンの手を握り返して笑う女は、へにゃり。といつもの気のぬけたような顔で笑った。

「やめるか?」
「やるよ。やる。そこの野獣に石入れた雪玉を投げつけるって決めたからね」
「ナニソレェ!?随分と陰湿じゃナァイ?」
「荒北くんが悪い」
「とか言って福チャンと目が合った瞬間決まってたクセに」
「寿一、これガッチガチに固めて。やっぱり顔面狙わないと気が済まない」
「ああ、分かった」
「福チャァン!?」

今明らかに石入れたよなこの女!?
何で福チャンも言われた通りやってんの!?
悪いの俺じゃなくね!?

「おい新開!オメーも誘ったんだから同罪だろ!」
「そうか?俺は純粋に一緒に遊びたかっただけだぞ。なぁ?」
「私、新開くんの顔には弱いんだよなぁ」
「おいコラクソ女」
「ねぇ寿一、氷柱みたいな雪玉は投げるのありかな?」
「それは氷柱じゃないのか?」
「違うよ、氷柱みたいな雪玉」
「ならいい」
「よくないネェ!?つーか完全に氷柱じゃねぇか!殺す気か!!」

福チャンに向けていた気の抜けた笑みとは打って変わってにっこりと満面の笑みで氷柱を握りしめる女は殺る気満々だった。

「あ」

つるりと滑り落ちた氷柱。

「だめだ、寒すぎてかじかむなぁ。ごめん寿一、私は混ざれそうにないや」

握ることすらできないと言わんばかりに指先を動かしながら困ったように笑った幼馴染に、何を思ったのか両手を差し出した福チャン。

「寿一がカイロになってくれるの?」
「お前が嫌でなければ」
「嫌なわけない」

そう言って嬉しそうに福ちゃんに抱きついて、その細っこい腕を背中に回した女はやっぱり嬉しそうな顔でその胸に顔を埋めた。

「ふふっ、これじゃカイロじゃなくて着る毛布だ」
「嫌か?」
「まさか。カイロよりもっと嬉しいよ」

俺たちは何を見せられてンだろーな。
ヒュウ。と冷やかすような声を上げた新開と、これはめでたいな!と何か勘違いをした東堂が騒ぐ声を聞きながら吐いた息はやっぱり白かった。
いや、これ割とフツーの光景だから。

ーーーー
苦労人荒北。
荒北さんってなんだかんだで面倒見いいと思うんですよね。
そして東堂さんはヒロインとはあまり面識がないのでこの光景もはじめてだったりなかったり。
新開さんは見るたびにヒュウってやってると思うよ。
恋愛させるなら新開さん荒北さん福富さんの三人の誰か。
荒北さんが有力だったのに、なぜか初っ端に新開さん絡めたせいか、新開さんルートの可能性が浮かんでしまった…
福チャンは噂とか全く気にしないと思う。
高校生デビューしたヒロインも噂は全く意識しなくなった。
だって好きなんだもん。と開き直っている。

ーーーーーー

○高校生時代のどっか。

ぽっかりと穴が空いたように、何もかもが抜け落ちてしまったように、ただ無だけが広がるように、考える事を放棄した。
誰も居ない教室。
電気を消した教室内は夕暮れ時の色をしていた。
ぼんやりとする頭で考えるのは、ひとつだけ。

「…めんどくさいなぁ」

めんどくさい。
何もかもがめんどくさい。
誰も居ない教室に虚しく響いた自分の声。
誰も居ないことへ感じる安心感。

「かえりたくないよう」
「そしたら飯も食えなくなるだろ」

腹減るぞ?と続けたのはよく知る声だった。

「…新開くん」

デジャブ。
中学最後の年の冬、たった二人ぼっちの教室でのことを思い出した。

「高校生デビュー、成功したかな」
「おめさんがあの頃より楽に生きれてるのなら成功だろうよ」
「これはまた難しいことを言うね」

それでも、やりたくないことをやる頻度は減った。
言いたいことを言う頻度は増えた。

「…ほんの少し、楽にはなったね」
「なら成功だ。と言いたいところだが、その顔じゃあそれも断言できないな」
「まぁこれは高校生デビューとは関係ないやつだからね」

家での問題に高校生デビューは無関係だろう。
育ててくれた両親には恩もあるし感謝もしている。
でも、自分だけが異質なのだと感じるあの家に帰るのは、たまに気が重くなる。

「イケメンと放課後の教室で二人きりとか、君のファンにバレたらめんどくさそうだ」
「そしたら友達だって言えばいいだろ?本当のことなんだから」
「言うよ、言う。もう変に誤魔化そうとするのはやめたもん」

中学生の頃は適当に誤魔化していた。
たまたまだよ。
そんなに接点ないし。
全部は面倒事に巻き込まれないため。

「やっぱかえろうかなぁ」
「なら途中まで一緒に帰ろう」
「寿一も居る?」
「ほんと相変わらずだな」


ーーーーーーーー


「触りたい」
「…ハァ?」

やけに真剣な目でコッチを見てるかと思えば、そんな訳のわからないことを言われた。

「福チャン、コイツもう手遅れダヨ」
「言ってやるな」
「だってこんなに細いんだよ!?でもヒョロいとかじゃないんでしょ?筋肉なんでしょ?意味がわからないよ!!」
「お前みたいなデブと一緒にすんな」
「荒北くんのそういうところどうかと思いまーす」

だってそーだろ。
こっちは日々鍛えてンのに、普段からへらへらしてるだけのヤツと同じ体格とかあってたまるかってーの。

「痛くしないからさぁ」
「触るだけだよな?なんで触るだけなのにンなセリフが出てくんノォ?」
「一回だけだから!!!」
「人の話聞いてる?」

だめだ、コイツ触る気満々じゃねぇか。
福チャンは止める気はないらしく、むしろ諦めろと言われた。
福チャンが言うのなら抵抗したところで無駄なんだろうネェ…

「仕方ねーナァ!その代わりベプシ奢れヨ!」
「ベプシ一本で体を売る荒北くんはとっても安上がりだね!」
「シメるぞクソデブ」

へらへらと笑う顔面を殴れたらどれだけいいことか。
ほんっとコイツ俺に対して生意気なのなんなの?見下されてんのかァ?

「いだっ、いたい!握力おかしい!!そんなに細いのにゴリラなの?荒北くんはゴリラなの!?」
「ゴリラじゃありませェン」
「ねぇ待ってほんとこれ痛いって!!」

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オチを見失ったので終わり!
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「あんたはどうなのよ」
「…なにが?」

周りが楽しくお喋りする中、一人お昼ご飯を堪能していれば唐突に振られた話題。
勿論ご飯のことで頭もお腹も一杯な私は何も聞いていないので、話の流れが全是わからない。

「色気より食い気ってやつだ」
「認めるけどその顔やめて?」

友人の一人の言葉にそう返せば、また別の友人がなんの話をしていたかを説明し始めた。

「で、自転車競技部の中なら誰が一番イケメンだと思う?」
「あぁ、そういうのみんなすきだよねぇ」

東堂様!とか新開くん!とかそんなことを言ってるのよく聞く。
なんだっけ、東堂くんにはファンクラブがあるんだっけ?新開くんはよくわからないけど、あの顔だったらあっても不思議じゃないな。

「新開くんの顔、好きだよ」
「え、あんた福富くんじゃなかったの?」
「一番かっこいいのは寿一だけど、イケメンは誰かって聞かれたら個人的には新開くんだと思ってる」

まぁそもそも自転車競技部のメンバーよく知らないんだけども。
寿一と新開くん、荒北くんとは話すこともあるけど、ほかの人と喋ったことなんて殆どない気がする。

「寿一はね、イケメンっていうよりもかっこいいんだよ。世界で一番かっこいい人」

別にそれを分かってくれとは思わないし、理解されなくても構わない。
ただ私にとっては寿一が一番かっこいいってだけだ。

「あんたたちってほんと不思議よね」
「なにが?」
「福富くんともっと仲良くなりたいとかデートしたいとか思わないの?」
「そういうのは特には。話したいときに話せて一緒に居たいときに一緒に居れたらそれでいいかなぁ」
「ほんっとない。ないわ」
「なんでそれでカップルになりたいとかないの?」
「だってそうなりたいとは思ってないもん」

何故今のままではダメなんだろうか。

「男女の友情なんてあってないようなものよ」

ほらまただ。
もしも私が寿一と同じ男だったのなら、そんな事は言われないのに。
男と女だからと直ぐに恋愛関係にもっていかれる。

「じゃあ私と寿一だからあるんだよ」

性別なんておまけみたいなものに振り回されるなんて意味がわからない。
一個人として考えればいいのに。

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すぐオチを見失う
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2018/02/28(17:34)


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※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません
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