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▽勧善懲悪には程遠い

ダークサイド風主人公C

オリキャラの話が多めになってます。



くるくる回る。
ぐるぐる回る。
そうして最後はごちゃごちゃに絡まってどうにもならなくなる。

「さぁ、最後に笑うのはどちらでしょう」

私利私欲に駆られて溺れに溺れ、そうして己の首を絞めてゆく叔父は滑稽でもあり哀れでもある。
そう、いつか彼はその欲によって死にゆくのだ。

「にいさま?」

私の膝に頭を乗せ、幸せそうに眠っていた雪菜がぱちりとその大きな瞳でこちらを見上げた。
何も知らない純粋無垢な綺麗な瞳。

「雪菜、君は綺麗過ぎる」
「ふふっ、雪菜のことほめてくれるの?」
「そうだね、綺麗だよ雪菜。だからそのままでは汚されてしまう」
「にいさまのいうことはむずかしいわ」
「分からなくていいよ。分からないままの君でいて欲しいんだ」

そう言って頭を撫でれば気持ちよさそうに目を細める。
幼くして母親を失い、欲にまみれた父にうまく使われてしまう彼女を、私は救えるのだろうか。

「雪菜のゆめはにいさまのおよめさんです」

叶いもしないそれを彼女が信じてやまないのは、叔父が彼女へ言って聞かせたからだろう。
洗脳であり呪いだ。

「私は君の王子様にも旦那さまにもなれないよ」

いつもと同じように柔らかな声音で言い聞かせれば、彼女はくしゃりと泣きそうな顔をして言うのだ。

「どうしてにいさまはそんなことをいうの…雪菜のこと、きらいなのですか?」

子供はずるい。
好きか嫌いしかないその狭い世界での基準を問われて仕舞えば、私はこう答えるしかないのだ。

「嫌いじゃないよ」

好きだよと言わないのは、せめてもの抵抗なのかもしれない。
それは雪菜へのではなく、汚い欲で綺麗な彼女を汚そうとする叔父へのだ。
私はいつからその汚い世界へ巻き込まれるようになったのだろうか。
始まりは知っている。
理由は分かっている。
愛するものを守るための選択であったそれは、いつのまにか欲深い人間に利用されるすべとなってしまった。

「…どうしてこうなってしまったのだろうね」

こんなこと、誰も望んじゃいなかったのに。
再び健やかな寝息を立て始めた彼女の髪を撫でながら呟いた言葉は誰の耳にも届きはしない。

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助けてという言葉はとうの昔に失った
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父の友人だと紹介されたのは、警察官だった。
銃の腕前が凄いんだときらきらと目を輝かせて語る父に母は子供みたいだと笑い、父はそんな母に少しだけ恥ずかしそうな顔をして仕方ないだろ。と笑うのだ。
それはいつかの幸せな記憶。
幼き日の私の記憶。

「あんなに可愛かった女の子がまさかこんな可愛げのねぇ大人に育つとはなぁ」
「そんなことをおっしゃるのは毛利さんだけですよ」

昔見た時とは違い、髭を生やした彼は相変わらずだ。

「初めてお会いした時も私は息子だったでしょう?」
「息子であり娘だっつったんだよてめぇの親父は」
「息子と言ったのは事実だ」

鳳家の跡取り息子。
それが私だ。

「今だけ娘にしてやれるつってたろうが」
「はて、なんのことやら」

花柄のワンピース。
裾にはふわりとしたいかにも可愛らしいフリルのついたそれを着た私を、母は泣きながら素敵、世界で一番可愛らしわ。と抱きしめた。
父もまたそれに同意していたが、その顔は悲哀に満ちていたと思う。
そんな顔をするくらいならば、男の子の格好でよかったのに。
それでも本来の性別の姿をさせたかった二人を思うと言えなかった。

「私は性別なんてものに拘りはないのに」
「それを聞いたらお前の両親は泣くだろうな」
「それはいけない。私がまるで親不孝者のようではないですか」
「なんでお前はいまでもそれを受け入れている」

両親を亡くした今、私にそれを受け入れる必要はないと言いたいのだろう。

「さて。私利私欲に溺れたお馬鹿さんに思い知っていただくため。なんてね」

もう始まっている。
私の両親が亡くなったあの日から、それは動き出した。
いつかその欲に溺れ死ぬ日が来るだろう。
私はそれを見届ける為に鳳家の跡取り息子を演じ続けるのだ。

「全ての人にハッピーエンドが訪れる。なんて都合のいい御伽噺はフィクションの世界にしか存在しませんから」

お前、と口を開いた毛利さんにひらりと手を手を振って事務所を出た。
もう止まらない。
止められない。
時間を止められないのと同じだよ。


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復讐劇と言うにはぬるい
けれど確かに動き出した
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プルタブを上げればプシュリと空気の抜ける音。
しゅわしゅわと聞こえてくる音に口元を緩ませるのは本来の顔か。

「高いお酒も美味しいけれど、缶チューハイだって悪くないでしょう?」

そう言って笑ったのはいつも通りの食えない優男の顔だった。

「けっ、持ってくんなら高ぇ酒にしろよな。何のための社長だよ」
「ちょっとお父さん!ごめんなさいね鳳さん、折角持ってきてくれたっていうのに…」
「いいえお気になさらず。それに私はこうして蘭さんの手料理が食べれるわけですし、いいこと尽くめですよ」
「人の娘に手ぇ出そうとしてんじゃねぇよ」
「おやこれは失礼。お父様の前でするには軽率な行動でしたね」
「蘭ねえちゃん!お鍋焦げちゃうんじゃないかな!?はやくはやく!」

蘭を台所へ引っ張っていくコナンを見て笑う顔は楽しそうだった。

「てめぇはいつも笑ってやがんな」
「そりゃあ、楽しければ笑うでしょう?」
「楽しそうに見せるためにわらってんじゃねーのか」
「さあ、どうでしょう?名探偵が仰るのならそれもまた正解でしょうね」
「けっ、相変わらず食えねー奴」

始めは人見知りをする小さな女の子だったってのに、いつからこんな優男の皮を被るようになったのか。
外では男として振る舞い、そうするように育てられていたが、本来の性別を知る奴の前では普通の女の子だった筈だ。
あれはこいつの両親の葬儀の時、数年ぶりに会った姿はすでに今のいけ好かない男の姿だった。

「いつになったら戻る気だ」
「おや、もう帰れと?毛利さんもひどいお方だ」

分かっていてわざとはぐらかすのはいつものことだった。

「そういえばしてませんでしたね」
「何をだ?」
「ほら、乾杯ですよ」

目の前に突き出された缶チューハイに飲みかけのそれをあてれば、何が楽しいかけらけらと笑いだす。

「お前にしちゃ品のねぇ笑い方だなぁ?」
「ははっ、私だって声を出して笑うことくらいありますよ」

そりゃそうだ。
思い出したのは父親とふざけあってけらけらと笑う幼い少女の姿だった。

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それはとうの昔に捨ててしまった姿
普通の女の子に戻る気はもうなくて、一生鳳家の長男として生き、そして死ぬ覚悟が彼女の中であるんだろうなぁと。
毛利さんは複雑な気持ちで見守ってるはず。
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まっすぐに伸びた背中。
和かに微笑んで客人と挨拶をする声。
会場の誰よりも上品で、輝いているその姿は私の憧れ。

「こんにちは。今日はいつものネックレスではないんですね」

確か旦那様にプレゼントされた大切なネックレスでは?と片隅で眺めていただけの私にまで声を掛けてくれる彼は誰よりも紳士的で素敵に見えた。

「ほんの少しの会話でしたのに、よく覚えてましたね」
「気に障ったのならばすみません。懐かしそうに語る貴女の横顔があまりにも印象的でしたのでつい」
「ふふっ、そんな貴方に一体何人の女性が落とされてしまったのかしら?」

ご冗談を。と笑う彼だけど、きっと彼に思いを寄せる女性は多い。
鳳家の長男であり現社長の肩書きだけでなく、その外見も性格も魅力的とくれば誰だって目がいくに違いない。

「お兄様」

そんな彼と将来を約束されていると囁かれているのが彼女、雪菜さんだ。
女子高生である彼女は子供らしさが抜け切れておらず、私と談笑する彼に嫉妬した様子で彼を呼ぶ。

「雪菜、今日のパーティーは欠席の筈だ。叔父様はご存知なのかい?」
「だって兄様が参加されてるって聞いたから…」
「私はそんなことは聞いてはいないよ」
「…ごめんなさい」
「ならどうしなくてはいけないかわかるね?」
「でも…っ」
「雪菜」
「…わかりました」

それは婚約者というよりは兄妹のように微笑ましく、思わずくすりと笑ってしまった私に向けられたのは、彼女の幼く愛らしい嫉妬の浮かんだ瞳だった。

「絶対に目を離さないでください。必ず家まで送り届け、メイド長に引き渡すまでは側を離れないでください」

呼び寄せたボディーガードにそう告げるのは、彼女が大切な存在だからだろう。
会場を出て行くその姿が見えなくなるまで、彼の視線はずっと彼女に向けられていた。

「随分可愛がってらっしゃるのね」
「ええ、雪菜は少々お転婆な子ですから可愛らしくて目が離せませんよ」
「あら、それは惚気ととっていいのかしら?」
「ご冗談を。周りのものは勝手に言っていますが、彼女は私にとって可愛らしい妹分ですよ」

そう語る顔には嘘がないようで、心のどこかで安心している自分がいた。

「おや、そう言う貴女こそ私の発言にほっとした顔されているようですが、これは美女に少なからず想いを寄せられていると勘違いしてもいいんでしょうか?」

長ったらしい口説き文句は普段なら顔を歪めてしまうくらい嫌いなはずなのに、彼に言われたというだけで舞い上がりそうになる自分が居た。

「ふふっ、それで火傷をしたら貴方も困るでしょう?」

それを表に出さないようにあえて大人の女として言葉を返せば、彼は笑みを崩さないまま半歩私へと歩み寄る。

「貴女とお近づきになれるのなら、多少の火傷くらい喜んで負いますよ」

むしろ勲章だ。と笑って見せたその真意などどうでもよかった。
その裏に何があっても構わない。
憧れであった彼にこうして近寄ってもらえただけでも幸せなのだ。
それを拒む理由なんてあるわけがなかった。

「少しだけ貴女の時間を私だけにいただけませんか、マドモアゼル?」
「ふふっ、そうね、貴女がそういうのなら
今の私はマドモアゼルになりましょう」

差し出された手は勿論とった。
まるで女性のように細い指。
繊細で清廉、そんな言葉が似合う彼と秘密の逢瀬を重ねられたらどれ程素敵な事だろう。

ーーーーーー
夢は夢のまま終わらせましょう?

多分旦那がなんかやらかしてるからわざと近づいた。
口が上手いから適当なこと言って色々吐かせるんだろうなぁと。性格悪いですね!(笑)
恐らく口喧嘩では負け知らず。
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2018/08/06(22:25)


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※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません
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