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▽無題

星屑{emj_ip_0829}刀剣乱舞
色々ネタを練ったくせに尻切れとんぼです。
もう少し明るい話がかけるようになりたいですね!
クロスオーバー楽しすぎて色んなネタで考えてしまいます。




「君には現世にて新たな任務に取り組んでもらう」

時の政府のお役人はそう言い切った。
拒否権などまるでない、決定事項を告げた彼に審神者である彼女は表情を崩す事なく静かに頷いた。

これはとある本丸にて細々と審神者をやっていた一人の女性の物語。

ーーーーーーーーーー

審神者
降谷妹(27)
兄が出て行った後、大学卒業後に審神者となった。
医師免許はちゃんと取得済み(ただし全く活かされていない設定)
微笑んだり労りの言葉をかけたりはするものの、刀剣達とは一定の距離を保っていたが、今回の現世への任務で徐々に素が出て行く予定。


ーーーーーーーー

「連れて行く刀剣は三人。人選の決定権は私に任されました。どうか、私と一緒に現世への任務へ協力してください」

そう言って僕らにお願いするように頭を下げたのは、僕らの主。
僕の今の、大切な主。

「主の頼み事ってんなら断る理由はねーって!な、小夜」
「うん」
「貞宗も小夜もありがとう」

ほんの少し眉を下げながら口の端を微かに緩めて微笑む顔はいつもと変わらない。
どこか遠くを見る目や、こうして微かに感情を表す顔はもう見慣れたもので、彼女が感情を大きく表す姿を見た者はきっとここには誰も居ないのだろう。
僕をのぞいて。

「私は光忠ともう少し話があるから、二人はもう行って大丈夫だよ」

優しく二人の頭に手を置いて、髪を撫でるように白い手を滑らせて彼女は二人を見送った。

「…本当は君にこんな役を負わせたくはなかったんだけど、ごめん」
「僕を選んだ理由を聞かせてくれれば僕はそれだけで構わないよ」

彼女が気にしているのは今回に任務で僕へ与えられた仮の姿のことだろう。

「…私はあまり家事が得意ではないし、特に料理…それに、君が一番現代に馴染めて常識もあるように思えたから…最後のは私と光忠だけの秘密でお願いします」

多分長谷部に怒られるから。と彼女の世話をやきたがる彼の名を口にして、また彼女は困ったように笑うのだ。
そう、彼女の微笑みはいつだって申し訳なさか困惑が混じっている。
心からの笑顔を僕らは見たことがない。
彼女の感情があらわになるのを、感情的になる姿を見たことがない。
たった一度だけ見たことがある、あの泣き顔と怒った顔をのぞけば。
それも僕だけが見た彼女の顔。
僕だけが唯一知る、他の刀剣も知らない彼女の姿。

「それで、僕に与えられた役割は?」
「知ってるのに聞くの?」
「君の口から直接聞きたいんだ」

政府の役人が送ってきた指令書には連れて行く三人の役割だけが書かれていただけ。
そこに彼女が選んだ刀の名を記載した書類。
その書類を見ただけよ僕らは、彼女の口から自分に与えられた役割を聞いていない。

「…私の夫になってください」
「なんだかプロポーズみたいだね」
「君が言わせたんだよ」

ほらまた、君はまた困ったように微笑むのだ。
けれどこれはしょうがないなぁ。と言っているような、そんな優しい微笑み。

「君に拾われたこの身は…君が救ったこの身は君だけの為にある。だから僕は君が言うことは全て受け入れるよ」

そう、堕ちかけた僕を救ったのは彼女だ。
白く細い手を僕に伸ばして、すくい上げてくれた。
彼女はどこかそっけないと、壁を感じると言って寂しがる刀剣もいるけれど、僕には優しく包み込んでくれる人にしか見えない。
感情が希薄なんじゃない。
彼女はただ、感情を隠しているだけだって僕は知っているから。
でなければあんな風に泣いて怒って叫んで僕を救うことはなかっただろう。
必死に僕を救い出そうとする彼女の心が、確かに僕に届いたから、だから僕はここにいる。

「君は君の意思で生きていいんだよ。君は…君たちには、その為にその体があるんだから」
「僕の言い方が悪かったね。君の為にありたいんだ。僕が、僕の意思で君のものでいたい。それならいいでしょう?」
「伊達男はこれだから困っちゃうなぁ」
「かっこよく決まったかな?」
「君はいつもかっこいいよ、光忠」

僕を呼ぶ優しい声。
この声を守る為ならば、きっと僕はなんでもするのだろう。
光忠、と彼女に呼ばれる事がこんなにも心地いいのだから。

ーーーーーーーー

燭台切光忠
今回現世への任務で審神者の夫役に任命された。
過去に別の女審神者の下にいた頃色々とあった。所謂ブラック。
現審神者(降谷妹)以外の女性に対して無意識に嫌悪感や恐怖を抱いてしまう。
過去の出来事のせいで女性恐怖症気味。
降谷妹のことはでろっでろに甘やかしたい。
なんなら依存されたい。し、光忠は内心依存している。
表には出さないようにしているが、付き合いの長い刀や降谷妹に想いを寄せる者にはなんとなく感じ取れてしまう。
ヤンデレとスパダリのギリギリの線で書きたい。
現世ではバーテンダー。

太鼓鐘貞宗
今回は光忠側の遠い親戚の子供役。
両親が海外赴任の為預かっている設定。
小学六年生。
元気いっぱいお洒落番長。
学校でもモテる。
中学生かで悩んだけど、小夜と一緒に行動できるように小学生設定。

小夜左文字
二人の養子設定。
小学一年生。
気付けば少年探偵団に入れられていたりいなかったり。
それなりに子供らしい小学生生活を送っている。


ーーーーーーーーーー

「うわ、すっげーな!これが俺たちの家でいいのか!?」
「そうだよ。部屋もちゃんとそれぞれ一人部屋を用意してくれたみたい」
「小夜!どの部屋がいいか見に行こうぜ!」
「僕は余った部屋で別にいいけど…」
「折角なんだし、二人で色々見て決めておいでよ」
「ほら、みっちゃんもそう言ってるし、いいよな主?」
「いいよ。好きな部屋を選んでおいで」

安心させるように小夜の頭に手を置けば、こくりと一つ頷いて貞宗に手を引かれながら部屋を探検しに行った。
時の政府が用意したのは家族層にぴったりな部屋数の多いマンションだった。

「…少し広すぎる気もするんだけどなぁ」
「そうかな?折角だしありがたく使わせてもらおうよ」
「そうだね」

キッチンを見に行こうと私の手を引く光忠はあの二人と同じでどこか楽しげだ。
よかった。
彼は色々あったから今回連れて行くことに関しても悩んだけど、それは無駄に終わったらしい。

「わ、これシステムキッチンじゃないか!お洒落でいいね。これから料理をするのがもっと楽しくなりそうだ」
「ほんと、光忠を選んでよかったよ」

きっと私にはこのキッチンは扱いきれないだろう。
そしてあの二人を満足させる料理ができる気がしない。

「明日からそれぞれ学校や仕事に行くことになるけど大丈夫?」
「僕は大丈夫だよ。バーは政府の管轄だって聞いたし、こっちの事情は知っててくれるんだろう?」
「うん、情報を集めるにはちょうどいいって聞いたし、よろしくお願いします」
「任せてよ!長期任務なんて初めてだし、折角ならカッコよく決めたいよね!」

ぱちん、とウインクをして見せたこの伊達男はお茶目さも搭載されている。
イケメンは何をしてもイケメンだけど、カッコいいが服着て歩いているような彼にもこういう可愛らしい一面もあるのだ。
このギャップに落とされた審神者が果たして何人いるのだろうか。
そしてこれから現世で何人の女性が落とされ、そして恋破れていくのだろう。
…あれ、私大丈夫かなこれ。刺されない?
こんなイケメンの嫁っていくら設定だとしてもおこがまし過ぎる。
しかも一応神さまである。

「顔色が優れないみたいだけど、大丈夫かい?何か温かい飲み物を用意するから、君はそこのソファーでゆっくり休んでいてよ」

引っ越し疲れただろう?
そう言って私の肩を抱きながらソファーへとエスコートする彼を的確に表した言葉があったはず。

「…スパダリか」
「すぱだり?」
「ごめんなんでもない」

私は一体何を口走っているのだろう。
久しぶりの現世に調子が狂わされているのだろうか。
…まだ引っ越ししただけなのにこれでは、この先どうなることやら。
あの日、時の政府の役人に声をかけられて審神者になってから何年もこちらには来ていなかった。

「…だめ、任務のことだけ考えればいい」

あの日の光景が頭を過る。
泣きそうな顔をした兄。
傷ついた顔をした兄。
そして去っていく背中。
全部全部私のせい。
だから私が泣いてはいけない。
だって私が悪いのだから、私になく権利なんてないんだ。
どんなに叫んで手を伸ばしても、待ってと声をかけても、兄は待ってはくれなかった。
そして追いかけることのできなかった私。

「主、主っ」

あの時の光景を思い出していると、心配そうな光忠の声に呼び戻される。

「…ごめん、久しぶりの現世で少し疲れたのかも」
「そっか、無理はせずに今日はゆっくり休むといいよ。コーヒー入れたんだけどホットミルクの方が良かったかな?」
「ううん、コーヒーでいい。ありがとう、光忠」

熱いから気をつけてね。とテーブルに置かれたそれを包み込むように持てば、じわりじわりと熱が染み込むように広がっている。

「…あったかい」
「それはよかった。飲んだらもう寝るかい?」
「うん、シャワー浴びたらすぐに寝るよ。色々話もしないといけないのに、初日にこんなでごめんね」
「貞ちゃんたちも引っ越しで喜んでいるし、明日また落ち着いてからすればいいよ」

光忠の言う通り、あとは明日にしよう。
現世での任務についてはまたゆっくり話せばいい。

ーーーーーーーー
そして寝室は光忠と一緒だった降谷妹。
時の政府の配慮です。
夫婦なんだから寝室は同じだろう?っていう。

ーーーーーーーーーー

今回の現世での任務は、この時代で歴史修正主義者の目撃情報により発生した。
誰かが歴史修正主義者を使っているような情報もあるため、その人物を探し出すこと。
目的は未だ判明していないが、歴史を変えないためにも歴史修正主義者は見つけ次第破壊すること。
その二つが今回の主な任務内容である。
確認するように三人に告げれば、彼らは口を揃えて任せてと言うのだ。
なんて心強いことだろうか。

「現世に馴染むため、そして情報を集めるためにも君たちには学校に行ってもらいます」
「主はどうするんだ?みっちゃんと同じで仕事するのか?」

貞宗の疑問も尤もで、今回情報を得る為、一般人を守る為にとそれぞれに動きやすいよう役割が与えられている。
どれも時の政府と現世の政府が協力し、私たちへと与えられた役割。

「私は表向きはパート探し中の主婦で、主に現世での協力者との情報の共有役」
「ぼくたちはその協力者には会えないの?」
「私が責任者として直接やり取りをすることになっているから、基本的には顔合わせとかはしない予定だよ」

すでに協力者の名前は教えられている。
それが本名かどうかは分からないけれど、大事なのはそこではない。
ちゃんとやっていけるかどうかだ。

「向こうも別件の潜入調査で動いてるらしいけど、その潜入先でも歴史修正主義者らしき目撃情報があったらしいから今回その人が協力者になってくれるそうです」

説明は以上。と切り上げれば、良い子のお返事でそれぞれの役割を果たすための支度に取り掛かった。

「僕は夕方からの仕事だから、それまでは君と一緒に過ごしてもいいのかな?」
「君は私の旦那様だからね。協力者と顔合わせをする為に明日喫茶店に行くんだけど、光忠の同行許可は取ってあるから一緒に行こう」

伝えられている協力者の名前は安室透。
潜入調査の一環で喫茶店の店員をやっている29歳の男性。
個人で探偵もやっており、有名な毛利小五郎の弟子。
与えられた情報はそれだけ。
顔写真などは渡されていない為、どんな姿をしているかもわからない。
勿論こちらも刀剣に名前を知られてはいけないというルールにのっとって下の名前だけを相手には伝えてある。
お互いに写真は出さないまま。
わざわざ偽名を考えるのも面倒で、フルネームでなければ大丈夫だろうと思いそうしたけど、担当者は苦い顔をしていた。

「君のことを名前で呼べるんだね」

はにかむように呟いた伊達男はその顔だけで何人の女性を落とせるのだろう。

「嬉しいの?」
「だって今までは主としか呼べなかったから。それに今回は僕だけが許されたことでしょう?」

光忠の言い方は少し大袈裟な気もするけど、確かにそうかもしれない。
預かっている子供設定の貞宗からは姉ちゃん。
養子設定の小夜からは母さんと呼ばれる。
唯一私を名前呼ぶ関係なのは夫役の光忠のみ。

「そうだね、光忠さん」
「ふふっ、その呼び方も魅力的だけど、僕はやっぱりいつもの方が好きだな」
「分かったよ、光忠」

刀剣は基本的には自分を呼び起こした主を慕うと聞く。
私が彼の心を呼び起こしたわけではないのに、こうして慕ってもらえるのはとてもありがたい事でもあるけど、こんなに彼と話をしたのは久しぶりかもしれない。

「なんだか急に近くなったね」
「君に引き取られた時のことを思い出すね」
「あの時はよく話をしたからね」
「本丸に馴染むにつれて君と話す機会が減ったこと、少しだけ寂しく思っていたから今回の任務に選んでもらえた時とても嬉しかったんだ」

ありがとう。囁く声はいつか聞いたものと同じだった。

「私こそ、ありがとう。君が来てくれて私も、本丸のみんなもとても助けられているよ」

だから私はいつかと同じように答えるのだ。
君の居場所はここにあるのだと伝えるように。

ーーーーーーーーーーーー
光忠は堕ちかけで政府の役人によって降谷妹の元へ持ち込まれたとかそんな設定。
刀の状態で持ち込まれた。
行くあてもなく、このままでは刀壊処分されると聞いて手を伸ばしたのが降谷妹。
「君が嫌でなければ、まだ折れたくないのなら、うちに来てくれないかな。折角出会えたのならこれも縁だと思うんだ。だから、もし嫌でないのなら、まずは私と話をしよう」
まずはお友達から的なノリだった。
光忠はその優しいけど少し寂しそうな声に興味をもったのが始まりとかそんなん。
毎日ゆっくり時間をかけて二人で話をしながら打ち解けて、それからほかの刀剣とも徐々に打ち解け今では厨房を仕切る一人になりました的な。

ーーーーーーーーーー


嘘だと思った。
待ち合わせ場所である喫茶ポアロ。
その店前を掃除する一人の青年に見覚えがあった。

「雫?」

ぴたりと止まる足。
嘘だ。
なんで、どうして。
何故あそこに降谷零が、私の兄がいるのだろう。

「ーーーーっ」

交わる視線。
ほんの一瞬、もしかしたら見間違いではないかと思うほど、その一瞬だけ兄の目が驚きに見開かれたように見えた。
そして別人の皮を貼り付けて、人好きのいい笑顔でこんにちはと声をかけられる。

「…こんにちは。実は知り合いとこちらで待ち合わせをしていまして…」
「そうなんですね。ごゆっくりどうぞ」

まるで赤の他人のように、ただの店員と客のようにドアを開けて立つ彼を横切る時、その顔を見ることができなかった。
彼はまだ掃除を続けるらしく、光忠が入るのを待ってからドアを閉めた。

「いらっしゃいませ!お一人様でしょうか?」

中に入り、声をかけてきた可愛らしい女性店員に頷けば、テーブル席かカウンターどちらがいいか聞かれカウンターを選んだ。

「安室透さんという店員さんに会いに来たんですが…」
「安室さんなら外で掃き掃除してた人ですよ」
「そうだったんですね。会うのは数年ぶりだったので、似てるとは思ったんですが声をかけにくかったもので」
「以前にもお会いしたことがあったんですね」
「ええ。以前彼に依頼をしたことがあったので」

安室透。
それが協力者の名前。
29歳の男性。
降谷零もまた同じ29歳。
忘れる筈がない。
ずっと後悔していた。
今にも泣きそうな顔で笑った兄を。
追うことのできなかった背中を。
まさか他人として再会することになるなんて。

「今回も依頼したいことがあったのでお伺いしました」
「じゃあ私呼んで来ますね!」
「いえ、急ぎではないので大丈夫です。それにゆっくりコーヒーも飲みたかったので」

かしこまりました。と笑顔で答える彼女はきっとこのお店の看板娘なのだろう。
テーブル席から彼女を眺めるサラリーマン数名が癒されたように見えた。
美女と美男が居るとなれば、さぞ混むのだろう。
となれば指定されたこの時間は比較的人が少ない時間。
学生は学校。
主婦は家事や食品の買い出し。
打ち合わせでサラリーマンが使うくらいの絶妙な時間帯かもしれない。
情報交換をする時はこの時間に来ればいい。

「梓さん、外回りの掃除終わりました」
「ありがとうございます。そうだ、こちらのお客様が安室さんに依頼があるそうですよ」
「僕にですか?」

白々しい。
内心そう思いながらも口にしないのは、表向きは探偵と依頼者の関係を作るため。

「以前にも依頼したことがあるんですが、今回もお願いしたいと思いまして…」
「ああ、もしかして雫さんですか?お会いするのが久しぶりだったので気付きませんでした。以前にも増してお綺麗になりましたね」

営業スマイル。
成る程、安室透とはこういう人格なのかもしれない。
きっとここに女性客が居たのなら、黄色い悲鳴をあげたに違いない。
幸い今はテーブル席のサラリーマンと私だけだから聞こえないけれど。

「実は私先日結婚しまして…その、こういうのは恥ずかしいんですが夫はとてもかっこよくて優しくて素敵な人だから、勘違いされてしまうこともあるんじゃないかと思いまして」

夫のことを愛しているが故に不安を抱える妻役はなかなか難しい。
そして今回はありきたりな浮気調査とは少しだけ異なる。

「つまり、勘違いをした女性に何かされるのではないか心配を?」
「ええ。彼、実は軽い女性恐怖症で…仕事ではそれなりに我慢しているんですが、やはりストレスは溜まるようなので…心配させまいと私には言わないのですが、もし彼の優しさを勘違いした女性が居たのなら私が直接お話をしようと思っています」

まとめると、妻である自分には心配かけまいと相談しない夫に対し、それならばと陰ながら守りたいと思い探偵に依頼した妻の図である。
…ややこしい。なんでこんな設定にしちゃったんだろう…

「私が表立って行動してしまうと彼が気にしてしまうので、相手の女性を見つけていただいて話す機会を作っていただけたら私がお話して諦めていただこうと思っています」

協力者と接触するために作り上げた完全なるでっちあげの依頼だが、光忠に女性恐怖症の気があるのは事実だ。
そして実際に起こり得そうで怖いのもまた事実。
それだけはどうかないままいて欲しいと願うことしかできない。

「分かりました、引き受けましょう」

決まっていた流れを作るために協力者は頷いた。
降谷零の影はどこにもない。

「いらっしゃいませ」

そしてタイミングよく待ち合わせの時間に現れたのは光忠だ。
ここで私と彼の存在を協力者に知らせると共に、光忠は私の護衛も兼ねていた。
いくら時の政府からのつながりでできた協力者だとしても、信用できるとは限らないと思いそうしたけど、彼の時点でその心配はなかったのだ。

「雫、君もここに来ていたんだね」

出先で偶然妻に会えて喜ぶ夫を演じる光忠に、私も微笑み返す。

「光忠もここに来たんだね。引っ越してきたばかりなのに、二人で同じところに来るなんてなんだか運命みたいで素敵だね」
「ふふっ、そうだね。だから僕は君が愛おしくて仕方ないのかもしれない。必ず君と巡り会えるんだ」

いくら仲睦まじい夫婦だとしても、それは流石に重くないだろうか?
そんな事は言えるわけもなく、私の隣へ座る光忠にメニュー表を差し出した。

「ケーキは頼まないのかい?」
「お夕飯のことを考えたら食べきれなそうだったから」
「じゃあ半分こしよう。僕も甘いものが食べたかったんだ」
「子供たちにバレたら怒られちゃうよ?」
「僕と君の秘密したらバレないよ」

クスクスと笑い合う姿はどこからどう見ても仲のいい新婚夫婦だろう。

ーーーーーーーー
ここまで書いて協力者とかにしない方が面白いんじゃね?ということに気づく。
何も知らない兄に任務として来て偶然出会う妹。
お互いに兄妹と分かっていながら触れずに他人として接し合う。
兄は探偵兼アルバイトとして、妹は主婦として。
黒の組織に歴史修正主義者の刀?を使う人間が居て、光忠も潜入しはじめるとかでもいい。
行方不明になっていた妹が数年ぶりに現れたかと思えば人妻になっていた上に養子とはいえ子持ちって結構ショックじゃないかお兄ちゃん…大丈夫?メンタル平気?病みルート発生しそう。
ヤンデレ夫とヤンデレな兄に愛されたらそれは間違いなくバッドエンドですね!!
協力者だと情報行ってるから任務の為の仮の姿って知ってるけど、違う場合は普通にそう思っちゃうよね!
妹がいつのまにか人妻だからね!!
寝取りルートもバッドエンドです。

こっちにきて兄と再会したことで、兄と離れる事になった例の出来事を毎晩夢に見て泣く降谷妹と、それをしっている光忠。
なんかこう、唆されて?光忠と体の関係までできちゃって、それがきっかけで互いの記憶を夢で共有するようになったりとか。
もしくは元々引き取ってから少しして近い事があって、それから光忠は降谷妹の過去を夢で見て知っていたとかでもいい。
笑顔で降谷兄を挑発する光忠がいてもいいと思うんだ!!
捨てたのはそっちだ。とでも言いたげな顔で挑発してくれ。
お兄さんの前でわざとキスしたりする光忠でもいい。
なんか私が書くと性格悪めというか、真っ当なスパダリにはならなそう。
若干ヤンデレ気味の光忠でお送りしたい。

以下協力者じゃないパターン

ーーーーーーーー

「雫、大丈夫かい?」
「大丈夫。久しぶりに歩き回ったから少し疲れただけだよ」
「ただでさえ寝れてないんだから、無理はいけないよ」
「光忠は心配性だなぁ」

心配するように頬を撫でる男に困ったように笑いながら手を重ねるのは、見間違う筈がない。
俺の妹だ。

「少し休んだらまた色々見に行こうか」
「君のお願いは全て叶えてあげたいけど、今日は駄目。もうお家に帰ってゆっくり過ごそう」
「えぇ、折角のデートだったのになぁ」
「お家デートもいいでしょ?子供たちが帰ってくるまでは二人きりだし、ね?」
「こら、外でそういうの禁止」
「じゃあ家ならいいんだね」
「そういう話じゃありません!」

そう言って幸せそう笑い合う夫婦の姿は周りからしたら仲睦まじい新婚夫婦のようにみえるのだろう。
10年近く会うことのなかった妹の幸せそうな顔がそこにあった。
そしてその隣には俺ではない男。
兄として妹の幸せを素直に喜ぶことができないのは、その男が組織に属している人間だからか、それとも未だに未練を引きずっているせいか。
綺麗になったと思う。
記憶の中よりも大人びた顔。
最後に聞いた声よりも少しだけ大人びた声。

「さあ、コーヒーも飲み終わった事だしお家に帰ろうか」

そう言って雫の頬にキスをする男。
この男が犯罪組織の一員であることを妹は知っているのだろうか。
命の危険さえもあり得るというのに、妹はくすくすと幸せそうに笑っている。

「外でそういうの禁止」
「家ならいいの?」
「そういう話じゃありません」
「そっか、僕はいつだって君にキスをしたいし抱きしめたいし触れたいと思っているけど、君が嫌と言うのなら無理にはしないよ」
「…その言い方ずるい」
「そうかな?」
「そうだよ」

じゃあ帰ろうかと彼女に声をかけて立ち上がった男は、一瞬挑発的な視線を俺に投げかけて笑った。

「お会計お願いします」
「はい、ただいま」

営業スマイルを貼り付ければ、そこにあるのは互いに笑顔を浮かべながら腹を探る男二人の姿。

「ごちそうさまでした」

去り際、小さな会釈と共に投げかけられた声が耳から離れない。
最後に会った時よりも少しだけ大人びたそれに月日の流れを感じた。
女の子と大人の女性の間に居た妹は、もう大人の女性へと成長していたのだ。
兄さん。と甘えるように俺を呼ぶ声はもう二度と聞くことはできないのだろう。
それは全て自分のせいだというのに、どこかで寂しく感じるのは未練がましい男の証拠だろうか。


ーーーー
腹の中が分からないので光忠のことはやっぱり警戒している降谷兄。
挑発的な視線やっちゃったのは多分寝てる時に記憶共有して夢で降谷妹の過去を知っているから。
降谷妹も夢で光忠が過去に受けたことを見ているし、それを互いに知っている。
きっと彼、彼女は自分のことを知っているのだろう。っていう感覚。
互いにその話をしたことはない。
降谷妹は審神者になると同時に戸籍ごと時の政府に消されていたとかでもいい。
今回の任務で一時的に戸籍が戻されたが、現在は長船姓。夫婦だからね!!!しょうがないよね!!
調べ入れてがっかりするお兄ちゃんがいそう。


ーーーーーーーー

「こんにちは、最近よくお見かけしますね。お気に入りのメニューがあるんですか?」

女性客から黄色い悲鳴をあげられるのは慣れっこの様子のこの男の名前は安室透。
にこりと笑いかけられる度に、いつか彼の過激派のファンに刺されるのではと思うようになった。
降谷零の中身だけを入れ替えたような男。

「とりあえず全メニュー制覇、ですかね」

上は有名な探偵事務所。
下にはその弟子。
今回の任務を遂行するにあたって情報収集の一つになると思ったけど、まさかその弟子が偽名を名乗る兄とは誰が思おうか。
普段は迎えが来ることを知っているのでテーブル席なのに、珍しく今回はカウンター席へと案内された。

「ではまずはいつものコーヒーをお持ちしますね」
「お願いします」

元々鋭いタイプの兄には私が何か探りに来ていることはお見通しなのかもしれない。
とある組織に潜入している光忠によると、兄も同じ組織に入っているらしい。
別段仲がいいわけではないと光忠も言っていたし、ここで働いているのを知らなかったのも無理もない。
兄は恐らく白。
上手く協力関係を築ければ当初の予定通り情報を得ることはできただろうけど、光忠はなんとなく馬が合わないと肩をすくめていたから難しいだろう。
どうすれば円滑に情報を入手できるんだろう…互いの真実を伝えずに他人として振る舞う私たちを幼馴染が見たらどう思うのだろうか。

「何か悩み事でも?」

コーヒーを運んできた彼はそうやって人から情報を得ているのかもしれない。
善意を滲ませた問いかけ。
こんなイケメンに気にかけられれば大抵の女性はそれに答えるのだろう。

「最近刃物を持った不審者の目撃情報をよく耳にするので、子供たちが心配で…」
「ああ、あの突然消えると噂の…」
「まだ被害者は出てないそうですが、もし万が一のことがあったらと思うと心配で」

子供たちを心配する母親としてはこんなものだろう。

「確かコナンくんと同じ小学校でしたよね」
「はい。小夜はコナンくんたちとお友達になれたようで、少年探偵団に入ったと喜んでました」

小夜と貞宗は二度とここに来たことがある為、彼も二人の事は知っている。
恐らく探り屋バーボンとも言われる彼には色々と調べられているかもしれないけど。
さて、どうしたものか。
腹の探り合いだなんてものは大の苦手な私に彼を欺けるかと言われれば答えは勿論ノーである。
正直全てを吐き出して協力してもらいたいのが本音だけど、偽名を使ってまであの組織にいるという事は私たちとは別の目的があるのだろう。
…それに巻き込めるかと聞かれればそれもノーだ。

「安室さんは不審者について何かご存知ありませんか?探偵でもある貴方は色々知っていると聞いたことがあったので」

私の言葉に少しだけ考えるようなそぶりを見せたがあれは絶対にただのポーズだ。
白々しい。
こちらの様子をああやってうかがっているのだろう。
どうせ答えは決まっている。

「この後お時間ありますか?」

仮にも人妻を誘うその言葉に頷けば、じゃあ僕もうそろそろあがりなのでもう少しだけ待っててください。とウインクまでしてくれたイケメン店員にそろそろ本気で夜道気をつけた方がいいかもしれないと思うくらいにはやらかしてくれた。
幸い女性客も少なかったのでまだ生きていられるだろうけど、これを普段から人妻にも構わずやっていたらちょっと引く。
我が兄ながら引く…というか兄だからこそ引く。

ーーーーーーーー
そのままRXの助手席乗って場所を移動する降谷兄妹。
他人ごっこが続く車内。
そしてある意味死亡フラグ立ててしまった降谷妹はその後安室透ではなく降谷零に逃がさないとばかりに問い詰められる予定。

ーーーーーー

「…流石にこれはちょっと…ない」

連れてこられた場所に思わず素が出てしまった。
いやだって、他の喫茶店かどこか行くと思うじゃん?ここラブホじゃね?私の兄は正気か。
仮にも人妻を連れ込むイケメン店員安室透どうした。
予想外過ぎて作り上げたいつもの調子が崩されていく。

「人に聞かれるには少し話し辛い内容だったので…駄目ですか?」

駄目ですね何言ってんだこの男。
もう何考えてるか完全に分からない。あたま大丈夫?仕事のしすぎで壊れちゃったのだろうか。
探偵の助手にアルバイターに組織のお仕事ってもうそれだけで大変じゃん…ダブルじゃなくてトリプルってそれどんな生活?社畜なの?兄さんは社畜なの?
…私も大概人のことは言えないか。

「…でも光忠が」

怒る。絶対怒る。笑いながら怒るに決まっている。
主は僕が旦那さんなのに他の男とホテルに行ったんだね。って言われる。
もしくは悲しそうな顔で言われる。
情報収集の為だとか仮の設定だとか光忠にはきっと関係ない。

「そんなに旦那さんのことを愛しているんですか?」
「何して…っ」

引き寄せられる体。
腰に回された手。
耳元で囁くように問う声。
…大変手慣れてますね!

「僕には本当に愛しているようには見えませんでしたが」
「…それ、光忠に言ったら怒るから」

襟首掴んで言い返せば、案の定けろりとした顔をしていた。
イケメンじゃなかったら殴ってた。絶対に。
己の遺伝子に感謝しろ降谷零。

「貴女に与えられた選択肢は二つ。僕と一緒に来て情報を得るか、旦那さんを口実に情報みすみす逃して帰るか…さあ、どうします?」

兄さんは性格が悪い。
こういう意地の悪いことをすることが昔から何度かあった。
その度に私は兄さんに主導権を握られてしまうのだ。
勿論今回も例外なく。

「それじゃあ行きましょうか」

私のこしに手を添えたままホテルの入り口をくぐる男はわかっているのだろうか。
もしこれを貴方のファンの女子高生が見ていたなら、私は画像と共にネット上で晒しあげられることになることを。
大炎上まったなしである。
そんなことになれば米花町を歩けなくなるので勘弁してほしい。

「大丈夫ですよ、知り合いに見られるヘマはしませんから」

やっぱり手慣れていた。

ーーーーーーーー
この兄大丈夫だろうか。と不安になりつつ大丈夫じゃないのは貴女です。な状態に気づいていない降谷妹。

ーーーーーー

ドアが閉まる音になんとも言えない罪悪感が芽生えた。
仮とは言え一応人妻の身であるにもかかわらず、別の男とホテルの一室にいるというのはなんとも不思議な気分である。
やましいことはなくてもシチュエーション的には完全にアウトだ。

「で、いつの間にお前は結婚していたんだ?」

光忠が怒る姿は予想していたけど、兄が怒る姿は予想していなかった。
気づけばベッドへ仰向けに押し倒され、逃げ場を失った私はまるであの日のようだ。
去っていく兄を追えなかった時を思いしたせいか、咄嗟に縋るように腕を掴んでしまった。

「…世ではこの状態を不倫、浮気なんていうの分かってるのか?」
「連れ込んだくせに」

売り言葉に買い言葉。
口を塞ぎたくとも私の両手は兄の腕をから離すことはできなかった。
なんて未練がましいのだろう。
兄さんが去っていったのは私のせいなのに。

「…戸籍ごと消えていた」
「…うん」
「お前と俺の唯一の繋がりが消えていた」
「……うん」
「…ずっと不安だった。行方どころか生死すら分からなくて…よかった」

生きていた。
私の存在を確かめるように抱きしめて、肩口で呟かれた言葉に泣きそうになった。
私にはそんな権利は存在しないのに。

「お前に会わせる顔がなくなったのも自分のせいなのに、ずっとお前のことが心配だった。全部俺が悪いのに、それでもお前のことは忘れられなかった」
「ちがっ、兄さんは悪くなくて、会えなかったのは追えなかった私のせい。逃げたのも私が弱いせい。だから兄さんは悪くないよ」

10年近くあってなかったのに、また兄妹として顔を合わせた途端私は妹に戻るのだ。
兄さん、兄さん、ごめんなさい。という権利すらない言葉を甘えて吐き出してしまう。
こうして顔を合わせて言葉を交わして仕舞えば、離れられなくなってしまう。
行かないで、まって、置いて行かないで。
あの時の気持ちが蘇る。

「ちゃんと捕まえておけばよかった。逃げたのは俺だよ。自分の気持ちを押し付けて、全部お前に投げつけて逃げたんだ」
「ちがう、ちがうよ。受け止めきれなかった私が悪かったの。大好きなのに、好きなのに兄さんの好きが分からなくて苦しめた。ごめんなさい」

お前の好きと俺の好きは違うと言ってキスをして出て行った兄さんに、私は応えることができなかったんだ。

「ずっと考えた。何が違うのか。でもやっぱり今でもわからなくて、だから私は兄さんに会わせる顔なんてないのに…っ」

やだ、いかないで、おいてかないで。
未練がましく縋る私は、どう見えるのだろう。

「でもお前にもそう思える相手ができたんだろう?」

きっとそれは光忠のことだろう。
本当のことを言ってしまいたいのに言えない。
だってまだ任務は終わってはいない。
私はこの任務のために一時的に戻してもらっただけなのだから。

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というネタを考えていましたが色々と迷子になりました!!
普通にスパダリな光忠が書けるようになりたい!

星屑{emj_ip_0829}fgoで以蔵さん召還ネタも絶対書こうと思っているのに中々進まないのは降谷兄オチはどんなネタでも確定だからか…
そして別作品のキャラと関わるのはほぼ降谷兄と別れてからなので、兄の知らない10年近い日々を別作品キャラは知っているというのが私の中で鉄板ネタになってます。
降谷兄以外とのルートを考えても、どうしても降谷兄オチになる不思議。
コナンの世界で自分という存在が確立したのは、降谷零が居たから。という根本があるので妹にとって兄は切っても切り離せない存在です。

2019/01/21(22:13)


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※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません
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