年上


付き合うならやっぱり年上。甲斐性と教養のある、誠実で紳士的な男性じゃないと。タメや年下は、下品でこどもっぽくて、その上ダサいしつまらないからだめ。
私の十分の一ちょっとの年齢の子がご機嫌ななめにつらつら語るのを、私はゲームもせずに「そうだね」なんて真摯に向き合って聞いてやっていた。今日は合コンだと聞いていたが、しかし二十一時にもならないうちからこんなウサギ小屋事務所でこんな管を巻いているということは、つまりそういうことなんだろう。収穫なし。そりゃそうだろうなと思う。だって甲斐性と教養があり誠実で紳士な男性。それはまさしくこの私を指す。歴史でも類例に乏しいほどの完璧な存在が、そう易々と他にも見つかるはずがないのだ。そんな当然なことも分からないとは、まったくこの子ったら本当に。やれやれという呆れを笑顔で隠し――私は大人なため、そういった配慮もできる――、重々しく口を開く。「きみの求める“私のように”大人な男性は、そうそう現れないだろうね」この世の真理ともいえる真実を告げた私に、彼女は目を丸くした。うむ。完璧な存在直々のありがたい助言だ。感涙に咽び、そして疾く気が付いて飛び付くがいい。差し伸べられたこの幸福に。「えっうそ、ドラルクさんってば、自分のこと大人だとか思ってたんだ!」どうしてやろうかな、このガキ。


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