断髪


 髪を切った。切ったというか、整えたというか。とにかくほんの毛先を揃える程度だった。誰にも気付かれないだろうなと思ったし、気付かれることを期待なんてしていなかった。むしろこんな些細なイメチェンに反応されてもちょっと困る。どんだけ私の事見てんねーん笑、ってなっちゃう。
「む、髪を切ったのか」
「……う、うわぁ」
「なんだその反応は」
 顔を合わせるなりそう言ってきた半田に、思わず頬を引き攣らせてしまった。が、すぐに納得する。いやまあコイツはそうか。気分を害したように顔を顰める半田へ軽く謝罪する。
「よく分かったね。私、ロナルドさんじゃないんだけど」
「お前がロナルドじゃないことくらい知ってるが……?」
 訝しげな半田へ曖昧に笑っておく。ストーカーの観察眼やべ〜(笑)内心でドン引きしていれば、不意に半田が相好を崩した。驚く程緩いその顔に言葉をなくして瞠目する。
「お前の変化くらい、気付けて当然だ」
 半田のことだから、尤もらしい言い分で押し通されると思ったのに、なに、それ。なにがどう当然なの。
 聞きたいことは色々あったのに、一心に注がれる蕩けた蜂蜜色の瞳に、何も言えなくなってしまった。
 

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