真相
『それでだな、この前、あの子が……オイ、ちゃんと聞いているのか‼ なんだその間抜け面は! この俺が有難くも語ってやっているのだからもっと平服して傾聴―なに? あの子がお母さんにそっくり、だと……? ハ‼ バカめ、このど阿呆の大バカルドめ‼ そんなんだから貴様は一生独り身なのだ! ぜんっぜん違うだろうが! どこを見ているんだこの節穴視力ゼロもっとよく見ろいや見るな。二度と見るな、お母さんもあの子も金輪際その視界に入れるな、減る。……まあ、目鼻立ちは、僅かに通じるところがあるやもしれん……。だが‼ 言うまでもなく、俺はあの子をあの子として好きだ。心より愛しているし、生涯の伴侶として一生を捧げる覚悟だって出来ている。不安なんて抱かせないし、必ず幸せにすると心に誓っているのだ。……クソ、なぜこんなことをわざわざお前らなんかに。まだ彼女にも伝えていないというのに―なんだアホルド、そのいやにニヤついた小癪な顔は。おいカメ谷、なんだその携帯は! オイ‼』
お酒で赤らんだ顔の桃君がこちらへ手を伸ばし、画面がブレて映像が止まる。終わった動画に、携帯を下ろし、身を縮こめて正座している彼を困惑して見つめた。
「そ、そういうこと、なん、だが」
「そういうって……」
おどおどとした、いつになく気弱な声だった。金色の瞳は、私と床を交互に忙しなく行き来していた。
「おか、母と似ていると感じさせてしまったのは……その、謝る。すまない。でも俺自身は本当に重ねていたわけではなくて……」
謝罪の内容は彼が謝ったって仕様がないことだった。今回の件は私が勝手に勘違いして、卑屈になって、大騒ぎしていただけだ。彼は何も悪くない。
「だ、だから、わ、別れるなんて言わないでくれ、頼む」
それなのに、桃君は口を震わせて、そんなことを懇願していて。そんなことしなくて、いや、する必要ないのに。むしろ、彼が紡いだ言葉は全部私が口にするべきものだ。
色んな感情が押し寄せてきて、もうどの感情から片付けていいか分からない。込み上げる嗚咽を飲み込むため、唇をきつく噛む。謝罪か、復縁を頼むのが先か。はたしてどちらがいいのだろう。こんなに震えている彼へごめんだなんていったら、また妙な誤解が生まれてしまいそうだ。
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