心中予告


 ロナルドさんの前世はラクダなのかもしれない。
 などと考えながら隣を歩く彼をこっそり見ていたら目が合った。なぜか絶望しきった顔だったのでギョッとしたが蚊の鳴くような声で「なんでもありません……」と言われたので、心配だったけどそれ以上の追及はやめた。深入りされたくないのかもしれない。さて。それよりラクダだ。だって見てほしいこの睫毛。なにこの毛量。どうしてそんなカールしてるの? マツエク行ってる? どこの? 是非紹介してほしい。私もポッキー十本乗せれる睫毛になりたい。まばたきの風圧で隕石うち返せそう。もし中生代に生まれてたら恐竜絶滅も防げたかもしれない。今頃ステゴサウルスがシンヨコの街を闊歩していた可能性があるのだ。すごい、歴史が変わる。ロナルドさんの睫毛は国で保護するべきだ。また目が合った。相変わらず泣きそうな表情だったが、先程とは違い、その顔は真っ赤に茹で上がっていた。「なんでもないでし……」そういう彼の瞳はとてもうるうるしていて、水が張っているせいか普段の三割増で大きく見えた。え〜おめめ溶けちゃいそう……かわい……「ワ……」ロナルドさんが突然なぜか鳴いた。なにそれ、ちいかわの真似ですか? かわいい、でも本家よりかわいくしてどうするんですか? だめだ、本家から訴えられる前に保護しなきゃ……ああ、ほんとかわいい、ロナルドさん、かっこいい、かわいい、好
「あの!!!!!」
「はい?」
「いや、ア、え、ぅ、あ……」
 叫んだと思ったらまた黙り込んでしまった。さっきから様子がおかしい、さすがに変だ。いや、わりといつも変だけど。「ヒャウボエア」ほらまた奇声あげてる。でも今日は輪をかけておかしい、もしかしたら体調が悪いのかもしれない。それなのに送りますなんて申し出てくれたんだ。やさしいな、ロナルドさん。好
「わははーっ! 余は吸血鬼サトリーヌ! 実はついさっき胸の内に秘めた恥ずかしい本音を周囲にダダ漏れにしてしまう恐ろしい波動を貴様にかけ「あああああああ!!!!!」ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!」
 突然現れた不審者をロナルドさんがワンパンで倒した。わんぱーんち。最近全然銃使わないな。ていうかあれ、さっきあの人なんて言ってたっけ。たしか、胸の内に秘めた恥ずかしい本音を――あっ死のう。
「ちょちょちょ待ってくださいおちついて!」
「止めないでください」
「いやですよ! だ、だってあの……あの、おれ、も、す、ス酢すsuスすす」
 ……ロナルドさんが言い終わるまでは死ななくてもいいかもしれない。

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