貴女の運命になりたいの


「それくらい、私にだってできるけど」
 ロナルド様がいかに素晴らしいか、そしてそんな彼との運命的な出逢いを滔々と語り尽くし、さあどうだとなぜか勝ち誇った顔をしていたサンズは、抑揚のない私の言葉にぽかんと口を開いた。星が宿るルビーの瞳が細かく瞬く。宇宙を背負って何言ってんだコイツの顔をしている彼女に、自然と口が尖った。
「私だってきみのピンチに颯爽と現れて敵を塵も残さずぶちのめすくらい、簡単にできるんですけど」
 サンズがこの世のどこにいたって、なんならこの世にいなくたって。風が吹くより、雨粒が地面で弾けるより早く。なによりロナルド様なんかよりずっとずっと早く、彼女の元へ駆けつけることができる。だってそういう呪いをかけてるから。まあこれは内緒なんだけど。
「とにかく、私だって――」
「……はっはーん、分かりましたよ! さてはお前、嫉妬してますね?」
「は?!」
 図星をつかれた焦りでつい声を荒らげてしまう。た、たしかに今のは結構あけすけだったと自分でも思う。でも、でもこのニブチン鈍感猫娘がまさかそれに気付くなんて! え、バレた? ふ、ふられる? まだまたじっくり時間をかけて攻略するつもりだったのに! もうちょい外堀とか埋めて……え、どうしよう、記憶消すべき? 蒼褪める顔の下で目まぐるしく頭を回す私に、サンズはニマニマと八重歯を見せて笑った。
「お前、サンズちゃんがロナルド様に助けていただいたのが、そーんなに羨ましいんですね!」
「は」
「女の嫉妬は見苦しいですよぉ」
 的外れなことを大層嬉しそうに、そしてご機嫌に宣うサンズに、自身の顔から感情がごっそり抜け落ちていくのを感じる。あ、そう。いや、そうだよね。気が付くわけないか。あー、そう! 
「……そうだよ、嫉妬してる」
 プツンと、自分の中でなにかが切れる音がした。もういいや。
「おや、やけに素直に――」
「タイミング良く助けただけでそこまで想ってもらえるあの男が死ぬほど妬ましいよ」
「は?! 別に助けてもらったからってだけじゃないですし、大体あの男ってお前はなんて失礼な……、……ていうか、その言い方……?」
 ムッとしていた表情が、やや戸惑ったようなものへと変わる。私は本気だというのが伝わるように、視線を逸らさず真っ直ぐ視線を送った。
「サンズに惚れられてるロナルドサマに、嫉妬してるよ」
 そうして数秒見つめ合っていれば、サンズの円く白い頬が、パッと瞳と同じ鮮やかな桃色に染まり上がった。
「……へ」
「は、な、なに、なにおまっ……?!」
 わなわなと唇が震え、耳のような髪が猫のようにピンと逆立った。目尻が切れそうなほど熱でグラつく目を大きく見開く彼女に、私もつられて瞠目する。なにその反応、え、なんか……。
「……え、まじで?」
「は、はあ?! まじってなに、あっ、さ、さてはからかいやがりましたね?!」
「いや、本気だけどさ……」
「フニャッ?!」
 甲高く鳴いてまたさらに朱を深めたサンズは、ピャッと高く飛び跳ねた。知らない間に、外どころか内堀もしっかり埋まっていたみたいだ。どうやら、私もこの子のことを言えないくらい鈍感だったらしい。
 

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