うしろの正面
「――いつか。いつかはさ」
疎らに落ちてくる灰色の雪は、まるで埃のようだった。そんな汚い雪の合間を塗って、細く震えた声が届けられる。
「おれとお前、緑谷と爆豪みてぇになれるんじゃないかって、思ってたんだよ」
実はいつの間にかマスクを外していた。卵のように大きな瞳には、水膜がたっぷりと張られている。あはは、泣き虫。ガキンチョみたい! 思わず噴き出すと、「なに笑ってんだよ」と潤んだ瞳のまま凄まれる。なんの迫力もない。
「緑谷と爆豪? つまり仲良し幼馴染に――ってこと?」
あの二人が仲直りしたらしいということは、風の噂できいた。元クラスメイトだが、あんまり興味はない。もちろん緑谷にかんしては先生がご執心だから、相対したら仕事はするけれど。
「なあ!」
思考に耽っていたけれど、涙でざらついた声に叫びかけられ、私は肩を竦めた。ああうるさい、図体は小さいくせに声と態度だけはでかいんだから。
「お前と私が仲良し幼馴染になるなんて、そんなのむりに決まってるじゃん。だってもう、私はヴィランでお前だけがヒーローなんだもん」
お前はずっと泣き虫で、ゲスで生意気で、昔から何も変わらない。
そう、結局別に、最初からなんにも変わっていなかったのだ。実は最初からヒーローだったし、私は最初からヒーローではなかった。それだけの話だった。
「まだ戻れる! まだ――!」
「ばかだね。本当におばかだね、お前」
必死な声を遮って笑い飛ばして、個性を使うために手を構えた。先生からもらった実を殺すための個性が、掌で弾けんばかりの熱を帯びる。
「私たちは、むりなんだって」
戻れるはずがあるもんか。
だって私はもう、お前のいる場所になんて帰りたくもないのだから。
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