二世も三世も添おうと言わぬ
【胡蝶しのぶが大好きなトラ転男主】
※原作沿い落ち
トラックが原因で死んで転生するのがトラ転っていうなら鬼が原因で転生するのはなんだ? 鬼転? 技名みたいだな、なんか。
なんて馬鹿みたいな考えが、二度目の人生最後の思考になるはずだった。
のだが。
「怪我はないか、少年」
「アッ?! えっちょ、待って!」
「どこか痛むのか?」
「……杉〇か!!」
「?」
しまった、つい。慌てて口を押える。呼び捨てなんて無礼千万、さんをつけろよデコ助野郎。じゃなくて。おま岩柱さんおまCVその人だったんですか? マ?? あっ、そぉ……ふーん……綺麗な方の中の人だったからすぐ名前でてこなかったわ。実は社会の限界歯車してたからアニメは録画だけして一度も見れてなかったのよね。社会人は辛いね。
口を手で塞いだまま固まる俺に、綺麗な杉…さんボイスの悲鳴嶼さんはコテンと無言で首を傾げた。嘘だろ……こんな筋肉隆々なのにそんなあざとい仕草似合うなんてことある……? プリキュアじゃんそんなの……。
キュアロックは地面に膝をついて俺に視線を合わせる。そしてゆっくりと俺の頭に触れた。で、でけぇ。俺の頭、他の子に比べて大きめだと思うんだけど、なんとそれが彼の手のひらジャストフィットどころか余裕で余ってる。全然力籠ってないけど怖い。完全に"命"を握られている。中の人とはいえ呼び捨てそんなに気に食わなかった? すみませんもう二度としませんから握り潰すのだけは勘弁してください、俺の頭蓋はりんごじゃないです。
そんな祈りが通じたのかやっと手が離れホッと息をついた。……のもつかの間次は肩、その次は腹と身体の至る所に手が伸びてくる。そこでようやっと怪我の有無を確認されていることに気付いた。やだ優しい……トゥンク……変な邪推してごめんねキュアロック。
全身くまなく調べ終わると、彼は「……大丈夫そうだな」と口許を小さく緩める。それに対して俺は『最初から触診してくれてるって気付いてましたよ』面をして頷いた。あ、見えてないんだった。
「名は?」
この声のトーンで言われると乙女ゲのチュートリアルみたいな感じする。『名前を入力しよう!』みたいな指示がされたウィンドウが浮いてそう。そんなことを考えながら口を開く。
「……半、……半兵衛!」
「そうか……」
ぶっちゃけ俺に名前はない。村にいるときは『丁』だなんて呼ばれてたけどさすがにこれを名乗るわけにもいかないだろう。丁ってあれね、『召使い』とかそういう意味合いのあれ。鬼の灯の冷徹さんのあれと同じやつ。いや今時そんなん使うか? って思うよね。俺も思った。生まれたときはギリ明治時代だったとはいえ文明開化はとっくのとうにしてんのにまだそんな呼び方しちゃうの?? ってなるよね。いやまじでそれは俺も思ったわ。散切り頭の叩き方が甘かったのかな、俺の地元。もっとドラムする勢いで叩き狂わなきゃダメだったのかな。
ともかく、だ。唯一の呼び名が『丁』だなんてカミングアウトされたら大抵の人間はドン引きするであろうということは容易に想像がつく。……いやどうかな、大抵の人逆に知らないか? まぁとにかくしかし、俺は巷によくいる鈍感主人公ではない。だから少し和んだ空気をぶち壊しにするようなことはしない。どんな些細な可能性も見逃さないのだ。
というわけなので賭け事の壺振りから拝借させてもらった。『どちらさんも、よござんすね?! 丁か半か!』ってやつ。半だけじゃなんか語感悪いしそれっぽくアレンジ。やば、天才か? あまりにも機転が利きすぎてる、天才だわ。
「では半兵衛。私が君を家まで送って行こう」
「えっ」
「……どうした?」
家は困る。だってないもの。
いやふざけてる場合でなく。自分の才能に酔いしれてる場合でもなかった。名前『丁』もドン引きされること山の如しだけど家なき子COだって負けず劣らず谷の如しだ。
「か、帰れない……」
「なに?」
「えと、アッ分かった俺をおじお兄さんの弟子にして!」
「家まで送ろう」
ここで俺はティン! と閃いていた。このまま鬼殺隊に入隊すれば我が最推しである胡蝶しのぶちゃんと出会えちゃったりするんじゃないか──?! と。なにを隠そう、俺は胡蝶しのぶちゃんにぞっこんでメロメロメロウだった。棺桶には彼女のもみあげを敷き詰めてほしいくらい好きだ。
つまり鬼殺隊に入れば俺はしのぶちゃんに会えるし衣食住を確保できるし脱召使いできるし鬼殺隊は戦力増やせるしお互いいいことしかなくない? 若干俺のメリットの比率が多い気がするけど。でもバタフライエフェクトでいずれは温暖化も解消されるに違いない。そしたら利益率はトントンだねわあい。
「てわけでお願いだよおじっお兄ちゃん! さん? なんて呼んだらいい? ですか? あっ師匠?!」
「家まで送ろう」
「無限ループって怖くね?」
そういえばこの人子供苦手なんだっけ?? ごめんごめんうっかりしてた。まあ申し訳ないなと思いながらも引く気はない。そうして赤子も夜泣きをやめるくらいの勢いで駄々を捏ねて捏ねて捏ねくり回し、最終的に岩柱さんに引き取ってもらうことが決定した。子供嫌いに拍車をかけてたら、それは……シンプルにごめんな。俺が世界一のクソガキなだけだからどうかいつかは克服してくれ。
口からでまかせた『弟子にして』という言葉は額縁通りに受け取って貰えたらしく、見事俺は作中最強の男の弟子になった。あと鬼殺隊に入隊してしばらくしてから、『丁』は『ひのと』とも読めると知り、っていうか思い出し、そっちのが断然かっこいいじゃんクソ半兵衛なんかにせずそっちにすればよかった……ってなりました。かしこ。
【それからなんやかんやあって胡蝶姉妹と会ってしのぶちゃんにフォーリンラヴしてなんやかんや原作通りに進んでなんやかんやで無限城で原作通りになります】
「胡蝶さんや〜」
「なあに〜?」
「妹さんを俺に下さい!」
「うふふ、ダメ〜!」
「ダメか〜〜〜」
「きも……」
「おっしのぶちゃん嫉妬?!」
「そんな訳ないでしょ!!」
「燃やす」
「お、落ち着いてしのぶ」
「なんなのこのふざけた隊服は。信じられない」
「でも絶対似合うと思、」
「あなたは黙ってて下さい」
「まあ確かにちょっと寒そうよねぇ」
「それ以前の問題よ!」
「大丈夫、しのぶちゃんが寒いときはいつでも駆けつけて抱き締めてあげるから!!」
「だからアンタは黙っててって言ったでしょう!」
「前田という隠の方から謝罪文が届きました。まあ謝罪は全く本意ではないということがありありと伝わってくる文面でしたが」
「あらま〜据えたりなかったかな、お灸。っしゃ、四半刻以内には心の底からの謝罪文が届くから待ってて」
「呆れた、やっぱりあなたの仕業だったんですね」
「だってあんな服用意するとかマジ万死ぢゃねって俺の内なるギャルが囁いたんだもん……あとしのぶちゃんも嫌がってたしお節介してもいいかなって……」
「そりゃああんな隊服嬉しいわけないですけど……でも姉さんに用意されたときはこんなことしなかったのに」
「しのぶちゃんとカナエちゃんは違うじゃん?」
「……どうせ私には姉さんみたいに上背がないし似合わないわよ」
「え?……えええいやちがうそまじかえっいやちがうよ似合うよ、似合うけど! でも俺が個人的に着て欲しくないだけなのごめんね!」
「よく分からないんですけど。似合うと思うなら普通着て欲しいと思うものなんじゃないですか?」
「う、や……だってカナエちゃんは大事な仲間だけどきみは仲間以前にもっと特別で大好きな子なので……あの、あの……できれば他の有象無象なんかにあんまり肌見せないでっていうのが本音というかぁ……」
「は……はあ〜〜〜〜〜〜?」
「いやああいう服もめちゃくちゃ似合うのは分かってんよ! あとああいうのがしのぶちゃんの趣味というか好みとかならもう俺に止める権利なんてないんですけどね?! でもそうじゃないなら控えてほしいといいますか」
「好みなわけないです!」
「(……『似合う』ってことは一応想像はしたってことかしら)」
「(え? いやあのあれさっきのしのぶちゃん、完全に拗ね……え、脈……脈ア……? リ…………いやいやいやいやいやいやいやいや)」
【炭治郎と善逸と惚気たりもする】
「久方ぶりの機能訓練! やわらか女子との合法的な触れ合い……この瞬間だけは鬼兵隊しててよかったって思えるわ」
「だけってお前、善逸……」
「性欲の権化がいるってきいたので今回の訓練は俺が担当しまぁす。蝶屋敷ひいてはしのぶちゃんのSECOMこと俺ですよろしくね〜!」
「男はすっこんでくださいますこと?!?!! 全然お呼びじゃねえんだわぁ!!」
「え俺先輩なんだが」
「すみません、善逸、宇髄さんにもこんな調子で……」
「は? 柱相手に? やばこわきも」
「柱相手に求婚してるアンタに言われたくありませんけどォ?!?!」
「さすがしのぶちゃん俺の嫁、いやむしろ俺が嫁……? 胡蝶半兵衛……めちゃくちゃアリだな……」
「……ほんと、馬鹿なんじゃありませんか」
「照れてるしのぶちゃんほんとまじほんと」
「伸されてるくせになんでそんな蕩けきった音だせんの? くっそ腹立つゥ〜!」
「うそ、俺いまそんな音だしてる? そんな匂いしちゃってる?」
「とても幸せそうな匂いがします!」
「無意識だからタチ悪いんだよ……両耳から餡子流し込まれた気分だわ」
「両耳……うわえっつまりやっぱりそゆことですか?? そういうことなんですね?」
「善逸くん、あまり軽率なこと言うのやめてもらえませんか? この人すぐ調子に乗るので」
「す、すみません……」
「いやでもしのぶさんからもすごく嬉しそうな匂いが」
「炭治郎くん??」
「っはーーーー、しのぶちゃん、好きだあ!!!!!!!!!」
二世も三世も添おうと言わぬ この世で添えさえすればいい
【無限城編】
大丈夫大丈夫大丈夫間に合う、絶対間に合う! 炭治郎理論を採用するなら俺も長男なんだし! 長男の俺が間に合わないわけがない! まあ一人っ子だし兄弟いないから厳密に言うと違うけどなだっはっはっは! て、なんだこれ何言ってんだろうな俺。テンパってるから思考がハイになってんのか? いやそんなクソつまんねえ余計なこと考えてる余裕あんならもっと早く動けよ、俺の脚。そんくらい長男じゃなくたってできるだろ?
だって俺は胡蝶しのぶが、しのぶちゃんのことが大好きなんだから。筋肉が300dBの爆音で悲鳴をあげようたって走るなんて余裕なはずだ。
悪趣味な模様の襖を壊す勢いで横に滑らせ室内を視界にいれる。
血の匂い。浮世離れした幻想的な部屋の、至る所に飛び散った血。壊れた橋。蓮の花。そして、
「あれ、また増えた! ん〜でも俺、男には興味ないんだよねえ」
「あっ……!」
顔を真っ白にさせたカナヲちゃん。金髪の一見人畜無害に見える笑みを浮かべた男が持つ、見慣れた蝶の髪飾り。
俺はこの瞬間を知っている。この世に産まれるよりもずっと前からこの場面を知っていた。
知っていたはずなのに。
「……俺だってあるわけねえよ」
『さいてい』
思い出すのは、そんな恨み節だ。
大きな瞳に溢れんばかりの涙をためて、こちらを睨みあげる真っ赤な顔。
覚束無い手つきで釦を外そうとする彼女の細い指を掴めば、それだけで彼女は肩を跳ね上げさせて。ああほら、やっぱり怖くていやなんじゃないかと苦笑した。
彼女は長い睫毛を震わせ、俺を見上げる。射し込む西日に負けないくらい紅潮した頬に潤んだ瞳。ふっくらとした唇や、緩んだ襟元から覗く白い肌。耳にかかっていた黒髪がさらりと垂れるのさえ色っぽい。
目眩がするほど扇情的で美しく、愛おしさが込み上げて頭も体も爆発しそうだ。思わず唾を飲み込んでしまう。握り締めた拳の中で爪が皮膚を切ったことで僅かに冷静さを取り戻した。俺は全神経を使って彼女から顔を背け、畳に落ちた蝶の羽織りを拾って彼女を包んだ。
『え……?』
『だめだよ』
ぱちりと瞬きをしたしのぶちゃんへ、精一杯の理性を総動員し、何事も無かったふうを装って微笑む。
『自分を安売りしちゃだめだ、しのぶちゃん』
『…………は?』
少しの沈黙の末、地の底から響いてきたかのような低い声。刹那頬に走った鋭い痛み。
『さいてい』
『……しのぶちゃ──』
『最低です、あなたは』
彼女の瞳は今にも溶けてしまいそうなほど涙でいっぱいだった。けれど一滴も零すことはなく、ただただ俺を睨む。苛烈な怒りと哀しみをぶつけてくる彼女に、微笑みを返すことしか出来なかった。
据え膳食わぬは男の恥。
決戦前のヒリついた空気のせいか、自棄を起こして華を散らそうとしたしのぶちゃんを見て、俺は恥など幾らでもかこうと思った。恥なんて彼女のしあわせに比べたら安すぎるものだ。もうタダ。タダ以上。むしろ俺が払うから恥をかかせてほしい。
なんて思っていたのだ、ほんとうに、心の底から。
だってあの子が大好きで、大事だったから。
だけどこんなことになると分かっていたら──分かっていたら、抱けていたのだろうか?……やっぱり無理だったかもしれない。触れるのを躊躇うくらいには愛していた。
「……どう転んでも『さいてい』だな、俺は」
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ああ、もう。こいつの笑顔、ほんとウザったい。なに笑ってんの? なに泣いてんの? 意味が分からない。
「おや、泣いてるのかい?」
「ぅ、るさ、っ……!」
うるさい黙れ。
神経を逆なでするような不愉快すぎる声についそう言い返そうとしてしまう。だが私の言い分を聞いているのかいないのか、抱き締めてる力が強くなり、胸が圧迫され息が詰まった。加えて、声に滲んだ哀れみの色が濃くなった。不愉快が何乗にもされたようだ。もうほんと喋んないでほしい。
「嗚呼……可哀想に。痛いよね、苦しいよね、とっても怖いんだよね」
は? 何言ってるの。どれも見当違いすきて逆に笑えてくる。痛くないし苦しくもないし、ましてや怖いわけもない。
「大丈夫だよ、怖がることなんてなぁんにもないぜ! だってキミは俺の中で永遠になるんだから!」
『しのぶちゃん〜! 前世から好き! だから多分来世も好き! もう永遠に大好き!』
不愉快な声に聞き慣れた声が被った。相変わらず軽薄そうな声色をしていたけど、それでもこんな鬼なんかよりはずっとずっと居心地のよい声だ。いつだったっけ、こんなこと言われたのは。……ああそうだ、まだ会ったばかりのときだ。
『はあ? 意味が分からないです、頭おかしいんじゃないですか?』
『酷い、おかしくもん!!』
『……ふ、なんですかその変な顔』
『変?! えっえっ嘘、そんなに……?!』
『ふふっ……ええ、とーっても変ですよ!』
『とっても?!』
最近知り合ったのに前世とか意味分からない。頭おかしいんじゃないの、この人って思ったし顔にも口にもでた。もん、だなんて童子みたいにわざとらしく頬を膨らませたあの人の顔ったら。珍しくちょっと落ち込んでたから追い討ちをかけてみたらもっとおかしな顔になっちゃって。
『……まあ別に? 変でもなんでも笑ってるしのぶちゃんがみれたし全然いいんですけどね? ちょっとだけ釈然としないだけで別に全然? 気にしてないですけど?』
『〜っあはは!』
しかもその後強がるようにそんなこと言って、分かりやすく拗ねたようなふりまでするからなぜだかさらに笑いが止まらなくなってしまった。未だに自分でもなにがツボだったのか分からないけど。多分箸が転がるだけで笑えてしまうような気分だったんだと思う。
『……しのぶちゃん』
『ご、ごめんなさ……ふふ、』
『しのぶちゃん、可愛いね』
いやいきなりすぎるでしょう。さすがに悪いかなと思ってたのに、笑いどころか息まで止まった。思わずキュッと口を一文字に結んだ私に、穏やかな顔で彼は『大好きだよ』と続ける。彼の柔らかな瞳の中にリンゴみたいにみっともない顔の私が映っていた。そんな顔を見られたくなくて──なにより自分が見ていられなくなってふんと顔を背ける。
『……会ったばかりでよくそんなこと言えますね』
『しのぶちゃんはそうだろうけど、でも俺は前世から好きだからね』
『またそんな変な嘘を……』
『嘘じゃないよ』
『俺はしのぶちゃんに嘘なんてつかないよ、絶対に』
「よしよし、泣かなくていいんだよ」
高いんだか低いんだかハッキリしない、でもとにかく鼓膜を突き刺すような声が思考を切り裂いた。……そうか、今のが走馬灯。全然生き残るための打開策じゃなかった。全然関係なかった。ただ、しあわせなだけで──
ぼんやりとしていたからか、人らしからぬ不気味な虹彩がずいと間近に迫ってきた。やめて、離れてよ気色が悪い、虫唾が走る。ていうかさっきからなに、そんなに泣いてることにしたいわけ? どこまでも憎たらしい奴だ。
「言い残すことはあるかい? 聞いてあげる!」
いいわよ、なら百歩、いや百億歩譲って涙がほんの少しだけ滲んでいると仮定して。
でもそれは決してお前なんかのせいじゃない。
「地獄に堕ちろ」
『大丈夫、しのぶちゃんが寒いときはいつでも駆けつけて抱き締めてあげるから!!』
あの馬鹿で、軽薄で、嘘ばかりな人のせいなんだから。
ああもう、なんで私こんな鬼に抱き締められなきゃいけないのよ。今寒いのに。今こそアンタの出番なのに。いつでもって言ったじゃない、嘘つき。私には嘘なんてつかないって言ったくせに。どうして一番大事なときに来てくれないの、馬鹿。
あの日、私本当はすごく恥ずかしかったんだからね。素直になる最後の機会だと思って羽織を脱いだのに。なのになによ、『だめだよ』って。女なのよ、私だって。一世一代だってどうして分かってくれなかったのよ。あんな風に断るなんてあんまりよ。安売りなんてするわけない、私、そこまで愚かじゃないのに。それで結局一度も触れてくれなくて、ねえアンタ、ほんとうに私のこと好きだったの? やっぱりそれも嘘で口だけだったの? 最低、有り得ない。許せない。
最後に思い出すのが恋に落ちた日ってくらいに、私は貴方が好きだったのに。
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