Moonがウルトラbeautiful


「好きですヒナイチ副隊長! お付き合いを前提にデートと結婚してください!」
「働け」
 ヒナイチさんが好きだ。もう何百回も伝えてる。フラれまくってるし、こうして業務に集中しろと怒られることしばしばだし、本来ならしつこ過ぎる罪で拘留されていてもおかしくない。しかしそこはヒナイチさんの温情もあり、俺はまだお天道様に見守られる中で告白の儀を執り行うことができている。やさしいなヒナイチさん、まじで好きだ。けれど我ながらストーカーじみてると思う。辛うじて一線越えてないだけでアウトに近いと思う、俺の存在。訴えないなんて優しすぎやしないか、ヒナイチさん。危機意識大丈夫だろうか。心配だ、どうか人生をかけて養わせてほしい。因みに人生で一番辛かったのはヒナイチさんに手作りクッキーを渡したら一口食べて『ちょっと違うな』という顔をされ、その後慌てた様子で「美味しいぞ!」とフォローをいれられたことです対戦よろしくお願いします。
 ◆
 S級吸血鬼の討伐に成功した。この世界にしては珍しく普通に凶暴な吸血鬼で、俺は全治四ヶ月というなかなかにひどい怪我を負ってしまった。が、まあ俺とて腐ってもお巡りさんなので。市民の安全を守れてよかったなぁと思う。なにより市民の安全、ひいてはシンヨコハマの治安維持はヒナイチさんの幸福にも繋がるので。ヒナイチさんの幸福指数が高ければ高いほど温暖化も解消される傾向を見せると先日学会で発表されたばかりだ。そんなの当然気合いが入ろう。腕の百本は安い。
「ムカデかお前は」
「腕だって言ってんだろリスニングテスト0点だった系かよ」
「お前に暴言を吐かれたと副隊長にチクってやる」
「半田く〜んほらこれ、変身したへんなだって気付かず美女にでれでれするロナルドさんの動画」
 半田は俺の携帯を奪うと高笑いしながら病室の窓を突き破って飛び出した。ぐっぱい窓ガラス。ちょうど病室に入ってきたヒナイチさんが「なにをやってるんだあいつは」と呆れ顔で髪の毛をぴょこぴょこさせた。うっ可愛い。可愛すぎて全身の細胞が活性化し過ぎて死んだ。
「体調はどうだ」
「いいというか今悪化したというかいやなんでもないですヒナイチさんは世界を救うヒナイチさんを崇めよ。それより副隊長〜デートしましょうよぉ。俺今回結構頑張りましたよ。デートがダメなら映画見たりウィンドウショッピングでお互いに似合う服を選び合いっこするとか」
「いいぞ」
「もしくは動物園とかぁ……、……え?」
「デートはしないが、映画なら付き合う」
 ヒナイチさんは「ただし怪我が治ったらだからな!」と付け足した。いやあれ俺がデートと称さなかっただけでやってることはほぼカップルのそれなんですけおっていうかヒナイチさんほっぺあか〜い超絶ウルトラハイパーめちゃくちゃいとかわい〜い! あまりのキュートさにうっかり脳が溶けてしまった。もうなんでもいいです。とりあえず、デートじゃないデート決行日まで、半田がヒナイチさんにうっかり「デートじゃないかわはははは」とか言わせないようにまたロナルドさんのネタ探しておかなくちゃな。
 そうして俺は気合いにより怪我を一週間で完治させたが、その奇跡をVRCの所長に嗅ぎつけられ、妙な薬を投与された挙句大暴れして副隊長にも迷惑をかけた上、病院へとリリースされた。

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