「みょうじなまえさん、突然で驚くかもしれないけど私と恋人になってほしい」

(さ、最悪だ! よりにもよってマフィア時代の太宰なんて…!)

黒いスーツ、黒い外套をまとう姿に冷汗が流れた。
目の前で寒気がするほどの甘い微笑みを浮かべる男は太宰治。
このクソゲー人生ループのなかでもダントツでバッドエンドの酷さが際立つ男だ。


(この前は何だっけ……脚の健を切られて監禁、いやそれはもう一回前だったかな?)

もう数えきれないほどのバッドエンドのバリエーションで覚えていられない。
今回は太宰ルートだったか、なら次の周回は中原あたりが来そうだな、とだんだん冷静な第3者目線になってくる。

そして大抵この予想は当たるのである。周回回数が50を超えたあたりから身に付けた経験と勘だ。

―― そう、私は何度も人生をゲームのように周回し続けているのである。

この周回は大抵の場合、物理的な死亡や精神崩壊からのバットエンドで終わり、また最初からループする。
ちなみにこの世界で肉体年齢は25歳を過ぎたことがない。驚きの死亡率である。

いいかげん穏やかな生活がしたい。
監禁とか軟禁とか盗聴器とかGPSとかハイライトのない瞳に四六時中見つめられるのはこりごりである。本気で。
最初にじわり、じわりとメリーさん状態で追い詰められた時とか恐怖で発狂するかと思った。……嫌なことにそのパターンはゆうに10回は経験したので慣れたが。


私の個人的な希望としては中島君あたりと平和的に幸せになりたい。
彼の人の善さは周回の中で何度も身に染みて知っている。
ある時は太宰からの盾になってくれたり、同情して励ましてくれたり、相手がポートマフィアの場合は身の危険を顧みず助けてくれたこともあった。

しかも! ただの一度も! ヤンデレた事がない!!

そこは私にとって最重要事項だった。


「私はマフィアだけど、君を危険な目にあわせたりなんてしないから安心してほしい。どんな手段を使っても、絶対に、ね?」

(あっ、監禁フラグがもう立ってる。早いな〜……ははっ)

私はすでに知っている。
こういったパターンは大概が私にとって最悪の結末を迎えることになると。
この周回では太宰と会話したこともない筈なのに、ハイペースで進む展開に涙も出ない。

そう、この世界がクソゲーだと称する理由はここにもある。

主要人物の誰にも関わらないように生活していても、フラグが立つのである。
もう完全なバグだ。
周回してなかったら身に起こったことすら分からずそれで死んだりするからね!!
相手のなかでは恋人(事実無根)になっていて嫉妬されて刺されるとか……何回あったことか。

だがバグが基本仕様の完全なクソゲーでもいいところが一つだけある。


(………『リセット』)

目を閉じて念じれば、周りには誰もいない。
何度目かの周回で気づいたシステムで、『リセット』と強く念じるとループの最初に戻るのだ。


「……老衰したい」

もう通算ループ100回目の言葉だった。


ヤンデレ周回人生ゲーム



連載にしたらすごく楽しそうだけど、着地点が見つからなくてお蔵入りしたネタ。
度重なるヤンデレバットエンドで図太くなった夢主の周回記録的な。ヤンデレに打ち勝つための攻防戦がメインな感じ。ちなみに作中の人物は、夢主がまだ気づいてないだけで基本的に全員ヤンデレてます。この先の周回で知って、またたくましく成長する夢主。ノリと勢いだけで書きたかった。

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