過ぎ去ったものに足をとられるようには、教えられなかった。

捨てられていた私を拾って育ててくれた大好きなおばあちゃんが、数日前にこの世を去った。
もう年齢もいき、覚悟はしていたけれど、いざおばあちゃんがいなくなってひとりぼっちになってみると、その悲しみは思っていたより大きかった。

どうせ、拾われなければ死んでいたこの命。おばあちゃんの後を追おうかとも思ったけれど、実行する一歩手前で、どうにも決心が鈍る。
自分の情けなさに嫌気がさしたが、あのとき救われたこの命。どうにも、自分が思っている以上に簡単には捨てられないようです。

「でも、これからどうしようかな」

もう少し世界をみてみようと決めたものの、問題はたんまり。
もう居場所もない、ましてや里なんてものも、知り合いさえも、いない。
ふらふらしているうちにどこかに辿り着くかな、なんとかなるかな、なんて考えも浮かんではいるが…
とりあえず、お腹すいたし早く人気のあるところに行きたい。なにも誰もいない。ここどこ。

「そこのお前」

「っ!?」

昼間とはいえ不安になっていたら、不意に背後から声をかけられ、かなりびっくりした。
だって、こんな視界の良い平地で、今まで人に気づかないなんていくらなんでも有り得ないから。
でも、“人がいる”という事実に不安も薄れまして、恐る恐る振り返ってみました…が、

「…あ、れ?」

そこには、今まで私が歩いてきた道が広がるだけ。
確かに声がしたんだけど… と、不思議に思った瞬間、何故か痛みと共に、目の前が真っ暗になった。





さぁ、幕が上がるよ
(準備?出来ていませんよ。いきなりなんですか)