「………」
「………」
「………」
「……何だ」
「え?…あ、いや…何でも、ない…です」
とある普通の、珍しく仕事もない日。
椅子に座り新聞を読んでいるサソリを、ソファーの背もたれに腕と顔を預けながら、じいっと見つめていたなまえ。
かれこれ数分、その視線に耐えていたサソリだが、ついに気になったのか、嫌々というように短く声をかけた。
「何でもねーなら見んな」
「もしかしてあれかあ?サソリに惚れたとか!」
サソリの声に若干被り、同じ室内にいる飛段がゲハハとおちょくるように笑う。
なまえは、少し慌てながらも、 や、ちがくてですね。 と即否定。
サソリの元から良くない目付きが更に少しだけ悪くなり、それに気づいたなまえは、え?と、よくわからず困った様子。
「惚れられてないってよ、旦那」
サソリの隣に座りティータイム中のデイダラは、両人の心境を察しつつ、確認するようにサソリに言った。
サソリはそんなデイダラに対し、 うるせえ。 と一言。
状況がよくわからず困惑するなまえに、飛段は 俺には惚れるか? と聞いてきた。
「えっ、あ……えっと、その…」
「やめとけ飛段。お前に惚れるほどなまえは馬鹿じゃないぞ」
「うっせ!デイダラちゃんには聞いてねえっての!」
どうにも口論になりそうな2人を、若干頬を染めたなまえがわたわたと慌てて止めに入る。
「サソリなんかに惚れてもいいことねーぞ!」
「ち、違いますよー!サソリさんって、皆さんの中で一番年下なのかなって思って…!」
「「はあ?」」
どうしようもないことだが本人なりに考えていたことに、間髪入れずにデイダラと飛段の声が飛ぶ。
そんな怖い返ししなくてもいいじゃないですか、と、なまえはびくつきながらも、言葉を続ける。
「だ、だって、サソリさん落ち着いてますけど一番幼そうに見えますし、いくら傀儡だからってまったく違う外見にはしないと思うんです…け、ど」
と。
ちらりとサソリの様子を伺うなまえに、 確かにサソリ、背ぇちいせーもんな! と、飛段が笑うが、なまえは、 や、そういう意味ではないですよ? と慌てて訂正。
当の本人であるサソリは、少し眉間の皺が増えている。
「コイツらみたいな馬鹿より下なんて御免だ」
「え?じゃ、じゃあ、サソリさんって、デイダラさんと飛段さんより年上なんですか?」
いかにも意外だ、と言うようななまえに、次に口を開いたのは飛段。
悉く会話に横入りしてくる飛段に軽く苛つくサソリだが、本人はなまえの近くに行きがしっと肩を組むと、お構いなしに話を続ける。
「サソリな、角都よりは全然下だけどよ、俺やデイダラちゃん、鬼鮫なんかより上なんだぜぇ」
「ぶふっ!」
密着してきた飛段にドキドキ焦り、話に耳を傾けつつ緊張を紛らわそうとお茶を啜っていたなまえだが、今の発言に、湯呑みに口を付けたまま軽く吹いた。
「げほっ……そ、れ、ほんとっ、ですか?」
「おー。鬼鮫が32だからな。それより3つも年食ってんのよ」
なー、サソリ。 と、指折り数えながらサソリを見る飛段につられ、なまえもドキドキ驚いている心臓を引き連れたままサソリに視線を向ける。
最初のとき同様、じいっと見つめてくるなまえに、サソリは 傀儡だからあんま関係はねえけどな。 と。
「そうですね…。あ、でも、サソリさんはいくつでも、かっこよくて素敵ですよ?」
にこにこと、そこまで深い意味を込めずに本人は言ったつもりだったが、外野の2人は一瞬呆ける。
それに、え、また変なこと言っちゃったかな。とわたわた慌てるなまえに、サソリはククッと面白そうに喉を鳴らすと、近寄り、なまえの耳元で何かを囁く。
なまえが顔を真っ赤に染めるのは、このすぐ後のこと。
極上の甘い言葉を用意致しました
(そんな俺に愛されてみるか?)