わいわい ざわざわ
「おー…!人がたくさん!」
右を見ても左を見ても、人、人、人。
所謂繁華街…でしょうか?デイダラさんに連れてきていただいたところとは別で、食材も豊富にある街みたいです!
「みなさんはぐれたら置いていきますからね」
「!!」
いろんなものに目がいってしまっているわたしや、思い思いに行動しかけた皆さんにそう言うと、鬼鮫さんはすたこらさっさと歩き出してしまった。
この間のデイダラさんのときもはぐれてしまったから、その言葉に焦りつつ鬼鮫さんの後を追う。
すると、ふと、左手に温もりを感じた。
不思議に思い鬼鮫さんから視線をそちらにずらすと、きゅっ、とわたしの小指を握るデイダラさんが。
ぱちり。わたしの視線に気づくと、 前みたいになんなよ。 と見上げて言った。
それがなんだかとっても嬉しくて、はい!と言った口許が緩んでしまった気がする。
「…さて!なにを買いましょうっ?」
さっそく物色中の鬼鮫さんの元に行き、わたしも、どれどれ…と売り物を見てみる。
「いらっしゃい。みんなでお買い物かい?」
「あっ…こ、こんにちは!」
にこにこと、優しげな笑顔でお店の奥から出てきたおばあちゃん。ぺこりと頭を下げて挨拶すると、今日は新鮮な卵がはいったことを教えてくれた。
「たまご……あ。鬼鮫さん、お昼パンケーキにしませんか?」
いくつか購入するものを袋に入れてもらっている鬼鮫さんにそう言うと、卵も追加で買ってくれてOKをもらった。
「お昼パンケーキっ?」
「はい。食べれますか?」
「なまえがつくるのならなんでも!」
やったー!と、喜んで、空いている右手にぎゅっと掴まるゼツさん。あわわわっ、かわいー!
ゲシッ!
「あいたっ!」
え、な、なんでしょう!?ほわ〜って幸せな気持ちになっていた私の足に、なぜだか急に痛みが。
蹴られたっぽくてびっくりして振り返ってみると、そこにはこちらを見上げる飛段さんが。
「ど、どうかしたんですか飛段さん?」
見るからに不機嫌そうな飛段さんは、しゃがみこんだ私の両隣にいるお二人を見て、更に不機嫌オーラを重くしたように感じ取れた。
「…おい」
「はっはい!」
「クリームねーなら俺食わねーから」
「えっ?クリーム… あ、パンケーキのことですか?」
「……」
「わかりました。じゃあ鬼鮫さんに頼んで買ってもらいましょう」
私もホイップクリーム好きですよー。 と、同じものが好きだったことが嬉しくて笑えば、飛段さんはフンッとそっぽ向いて角都さんのいるところへ行ってしまいました。
「わっ迷子にならないでくださいねー!」
置いていかれちゃう!と立ち上がって飛段さんに叫べば、 角都ガイルカラナ。 とゼツさん。
「それよりオイラはチョコかけて食いたい」
「僕はメープルねっ」
(…鬼鮫さんとっても苦労しただろうなあ…)
好みがバラバラな皆さんに、鬼鮫さんの苦労している姿が簡単に浮かんでしまった。それでも…
「僕つくるの手伝うからね!」
「焦がされたらたまんないからな、うん」
ああ、なんだかとっても心がポカポカします。
たぶん幸せってこういうこと
(なまえーだっこー)
(荷物持ってるんだからできるわけないだろ!うん!)