「ついたぞ、うん」

「こ、怖くて見れません…」

「はあ…」

あれからなんとか街に着いたらしく、私はデイダラさんに抱えられ地上に下り立った。

「ふああ…ひ、久々の地上です」

地に足がつく喜びを噛み締めていると、すたすたと繁華街の方へ歩いていってしまうデイダラさん。

「ちょっ、やです置いてかないでくださいー!」

中心部へ歩を進めれば進めるほど、それに比例して増えていく人々。
見失わないようにとデイダラさんを追いかけるが、ここで誰かと軽く衝突。幸い向こうの人はとてもいい人で、お互い謝って別れたのだが、困ったことがひとつ。

「で、デイダラさーん?」

なんとデイダラさんを見失ってしまいました。
えっと…これはいわゆる迷子、でしょうか。

「ど、どうしましょう」

とりあえず、闇雲に探してもいけないと思い人通りから抜けてはみましたが、やはり姿は見えません。
ここは随分と賑やかなので、勝手が分からないのに彷徨くのはきっと危ない。デイダラさん気づいてくれるかなあ…と考えもしましたが、デイダラさんスタスタと先進んでいっちゃいましたし、きっと気づいてくれてはない……気がします。











「………」

えっと…何分経ったか分からないんですが、とりあえず、まだデイダラさんに会えません。
動かない方がいいかと思いましたが、やっぱり探しに行った方がいいんでしょうか。
デイダラさん目立つし見つけやすいかも。あーでも……。

「………ずぴっ」

なんかもうよく分かんなくなって、寂しくなってきました。
はたしてデイダラさんは私とはぐれたことに気づいてくれているんでしょうか。
気持ちが落ちてくると嫌なことばっかり考えてしまいます。
着いてきてほしいと言ったのが迷惑だったのかな、とか。連れてはきたんだから、買い物くらい1人でしろってことなのかな、とか。……また、捨てられちゃったのかな、とかまで。
ネガティブになってはいけないとわかりつつも、やっぱりどうしようもできないです。

「ごめんなさい、デイダラさん」

一気に滲んだ視界を情けなく思って膝に顔を埋めたら、どこからか私の名を呼ぶ声。
上げた視界に映ったのは、黄色のなにか。

「……デイ…ダラ…さん?」

ぐしっと服の袖で涙を拭えば、少し不機嫌そうで、そしてほんの少し焦っている様子のデイダラさん。

「え…あの…どうし──」

ましたか。 と、続けようとした私の言葉を遮り、デイダラさんは私の手を引いて歩いて再び人通りの中へ。
無言、そしてこちらを振り返ることもせず歩を進めるデイダラさんに、どうしたのか再度聞こうとしたら、ちらりとこちらを振り返り

「しっかり手握ってろ」

とだけ言われました。
そこで、そう言えば、と、繋がれた手に視線を落とせば、さっきの悲しさはどこへやら。
ほわほわと温かい気持ちが広がりました。

それから、ちょっとだけ人が少なくなってきたので、先程思っていたことと、それについての謝罪をした。ら、すっごく怒られました。
そんなこと思うか! とか、 嫌だったら初めからついていかない。 とか。
でも、一番嬉しかったのは、 誰が捨てるか! でした。
また涙が出そうになりましたが、はぐれたくなかったので我慢です!

「とりあえず、なに買うんだよ。うん」

「ええっとですね…日用品とか、あと…衣類です」

たくさんお店があるから探し物には困らなさそう。と思っていたら、 じゃあ行くか。 とデイダラさんが歩き始めたので、繋いだ手を離さないように私も歩き出した。





蜂蜜まみれの午後を召し上がれ
(下着選んでやろうか?)
(けけけ結構です!)