「デイダラさんー、重いですー、1個持ってくださいませんかー」

「………」

ザリザリと足取り重く、デイダラの何メートルか後ろを歩くなまえ。その腕には、いくつかの袋がお互い邪魔そうに音をたてている。
先程買ったもののようだが、どう見ても付き添いのデイダラの方がなまえより何袋か多めに持っており、それ以上に持ってくれとは余裕はあれどもそれは少し可笑しな話だ。

デイダラは未だうだうだと口を閉じることを知らないなまえに歩み寄ったかと思えば、幾分か下にある、なまえの頭を一発ぺしん。

「〜っ!」

「いい加減にしろよ!うん!」

今まで黙ってはいたがさすがにうざくなったのか、荷物を落とししゃがみこむなまえを見下ろしてお説教。
されてる本人といえば、聞いてるのか聞いてないのか、殴られた箇所を押さえぷるぷると震えている。

「大体どう見たってオイラの方がたくさん持ってるだろ!いまさら泣いたところでだめだかんな」

暁の中ではあまりできないからか、珍しくお兄さんらしく叱るデイダラに、なまえはぴくりと肩を揺らす。
それに気付き あ? と怪訝そうな顔をしたデイダラだが、そんなこと考える余裕もなく、一瞬にして辺り一面に泣き叫ぶ声が広がる。

「うわあああん!でっデイダラさんがっ、なぐっ、殴ったあああ!痛いよおおお!」

ひいやあああ!と、わんわん泣くなまえは座りこんで回りのことなどお構い無しに大泣き。
まあ帰るため森に置いてきた鳥に向かって歩き出しているので、回りにはこの2人を除いて人っ子ひとりいないわけだが、キンキンと響くその声に、デイダラは反射的に耳を塞ぐ。

「…ッ な、ん─」

「ぶえええ…!」

「チッ おい!おい!きたねぇ顔になってんぞ…!」

「あああああ!」

「あああじゃねぇ!聞いてんのか!」

「ひ、あっ、あた、まっ ずきずき、する…うあああん!」

「うわわっ、て…! …あーもう!ちきしょう!わかった!わかったから!オイラが悪かったから泣き止めよ!うん!」

「やあああ!!」

軽めに叩いたつもりだったとはいえ、さすがにここまで泣かれては悪かったと思わざるを得ないのか、なんとか泣き止ませようとするデイダラ。だが、一向に収まる様子のないなまえ。

「ひぃああ!痛いよおお!ヒビはいっ入ったああ!死にたくないいい!デイダラさんのばかああ!」

「ああ!?誰が馬鹿だ!うん!そんぐらいで入るわけ─」

「いやあああ!!やだやだやだぁ!うわあああん!」

「…ッ、 ま、じ。お前…っ」

「ひぃいいああ!」

「…っ、 くっそ…!」

どすっ

「──っ、ぁ…う」

ぐらり。一瞬にして止んだ喚き声の代わりに聞こえたのは、デイダラの背に倒れるなまえと、紙袋のかさばる音。
直接的にしか気を失わせる方法をしらないデイダラは、かなり損な子だ。

「はぁ…ったく。世話かかんな、うん」

少々お疲れ気味のデイダラは、浅く溜め息をひとつ。涙で頬が濡れているなまえをもう一度しっかりと背負い、かさばる袋と共に芸術作品のもとまで歩いていった。





眩暈とともに融解する視界に君
(なんだろ…あったかい)