▽一周年記念企画(下ネタ注意)
目の前に広げられた文献や実験結果の書類。それとにらめっこしながら筆を走らせるわたしの後ろで、さっきからうだうだと話しかけては邪魔をしてくる男がひとり。…うん、とりあえずはひとりで合ってるかな。
まあともあれ、話しかけてくるぐらいならまだなんとか対応出来る。これでも一応忍者だし、冷静でいる訓練くらいした。最終手段は耳栓でもなんでも使う。けど
むに。
「………」
この、体をまさぐられるのだけは勘弁してほしい。
「ねえ。ちょっと左近。いい加減にしてくれない」
一旦仕方なしに筆を置き、やわやわと胸を揉む左近の手をひっぺがせば、後ろからはまあなんともやる気のない声。
「離れて。邪魔だって。わたし今なにやってるかわかってるでしょ?」
「あー…?」
手を離されたことに若干だるさが増したのか、少ししてからの応答。鉄板か、書類と俺、どっちが大事なんだと聞いてきた。
「書類が大事です」
「ざけんなくそ。てめーの男が死にそうなのにそれ放ってまで仕事かよ」
「いや、溜まって死んだ人とか知らないけど」
まったくもう、と息を吐き、抱きついたまま顔をあげない左近に向き直れば、途端、べろりと鎖骨を舐められた。
ドキャッ!!
「〜〜っ!!てぇ!なにしやがんだ!」
「そっちこそ急になにすんのよ!」
いきなりのことに咄嗟に手が出てしまったが、左近は 我慢できねーんだよ! と大声で抗議。
「ばか!うるさい!触らないで!恥ずかしいこと大声で言わないで!」
「だったらヤらせろ。ほんとよ、もう、まじ限界きてんだよ…」
その弱々しさは作戦なのか。
再び腰に腕を回して抱き締めてくる左近は、よくもまあ恥ずかしいことを堂々と言えるものだ。
「さっきも言ったけど、わたしいま大蛇丸様に頼まれた仕事してるの」
「ふーん」
さわさわ
「できなかったらきっと怒られる」
「どころじゃ済まねーんじゃねーかぁ?」
もみ、
「………」
「…あ?お前胸ちっさくなって──」
ばきゃっ!!
「〜〜…!…!」
はー、はー。こんな息上がらせる左近は本当にもうどうしようもない。
触るなって言ってんじゃん!呪印いれられたとき性欲消してもらえば良かったのに!
「てめーほんとふざけんな。そっちが手出すならこっちも本気で出すぜ」
「意味が違う!左近のは違う意味じゃない!」
「つーかなんで拒否んだよ。逆にお前はヤりたくなんねーの?」
痛ってー。 と殴られたところを擦ってわたしを見上げる左近。
その目に映ったわたしは、どういう理由でか、真っ赤な顔をしていて…
「なんだよその顔…。お前生殺しって知ってっか?」
「ちが…っ急に動いて暑くなったっていうかっ」
「あークソッ。とりあえずとっとと仕事終わらせろ。もたねぇ」
わたしを映していた瞳を腕で隠してベッドへ顔を埋める。そんな左近にちょっと違和感。だって、絶対襲ってきそうな人種だと思ってたし。いや、いままではわたしここまで拒むことなかったから、それがわからなかっただけかな。
「ねえ、左近」
「あんだよ。とっととやれ」
「いや、仕事終わっても左近の相手するとは言ってないけど」
「…ほんとに殺す気かよ、お前」
「だからそんなんで死ぬ人いないって」
「あのなぁ…」
「だって左近、よく考えてごらんよ。例えば、わたしじゃなくても、他に選択肢はあると思うんだけど」
冗談。というか、無いのをちゃんとわたしだって自覚してる前提の話なのに、覗いた瞳は真剣モードで、それで。いつものちょっと、怒ったときの声で…
「ほぅ。他の女抱いていいわけ?」
「…た、例えば、の話、だし。それに…」
「いいか、よく聞けクソアマ。兄貴だって体は一緒なんだから思ってることも同じなんだよ。ヤりてーの。」
「………」
「遊郭行くぞって言われても拒否って。主導権取られそうになっても、じゃあ一人でヤれって言われても、堪えて」
「………」
「そこんとこ、ちゃんと汲んで言葉選べ。」
そう言って左近は、わたしを睨みながら口をへの字に曲げた。
そんな左近に、なんというか、怒られたんだけど、嬉しくなっちゃったのは、事実で。
ごめんねとありがとうって、意味と、したくなったからって気持ちで、黙った左近にかかった髪を避けて、キス、してみた。
お利口モンスター言うこと聞いて!
(ごめっごめんなさあいっ!あとでちゃん、と!)
(は?知らねえ。全部お前が悪い。)
企画なのに下ネタで誠にすみませんでも楽しかったです。左近さんラブ。