私の部屋よりほんの、ほんの少しだけ固めのソファーに寝転がる。
人の好みに合わせて様々に置いてくれる家具など、本当にありがたい。愛染様ありがとう。

ガチャ

ここでの寝心地も慣れてきたな、なんて。
意識がさようならしようとしていたところで、扉の開く音と少しだけ嫌な風に息をつかれたのが聞こえた。

「ちょっとぉー」

「……」

「人の部屋勝手に来るのヤメテくんなーい?」

「……」

他に比べて小柄だからそうなんだけど、軽めの足音と近付いた声。
ああ、きっとだるそうに片方だけ腰に手当てて口尖らせて眉しかめて言ってるんだろうなあ、って目を瞑ったままでも想像できる。
これはシカトじゃない。こっちだって答えるのがだるいだけ。断じてシカトでもなくもないんだ。

「うっわうっざ。シカトすんなら出てって」

「……」

「……」

「……」

「は?ねえキミわかってる?ここはボクの部屋で、キミの部屋じゃない」

「……」

「襲われたって、文句言えないよねぇ?」

「……」

ちらり。
今の言葉に納得がいかないというかなんというか、つい目を向けてしまった。
絶対いまそういう気分じゃないだろうに、なに、どうかした。

「ほら、やっぱり起きてんじゃん。早く退けよ。ボク疲れてんのぉ」

「お風呂くらい入ってきたら」

「ウルサいなぁ。いいから退けって」

カマかけたとかそういうレベルではなかったさっきの言葉。ただ単に退かしたいだけの言葉だったようで。
でもやっぱり見た彼は疲れてそうなのは分かるし、逆の立場だったら私と同じこと言うし、それでもこうやって言ってくるってことは、うん。疲れてんだろうな。
けど、なんか見え隠れするそれはなんだろう。

「お疲れさま」

「部屋戻りなよ」

「食事でも呼ぼうか」

「いいって」

「おかえり」

「……あのさァ」

急な二人目の重さに驚いたソファーがギシッと鳴った。
陰った私の目の前には、不機嫌そうな顔。

「ボクだって男だからさ、プライドってあるんだよね」

「女の私にだってあるよ」

「お前のなんて知らないけど」

「ひど」

「だから、求めてる自分もカッコ良くないから嫌だし疲れてるのもあるし、それでもって本能と理性と…これ結構イラつくの。わかる?」

「…余裕ないんだぁ?」

「うるさい黙れよ」

余裕たっぷりな彼がデフォルトだから、かな。
顔には出てないと思うけど、内心少し嬉しいんだと思う、私。
このまま帰るのがいいのかな。それともかな。ああ、だって今日の彼がとてもいとおしい。

「何にやついてんのキモ…」

「求めてくれたっていいのに、って」

「…言っただろぉ。プライドがあんだって」

「もうひとつ理由がありそう」

「ウザいなお前。そのわかってます、って顔が」

「今日のルピ優しいかも」

「ボクはいつでも優しいだろ」

「じゃあ?たまには?少しだけ優しくなくてもいいよ?」

「…だからウザいんだよ、お前」

トン、と横に埋もれた彼の顔。少しだけ跳ねた毛先が頬に当たってくすぐったい。
小さく漏れた溜め息と、 プライドずたずた って言葉。
たまには優しくなくてもいいって言ったけど、いつだってどんなときだって、その中に優しさはなくならないから言えたんだよ。だから、たまには強く求めてくれたっていいんだよ。

「出来るか分からないけど、優しくするから」





よがりよがってキミとボクの



65巻ルピまさかの再登場で嬉しすぎたので