nuit様提出作品(テーマ:約束)
▽幼馴染み暗部設定



私の世界は黒と赤だけだ。

仕事は人殺し。それはお国の命令。嫌だとは思わない。
だって、そういう世の中だから。
誰かがその役を担う。
たまたま?選ばれたから?どうでもいいよね。
みんなが目指すから入った学校で、学んだ術が、人殺しのために役に立つ。
私の人生、これで決まり。

「あぁ、固まっちゃう」

髪についた敵の返り血。落とす暇なんていつもない。
飛び散る赤に目もくれず、数えたターゲットを逝かせるだけ。

ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ。
いつ、むぅ、なな、やぁ、

「あら、いくつだったかしら?」

数えて忘れる。ここのアジトにいる殺す数。
出発する前に打合せしたのに。あいつの話、テキトーに聞いてたかな。
まぁ本人も意外とテキトーなところあるから、と、任務のときはちゃんと真面目なあいつのことは角に置いて、背後に近づくターゲットに刀だけを向けた。

「ちょっとなまえ」

肉の塊に刺さった感触がしなかった。
刺すつもりでもちろん力をいれたんだけど、汚ならしく崩れ落ちた音と空気のように緩やかな、聞き慣れた呆れ声がしたから、あぁ、そっちが殺しちゃったのねって思って振り向いた。案の定。

「カカシ、」

「またデスカ?」

はぁ…。と相変わらずの溜め息をついたカカシの刀からは、ぽたりぽたりと血が滴る。
いくつだったか、なんて、呟いた私を見ていたのか、はたまたいつもだからか。若干の眉間のシワが見てとれる。

「ちゃんと話くらい聞こうね」

「いつも聞いてるわ」

「真面目に嘘つくのやめなよ…」

刀についた血を振り払えば、パパパッと小気味良い音。
呆れてるからもう返さないんだろう、カカシは隊員に無線で連絡を取ると、外への道へ進む。
相変わらず、外はまだ雨かと思ったらなんとも、どす黒い雲の隙間から眩しいくらいの陽が漏れていた。

「晴れたね」

「雨も好きよ」

髪についた血が運よく落ちないかしらと思っていたけど、天は裏切るように虹まで見せてきた。
世界によって落とされないこの血が、お前には血に濡れてるのがお似合いだと、戦場が後ろ髪を引っ張ってきているように思えた。
その通り。私の世界は、黒と赤。
あんな彩る眩しさなんて、似つかわしくない。
自嘲気味に笑みがもれる。
けどまぁ、そんなのも好き前提での話だけどね?
こんな生活も世の中も、案外好きよ。

「きれいだねぇ」

「そうね」

半分は、誰かさんのおかげなのも。
私のことよく分かってくれて、私もあなたをよく分かってる。
だから、理解者がいるから、こんな世界を憎まなくて済んでるの。
全ての感情が、ひとりぼっちじゃないから、やっていける。

今は、戦場が生きる場所。
私の人生、これで決まり?
それでも構わない。でも、それでも思う。
いつか、今よりもっと好きな世の中になったら、してみたいこと。
くだらなくて、どうでもいいような。
きっと私もあなたも、みんなが望んでる。

「カカシ、お願いがあるの」

「いいよ」

「こんな世の中が終わったらさ」






の端でも探しに行こうよ
(本当は平和が一番好き)