▽ルピくんとデートをしましょう続き



「お洋服のお店もたくさんあるね!」

「女の子のが多いね〜、やっぱり」

また写真撮ったりはしゃぎながらクレープを完食。
次はいたるところにあるお洋服のお店でも見ようよと手を繋いでふらふら。
男の子の服よりやっぱり女の子の方が多くて、こんなにたくさんお洒落できるものがあるなんて人間はいいなぁ。私たちなんていつも同じのだし。
いやまぁ、いいの着させてもらってるけどね、愛染様には。
でもこういうカラフルな、お洒落なのもたまには着たいし憧れるね!

「ここのお店どう?」

「趣味悪。だめ、あっち」

「なんでー!」

一番に目に飛び込んだお洋服屋さんを即答で拒否された。
繋いだ手はするすると反対側のお店に引かれ、いらっしゃいませーの店員さんの声と、まぁなんともホワイトでふりっとしたお洋服がよく並んでる。

「なまえはこういう方が似合うってー」

「これ虚圏のときと似ちゃうじゃん!たまにはお姉さんぽいの着たいー!」

「だめっつってんだろぉ。あんま下品なの僕やなんだけど?」

「下品ってなに!おしゃれだよ!」

「胸さらけ出して僕が許すとでも思ってんの?晒すほどもないくせに」

「ぐぅ…!」

ぐぅの音くらいは出てしまったがまぁ実際出ません。晒すほど胸なんて出てません。
それでもいつもと違うようなのもいいかなって思ったし、少し背伸びしたいときだってあるよ!ルピくんドキドキさせたいなんて言えないけどさ!

「じゃあどうしよ…。あ、これかわいい」

どうしよとか言いつつまぁ実際私もピンポイントでこういうふんわり系お洋服は好きだからすぐに好みのものが目につく。
袖のシルエットが可愛い。なんか刺繍もしてある!可愛い!

「あ、でもこれもいいかもなぁ。市丸様にもらったお小遣い足りるかなぁ」

とりあえずは値段も気にしつつ服を手に取っていくが、この後もどこか行くだろうしここでたくさんのお金は使えない。
なにか数着に決めなくちゃなぁと思っていたら、店員さんがショッピングバッグを持ってきてくれて、洋服のコーディネートやらおすすめやらを色々言ってきてくれた。
こんな…こんな人間も素晴らしいじゃないのと店員さんと少し雑談をしたあと意見を求めるべくルピくんに声をかければ、ルピくんはじいっとお店の外にいる女の子を見ていた。

(そんなに、人間界の子気になるのかな…)

気持ちが冷めるのって瞬間だと思った。
あのルピくんが女の子を気にするなんてあんまりないと思ってたし、ましてや人間だよ?いや、有り得ないとは言わないけど、でも、彼女私だし、というか今デート中だよ!
なのに他の女の子見つめるってどうなのですか!
来たときから女の子にサービスしてたり(格好いいから仕方ないけどさ!)、せっかくルピくんとラブラブデートと思ったのにちょっとこんなの寂しいじゃん。

「お客様…?」

「すみません、それ、ちょっとキャンセルで…」

購入するつもりで店員さんが持っていてくれたショッピングバッグをそのままにして、ルピくんの隣を通りすぎる。
ふと気づいたルピくんが声をかけてきたけど、それを無視してお店を出た。
ちょっと、拗ねてるんだよ。ルピくんのお馬鹿。

「はい、ストップ」

ぱしん、と手首を掴まれる。
ありゃぁ、お店から出てほんとそんな経たずに捕まえられてしまった。
そりゃそうなんだけどさ。追ってこないとは思ってなかったし。

「なんで泣いてるのさ」

「ルピくんが…女の子見てたから」

いつもと変わらないテンショのルピくんに、原因にも気づいてくれないの?とちょっと涙声になった。
気づかぬうちに女の子見てました、なんて、ちょっと酷いよ。
ルピくんの興味が他の子に移るくらいなら人間界来なかったよ。

声だけじゃなくて、ぼろりと目からも涙が出た。
うざいって思われるのわかってたけど、溢れる涙を抑えられない。
道行く人々が何事かと通りすがりにこちらを見てくるけど、あんまり見るなら殺しちゃうのよ。悲しいんだから、私。

「僕が人間の女好きになると思う?」

「わかんない。でもずっと見てたから」

「勝手な勘違いすんなよなぁ。僕が見てたのは人間の服だから」

「服…?」

「そ。あんな女が着るよりなまえの方が似合うのにって。どこに売ってんのかなぁとか」

「……」

「分かったら早く泣き止んで。僕のお姫様は世界一可愛くなくちゃ」

ポケットからハンカチを取りだし私の頬に伝う涙を拭ってくれるルピくん。
その優しさと勘違いした自分への嫌悪でまたぽろぽろと涙が出てきてしまったが、それもルピくんは嫌な顔せず、 お姫様、笑ってー。 とあやしながら拭いてくれる。

「ルピく…ずぴっ、ありがと…ごめんね」

「もーいいの。まったく、顔ぐしゃぐしゃにしてぇ」

「ブサイク…?」

「わかってんなら早く鼻かむ」

「あい」

ちーんっと鼻に持ってこられたティッシュで鼻をかむ。
回りはなんだバカップルかなんて言ってるの聞こえてますよ。
ルピくんがお姫様って言ってくれたんだから、ブサイクなぐしゃぐしゃ顔なんとかしなきゃ!

「…素直すぎるのも馬鹿で困っちゃうけど、ほんと」

「?」

「お前は可愛いねって話」

「! 泣き止んだからね!」

「ソウデスネー」





ルピくんと仲直りをしましょう
(いつでも可愛いなんて、そんなのろけは恥ずかしい)



唐突にルピとデートをしたくなった(逃避)