▽5周年記念リクエスト(さな様)





長く続いた忍界対戦が、終わりを迎えた。
うちはが負け、我々千手が勝つという当たり前の内容で。

すべては柱間のおかげなのだろう。この戦争が終わったことも、彼が生きていることも。
近くで終わりを見れた私は幸運か?
負けた男の姿を、私はくすんだ瞳に焼き付けた。



そんな日が、もう、とうに昔に感じる。
一族同士の境界であった場所に里が作られ、家が建ち、なかった色々な体制が整われ。戦争を知らぬ子も産まれる月日が経った。

二人の長が率先してつくる、新しい“何か”は、目まぐるしく世界を変える。

最近は“任務”なんてものもできて、ランク付けが施された依頼へいろんな忍が派遣されるシステムも作られた。
名ばかりの、内容は作られる前となんら変わらない。
戦争が終わった今も、私は人を殺している。



「このまま寝ちゃいたいな〜」

時折高い音を鳴らして風が吹く、目下、火影岩がある高台。
里が一望できるここが、私は好きでもあり嫌いでもある。
騒がしくないところは、とても好き。

久々のオフだもの。
空を眺め雲を追い、飛ぶ木々の葉を無意味に感じてたっていいと思う。

大きく息を吸ってごろりと寝転がれば、岩肌が痛くて今日も長椅子封印して持ってくるの忘れたわ。と同じ場所で何度目かの後悔をした。

「人間の臭いも、血の臭いもしない。最高だと思わない?」

瞑った瞼からは遮れない太陽の暖かみが届く。
呟いたその一言は、別に独り言でもなんでもない。
僅かに揺れる前髪は、その人が来た風がかかっただけ。

「久しぶりだな、なまえ」

「それ自分で言ってて悲しくならない?」

ぱちりと開いた瞳の横で、マダラは片膝を立ててこちらを見下ろす。
久々に見た、風に遊ばれるその長い髪があの人に似て嫌いだから、逃げるように青々とした空へ目を逸らした。

「どうしたの、今日は」

「会うのに理由がいるか?」

「どの口が言ってんのよ」

私は決して面倒くさい女じゃない。
けれど、日数くらいは数えられるのよ。
あなたと最後に会ったのは、もう3ヶ月も前じゃない。

お互いやることがあって忙しいのもあるけれど、こっちは会いたくても気軽に行ける状態じゃない。
この意味ちゃんと理解できてる?なんて。
捲し立ててやっても良かったけれど、私の一言で向こうも気づいたというか、わかったというのか。
ちょっとバツが悪そうにしているから、それに免じて。優しく飲み込んでおこうかな。

「まぁ、里作りはお忙しいでしょうからね」

「…任務は問題なしにこなしてるのか」

「仮にも千手だよ?問題起こしてたらこんな余裕でいられないって」

何処からともなく飛んできた茶色の葉が、頬を掠めるからそれをぐしゃりと潰す。

ふふふ、と無意識に笑ってしまった。

それは彼に会えた嬉しさなのか、はたまたその彼が気まずそうになんとか言葉を紡いだからか。
それとも、千手という呪いに付きまとわれている自分への嘲笑なのか。

出来のよい、柱間や扉間なんかとは違う。
同じ、血を分けた兄妹だとしても、飛び抜けた才能もなく出来損ないの自分は、余所の人間と何が違うというのか。
千手柱間の妹というだけで。敬われることもあれば、嫌われることなんてもっと多い。
ある一族からは、余計。

自分の血が、一番嫌いだと。
あなたといるときに、一番それを思う。

弧を描いた口元を戻さない私が、なにを考えているのかわかるのだろう。
マダラは里を見下げた。

「火影岩、柱間だね」

「…妥当だろう」

「ふふ。本当に、大嫌い」

「…なまえ、」

「ねぇ、マダラ」

重なった声と、重ねた手のひら。
なにを思っているかわかるのはあなただけじゃないのよ。って。

ちょっぴり目を見開くマダラと視線を合わせれば、その顔がいつもの愛しい顔と違うから。お願いよ、そんな顔してほしくない。

「何にしても、私を連れていってね」

指先を絡めて、太陽を遮るその辛そうな顔に私は笑う。

立ち位置上なのかな。うちはの長がなにを企んでいるかなんて、嫌でも耳にする。
我々への不信感、自分の一族への訴えかけ。全部全部、あなた一人のこと。
誰も、あなたについていかないこと。

(どうして、こんな世界になったの)

誰が望んで出来た世界なのか、きっと誰も答えられないのが今の現状だ。

薄く開いたその唇が、できない。とこの後落とすだろう。
その言葉を遮るために、あなたにも言ったことのない台詞を吐かせてね。

言わないまま伝わっているのも知っていたけれど、後戻りは私もあなたもしちゃいけない。
もう見たくないの。
自害しようとしたところを和解できたとき、見せた嬉しそうな顔したあの人のことも。一身に受けた責任も傷も、一瞬で捨てたあなたも。
全部全部、見たくないのよ。


「私を救いだしてよ、恋人なら」

小さなころに出会ってから一緒にいた。
日々の中であなたに惹かれたことは、今となっては必然だったと思う。
3人で楽しかったあの時は、もういらない。

この血を抱えたまま一生を添い遂げる相手は、ずっと前からあなただって言ってたでしょ?

「聞いたことないな」

「じゃあ今のがそうよ」

出来損ないでも、ここまで隠し通せたのは上出来じゃない?
私が消えたら、柱間も扉間も、驚くかな。
その顔最高に見たいけど、もう会わなくて済むと思うとそっちの方が最高ね。

「その長い髪、やっと好きになれそう」





枯葉
(なんとも思わないの。こんな妹でごめんね)



マダラ様が復活したとき穢土転生じゃないなにかで甦って(甦らせて)一緒に戦争で無双してくれたらめちゃくちゃかっこよくないですか…?
しがらみが多くて嫌いだっただけで、ちゃんと出来の良い血は引いているので、マダラ様のために使えるようになった彼女はたぶん普通に強い。