「たっだいま〜」
扉を蹴り開け、大量の荷物をドサドサと所構わず置く女性。
自分だけでは持ちきれなかったものは、数人の部下が使われ、そのまわりに丁重に置いていた。
「おい、なんだァこれ」
今までのこと見ていた男、捲簾は、なまえが満足げに見下ろしている大量の袋を怪訝そうにみた。
「下界のお菓子。やんないよ」
「誰もまだくれなんて言ってねーだろよ」
部下に下がるよう伝えるなまえに、ポリポリと頭を掻きながらしゃがみこむ捲簾。ずいぶんな量だ、と思っているようだ。
「誰が食うの、これ」
「わたし」
「全部?」
「んー、悟空にあげてこよっかな」
さすがに買いすぎた〜? と頭を掻くなまえに捲簾は溜め息をついて、よっこらせと立ち上がる。
「このタイミングで食ったらヤバイだろ?天蓬に怒られんぞ」
「なにそれ。どのタイミング?」
「健康診断」
「………あ、」
「…しらねーよ、俺」
捲簾の言葉に、サアッと顔から血の気が引くなまえ。
なにかを思い出しているのか、唇に触れている指先が少し震えていた。
「…捲簾」
「……」
「ちょっと無視しないでよ」
「だって俺関係ねーもん」
「薄情野郎!」
うわああん! と涙目で捲簾に殴りかかるなまえ。扉の向こうからなんだなんだと覗きこむ輩は、大量のお菓子を目にして、事を簡単に理解したよう。
「? 何事ですか?」
群がるそこに現れた、バッドタイミングで天蓬。
それに気づいた人々は、皆なまえを庇ってか口ごもったり苦笑い。だが、訊かずとも天蓬の視線の先には争う2人と傍らのお菓子。
「はぁ…なるほど」
そういう彼の表情は、いつもと変わらない穏やかさを含みながらも、どこか楽しげにみえてしまったのは、これから起こることが分かってしまっているからなのだろうか。
外野たちは可哀想にと苦笑し、未だに争いをやめないなまえをみた。
「はい。そこまでですよ2人とも」
パンパン!と手を叩くその音に、なまえだけはびくりと肩を跳ねあがらせ、ぴたりと動きを止める。
「……て、んぽ…」
「なまえ、これはなんですか?」
「えっ?あ、いや…」
顔は笑っていても何を思っているかぐらい分かってしまう付き合いの長さを恨んだなまえは、近づいてくる天蓬に怯え捲簾の後ろへ隠れる。
「捲簾、そこを退いてください」
「だめ、捲簾。ぜったい退かないで」
板挟みにされた捲簾。だが彼も目の前の白い悪魔には逆らいたくないので、少し決めかねたあと わりぃな と、隠れるなまえを強引に差し出した。
生け贄の名は自業自得
(捲簾のばか!あほ!変態!だいっきらい!)
(ちょ…っ、最後のは傷つくわ…)
(部下のあなたが約束を破ると僕が怒られるって言いましたよね?なにか僕に恨みでもあるんですか?)
(医者の言うことなんて嘘だし!健康だもんわた──)
(なんだっけ?糖分とりすぎのなんたらだろ?)
(おいこら!わたしが話してんだろ捲簾!)
(まったく…2度目ですからね。もう庇いきれませんよ)
(いや!庇ってないじゃん!医者の作ったプランに勝手にハードな内容つけてたじゃん!)
(まっ、汗かいてるなまえもエロくていいけどな?)
(黙れ。どっかいけ役立たず)
(さ、なまえ。どんな運動させられるか楽しみですね)
(見てんだけのやつはな!うわああん!)