しゃこしゃこと歯磨きをしつつ、外から漏れる光に目を細める。今日もいい天気だぜ!と元気いっぱいの太陽さん。おはようございましゃこしゃこ。
「…おい」
「っ!むぐ!…っ…!!」
さあて、今日一日どうしようか。そんなことを考えていたら、不意にかかる声とのし掛かる重み。びっくりして、口に含んでた水を吹き出しそうになった。
「ぺっぇ!げほっ…び、っくりさせないで、よ…!」
むせる呼吸を戻しつつ、タオルで口元を拭い腰に腕を回してくっついてくるやつを睨む。
だが本人はわたしの首筋に顔を埋め、ちいさく唸るだけ。
「…え、なに。どうかしたの?」
いつもとちょっと様子が違うかなーなんて思って訊いてみたら、回されている腕の力が若干強まった。
ぽそりと聞こえたその声は、寝起きのわたしに添うように低い声色だ。
「起きたら腕ん中からっぽだし… ざけんなさみぃ」
いやいや寒いって。いまは春ですよお兄さん。そう思ったけど、言うのはやめた。そのあとに聞こえた、 びびった。 の声が僅かにふるえていたから。
「あらあら。怖い夢でも見ましたかー?よしよし」
「うっせぇ。ガキ扱いすんなガキ」
「いまは青峰のほうが子どもみたいだよ」
首筋に感じるくすぐったさを撫でれば、すり…と甘ったれて擦り寄ってくる青峰。
それがどうしようもなく可愛くて、きゅんってしちゃったのはナイショ。
「あとで一緒にお買い物行く?」
「んー…」
「朝ごはんなにがいい?」
「…いらね」
「わたしはお腹すいたの」
「オレはもう一眠りしてぇの」
「………」
「………」
「…起きてくれたらちゅうしてあげる」
「…むかつく女」
大いに結構。でもそんなわたしに惚れてるんでしょ?は、お互い様だから、やっぱり言うのはやめておこう。
愛を吐くの、その唇
(とりあえず離して)
(…無理)