「………」

「………」

「………」

「………」

「……ねえ」

「………」

「いい加減離してくれる?」

「………」

「これ以上抱きついてるならお金とるよ」

「……ケチ」

ずび、と鼻をすすり、すっぽりと抱き締めているマーモンから顔をあげるなまえ。赤くなった目にはまだうっすらと涙が残っている。

「僕も暇じゃないんだ。君の相手なんかしてられないよ」

「うっ…なんか、ってなによぅ…。あ、いつみたいなこと…うわぁぁぁん!」

(あーあ)

言葉をしくったな、と溜め息をついたマーモンは、再び泣き出したなまえから抜け出そうとしていた体から力を抜いた。
もとより、抜け出そうと思えば簡単にできたのだが、それをしないのはまあ長年の付き合いがあるからなのだろう。

「ふっ、ぐす…っけほ、っ…」

「お水もってきてあげるから離して」

「…や、っごほ、…やだ。」

泣き叫んでいたせいか、枯れた喉を心配して言葉をかけたマーモンに、なまえは腕の力を少し強める。
その意思表示に、マーモンは溜め息をまたひとつ。

「…なまえ」

「………」

「行きたがってたあのお店、連れていってあげるよ」

「………」

「だから泣いてないで行こ」

くりん、と腕の中で向きを変え、なまえをみるマーモン。
鼻をすすり、小さく息を吐いたなまえは、見えはしない赤ん坊の瞳を見、唾をのむ。

「ショコラータ飲む」

「…大人になれって言われたんじゃなかったの」

「振った相手の言うことなんか聞いてやるもんか」

わたしはわたしの好きなようにする。 と、吹っ切れたのか軽く唸って外を見たなまえに、マーモンは再び体に力を入れる。

「マーモン」

「ん?」

「ありがとう」

するり、と解けた腕の向こうで笑うなまえに、マーモンは 形で表してよ。 と皮肉ってみせた。





はうまっち?
(ほっぺにちゅーでいい?)
(そういうことじゃないんだけど)