くっつきむし






※大学生パロ

気持ちよく意識が浮上して、目が覚める。寒くなってきたから、と押入れから出した毛布とシーツが素足に絡んで気持ちがいい。

今日は金曜日だけど、嬉しいことに2人とも全休だ。枕元にある携帯で時間を確認すれば、まだ7時。昨夜は別に早く寝たわけじゃないのに不思議。
二度寝する気にもならなかったので隣で寝てる仁王を起こさないようにそろりそろりとベッドから抜け出した。


あー、床冷たい。何でスリッパちょっと離れたところにあるんだろう。


仁王が起きた時に同じ思いをしないように、一緒に離れたところにあるもう一つのスリッパをベッド脇に寄せてから寝室を出る。


ペタペタと音を立てて辿り着いたは洗面所。うがいを一度してからピンクの歯ブラシに手を伸ばした。
仁王が適当に買ってきた歯磨き粉は私にとっては少しだけ刺激が強い気もするけれど、別に新しく買うのももったいないので我慢する。


時間もあるしきちんと朝ごはん作ろうかなぁ。いつも大学がある日はバタバタしているから買い置きのロールパンだけなんてことが多い。
それでも私と仁王は朝ごはんをがっつりと摂る方ではないので作りすぎるのもダメなのだけれど。


眠気は無いものの、目がまだ慣れなくてシャキッと開いてくれない。歯ブラシを持つ手だけを動かす機械のようだ。
卵とベーコンと、あとパンだけでいいかなぁ。簡単だし。


もう一度うがいをして歯ブラシを元の位置に戻すと急に腰と肩に重みを感じた。



「んー」
「わ。びっくりした」
「鏡、見んかったん?」
「うん。ぼーっとしてた」


腰に絡むのは仁王の手、肩には仁王の頭。銀色の尻尾がくすぐったい。私の方が背が低いのに、その体勢は辛くないのだろうか。


「仁王、おはよ」
「ん」


仁王は抱き枕(という名の私)が消え、寒くなって起きたらしい。「二度寝せんの?」なんて聞かれたけど、朝ごはん作りたくなったしその提案は今は却下だ。


「ところでいつまでこの体勢続けるの」
「1日分のかさね成分がまだ足りとらんから貯まるまでじゃのう」
「重いんだけど……」


考えていた通りに卵をフライパンに落として、菜箸でかき混ぜる。肩に仁王の頭がある分少しだけ攣りそう。
何だ私成分って。そんなことしなくても大学がある日はパパっと動けるの知ってるんだからな。
というか、私が泊まりに来てない日はどうしてるんだっての。


私たちは同棲してるんじゃない。付き合って1年の半同棲カップル。
私は実家暮らし。仁王は一人暮らし。だけど仁王の家の方が大学に近いし実家:仁王=6:4の割合でお邪魔してる。


「ねーえ。ごはん出来たよー。食べよ」
「貸し、もってく」


ようやく離れた仁王がお皿を持ってローテーブルに運んでくれる。仁王の家ではソファーとこのローテーブルでごはんを食べる。
こたつの機能も付いているから、そろそろこたつの布団も出してくれるのかな。その辺は家主の仁王様任せだ。


「久々のかさねの朝ごはんじゃ。いただきます」
「どうぞ。ねぇ食べるときもくっつくのー?」


腕と腕がぶつかってしまいそうなくらいに近い。いつもは食べやすいようにある程度距離を取って食べてるのに。これはおふざけしたりいちゃいちゃする時の距離だ。
今日の仁王は何だか可愛い。母性本能みたいな何かを擽られる。


「かさねのことが愛おしくてたまらんのじゃ」
「やだかわいい。甘えたい時期? 仁王くっつきむしみたいだよ」
「かさねちゃん専用くっつきむしじゃの」


1年付き合ってきたけどこんなに可愛い仁王は初めて見たかもしれない。


朝ごはんの片づけを一緒にして、また2人でソファーに座る。まだ9時だ。気持ちでは午後ののんびりとした空気だけれど、なんと今日はまだ始まったばかりで、この後何しようかなぁ。


「別に今レポートとか課題追われてないよね」
「そうじゃのう」
「まだたっぷり時間あるよ。どうする?」


やらなきゃいけないことと言えば買い物ぐらいだ。朝ごはん作る時に冷蔵庫を開けたら意外と物が減っていた。洗濯物とかは、昨日帰ってきて直ぐにやってしまったし。


「俺はずっとかさねちゃんのくっつきむしで構わん」
「えー。夕方前になったらでいいからお散歩しよ。買い物も兼ねて」
「手つないでいいなら行くぜよ」
「いいよ。いこ」
「ピヨ」


それまでゴロゴロタイムだね、なんて。手を引かれてさっきまでいたベッドに逆戻り。
今度はちゃんとベッド側でスリッパを脱いで。



こんな1日もありだよね。





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