モブ(友だち)多めに出ます




1限から講義がある日はどうしても眠くて仕方がない。
3限からいつも一緒に行動している、仲の良い友達が寝坊して4限から来るというので、今日は一人さみしく食堂でランチだ。
すでに食べ終わったパスタの皿を端に追いやり寛げば、くぁと小さな欠伸が漏れた。
広くなった机の上にカバンを起き中身を漁る。教科書とルーズリーフの隙間に見を潜ませていたスマートフォンを見つけてトークアプリを開く。講義が終わって移動する際に仕舞ってからそのままだった。

さて、やりますか。


『おつかれー』
『シフト提出明後日締め切りだよね?どこか一緒に休める日あるかな』


とりあえずその2つを連続で送信して、仁王のトーク画面を閉じる。そのまま指をスクロールさせて、寝坊した友達に連絡を入れる。代返とリアペのお礼にフラペチーノ買ってきてくれるらしく、『新作がいい』と返していると、別トークの通知が鳴った。通知バッジには2という数字、その横には“仁王雅治”の名前。
思ったより返事来るの早かったな。


『12か18空いとる』
『なんじゃ。御礼か?』


この前のクレーム事件で言ったこと、覚えてたらしい。本当に物覚えがいい人だ。
一旦トーク画面から離れてスケジュールを確認するためにカレンダーを呼び起こす。あ、18はサークル入ってるや。 
再び仁王との画面に戻って『じゃあ12!』と返せば、送った途端に既読の文字が現れて、間髪入れずにスタンプが送られてくる。昔のアニメのキャラクターが『了解ナリ』と発しているスタンプだった。


「何かニヤついてない?」
「おそよう。それ本当に言ってる?」


スマートフォンを手放して手を両頬に添える。ニヤけてるって何。
カフェの紙袋を机に置いた友達から新作を受け取って一口飲む。甘くて最高!4限も頑張ろ。


「嬉しそうな雰囲気出てたよ」
「んー、バイト先の同期とやり取りしてた」
「例の銀髪イケメン?」
「そう。今度一緒に遊ぶんだよね」


私のその言葉を聞いた瞬間、ぱっちりと可愛く開かれている瞳が狭まった。新作の味好きじゃなさそうだったから、と私とは違い通常の味を飲むストローから唇を離して、重たそうに口を開いた。  


「え、付き合った?」
「……付き合ってないよ。仲良いだけ」
「でも実際好きでしょ、かさねは」
「好きっていうか、気になりはしてる」


先月の先輩にも言われた「好きなのか」問題。あの時は本当にかっこいい男友達ぐらいだった。
いつからだろう、良いなぁって思い始めたの。クレーム助けてくれたあたりかな。
女子大なのがあってどうしても同年代の異性と関わる回数は減った。バイトぐらいでしか接点がない。意図して一緒にいる訳ではないけど、気づいたら喋ってて気づいたら近くにいるもんだから、恋愛としての好きかどうかの見極めがまだ出来ていない。でも、確実に気にはしている。


「まー楽しんできなよ。付き合うの時間の問題な気もするけれど」
「皆それ言うんだよなぁ。てかそろそろ教室行こ」
「そうね」


席を立ち机に突っ伏していたスマホを手にすると、画面が点いた。タイミングよくトークアプリの通知が入り『楽しみじゃの』という文字が浮かび上がっていた。



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