青の破軍

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「ええっと、あとは弾とスラスターを直せばいっか……」


深夜。1番隊も参番組も寝静まってる頃に、私はひとり相棒の修理をしていた。

こんな時間くらいしか、相棒の相手してやれないもんね。


「よし。必要なものはチェックしたし、今日はもう寝るか」


だからと言ってあんまり長く構ってやったら、今度はこっちが倒れちゃうから。そこらへん難しいよ。

格納庫と寄宿舎は離れているから、外を移動しなきゃならない。ちょっと寒い。ノースリーブなんか着てるからかな。


ふと、上を見上げた。真っ黒い空には星が点々と光っている。

夜空は綺麗だ。

別世界の火星でも、昔の世界と同じくらい宇宙が綺麗なのは不思議だ。でも、それと同時に少し安心する。地球と火星の距離が近いせいだろう。

地球と違うのは、空に月がないことくらいだ。


「おい」

「あ、オルガ」


気がつくと、オルガが目の前にいた。オルガも寒いのだろうか? ポケットに手を入れている。


「またMSいじりか?」

「まあね。オルガは?」

「おやっさんとMW(モビルワーカー)のチェック」

「そっか、もう明日だもんね。お疲れさま」

「ああ」


Hi-νガンダムのことは、おやっさんの他に、オルガにだけは話してあった。

どうしてもパーツを盗むと、一人じゃ困難なときがあるから、オルガに手伝ってもらったりしてる。その代わりに、私はマルバのお世話中にゲットした情報をオルバに横流ししてる。ケースバイケースってやつ?

まあそれをヌキにしても、難しいことを相談できる、数少ない仕事仲間のひとりだ。


「ところでお前、いつまでここにいるんだ?」

「え?」

「あのMSが直ったら消えるんだろ? ここから」

「あ、ああ……まあね。残りの部品は地球で揃えようかなって思ってるの。あとはそれを取り付ければ完成」


いつまでも彼を頼って盗むのは危ないもんね。

それに、今までにないくらいの大仕事が3番隊に乗り掛かっている。

私は何回も宇宙に上がっている。今回だって宇宙へ上がるし、今までのお礼が少しでもできたら。


「だから、今回の仕事が終わったらお別れかな」

「そっか。ガキ共が悲しむだろうな、けっこうお前になついてたから」

「ん……」


思ったことを口にしようとして、やめた。

たぶん、それはあまりにも悲しいことだろうから。


「……でも私、オルガや三日月、カタキくんやおやっさんや……みんなのこと嫌いじゃなかったよ」

「俺も、アイリンとなら3番隊を引っ張っていけると思ったさ」

「なにそれ、口説き文句?」


「俺のとっておきだ」と、暗闇であまり見えなかったけど、オルガはウインクした。


「実際お前は上手くやってくれたよ。世渡り術を学んだり、ガキ共の世話をしてくれた。正直無くすのが惜しいくらいだが、待ってる奴がいるんだろ? ここに縛られてちゃ、たまんねえしな」

「オルガ……」

「俺らのことを気にかけてるなら、心配はいらないぜ」


オルガは、私の前にぐっと拳を突き出した。


「俺たちは俺たち、宇宙ネズミなりにあがいてみせるさ」


「……」


私は「そうだね」と返して、オルガと別れた。

そうだ、辛いことばかり頭に残ってて、それから離れようとばかり考えてたけど、ここからいなくなるということは3番隊の人達と別れるってことだ。

たぶん、今度ここを離れたら、二度と会うことはない。

待遇が似ていたり、年が近いこともあって、彼らとはよく話をした。バカしたり、一緒に殴られたりもしたっけ。


「全然、考えてなかったなあ……」


あまりにも突然に、私の中で『ここを離れたくない』という気持ちが沸き上がってきた。

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