
足音2
目がさめるとそこは自分の家ではない所。
時刻は5:30。
少し…早く目が覚めたな。
そんな事を思いながらもベッドから出てリビングへいく。ソファで横になって寝ている黒尾。
『そういえば…今日は何日なんだろう…』
カレンダーを見て驚く。
『7月6日…』
自分の記憶上、推薦で合格している。という事は11月6日くらいだったはずだ…
『ずれてる…』
どうりで暑いはずだ。
7月6日朝7:00〜
今日は金曜日だから朝練かな…
(※単行本10巻の43ページのカレンダーより)
そんな事を考えているとアラームが鳴り、黒尾がそれを止めているのが目に入った。
『早いね…黒尾くん。』
だけど返事が返ってこない。
というより、何なんだろうか。この寝方は…
『黒尾くん…黒尾くん…起きないとヤバイんじゃないの!?』
里紗が声をかけながら揺さぶるとようやく目を開ける。
「んー……」
『おはよ。あと10分で6:00だよ?準備しなくて大丈夫…?それにご飯も食べないといけないでしょ?』
「飯…何…」
『冷蔵庫に何もなかったからおにぎりかな…おにぎりでもいい?』
「ん。」
『じゃあ、起きて。黒尾くん。』
ゆっくりと起き上がり、欠伸をしながら洗面所の方へフラフラと歩いていく。
やっぱりソファだと疲れるよね…
「里紗はベッドで寝ろよ。俺はソファで十分だから。」
そういって有無を言わせないような微笑みで言う黒尾に何も言えなかったのだ。
時計を見ればもう6:00近い。早く作ってあげないと。
急いでキッチンに向かう。おにぎりの具はたまたまあったシーチキン。
今日、買い物に行ったほうがいいな…
そんな事を思いながらおにぎりを握る。3つ握ったところで黒尾が制服に着替えてやってきた。
『はい、どうぞ。』
「おう、サンキュー。」
『あのさ、今日買い物に行きたいの。冷蔵庫何もなかったし…』
「ああ、ならついでにお前の服とかも買ってこいよ。」
『えっ』
「いつまでもそんな真っ赤なジャージなんてやだろ?歩いてすぐにショッピングモールがあるからそこで買えばいい。まっすぐ行けばつくから道には迷わねーはずだ。」
当たり前だと言わんばかりにそう言ってくれるものだから、少し驚いた。彼はすごく気がきく。この人と出会えて、良かったと心底思った。
『そっか…わかった。ありがとう。黒尾くん…』
感謝を伝えると、嬉しそうに照れ臭そうに頷いてくれた。
黒尾「…里紗って高校生?」
『うん、高校三年生だったよ。』
「ならその黒尾くん、やめろよ。なんか…はずい。」
『女の子からそう呼ばれない?』
「女子とそんな話さねーからわからねーな。」
『そうなの?絶対モテてそうなのに。』
「え、なんで。」
『なんでって…黒尾くん、かっこいいから。』
そう言ってから気づく。
なんて恥ずかしい事を軽々と言ったんだ自分…
ちらりと見ると彼は私と目を合わせない様にしていて表情は見えないが少しだけ耳が赤い。
『えっと…』
「とりあえず、黒尾くんじゃなくていい。同じ歳で同じ部屋で生活してんだし。」
目を逸らしながらそういう彼。
『鉄朗…』
「ん、そっちのほーがいい。」
そう言うとどこか嬉しそうに言ってくれた。
いつの間にか食べ終えていた彼は立ち上がるとお金と普段着るようなジャージを渡してくれる。
このジャージを着て行けということだろう。
そして間も無く、鞄を手に取る。
『もう出るの?』
「あぁ、寝坊助を起こしに行かなきゃいけねーからな。」
『あ、ねぇ。お弁当の事なんだけど…よかったら学校に届けようか?』
「え、まじ?」
『あ、えっと…迷惑じゃなければなんだけど……』
すると大きな手がくしゃりと私の頭を撫でる。
「めちゃくちゃありがてぇ。里紗の料理、うめぇし!」
『なら、学校に着いたら連絡するよ…ってスマホ使えるのかな……私…』
何故か持っていたスマホ。
『LINEしてる?』
「おー、ならおれが見せるから読み取れ。」
黒尾のQRコードを読み取る。
ここでもLINEできるんだ…
そんな小さな感動と抱きながらLINEを交換した。
「学校まで少し説明するから…里紗、一緒に来い。」
『あ、うん!!』
お皿をさげ、急いで彼の元についていく。
「行ってきます。」
『行ってきます!』
そう言って2人は外に出たのだった。
「な、何で12:00なのに人がこんなに出てくるの…!?」
音駒高校から出てくるのは男女問わず学生達だ。
様子を伺っていると、
里紗「鉄朗…!」
今から部活をするかの如く黒のTシャツにジャージ姿の彼を見て驚く。
「おーって、何でそんなとこにいんだ?」
『いや、高校生がいっぱいで…』
「お前も一応高校生だろ。」
冷静に突っ込まれる。
『でも何で?学校は?』
「あー今日、テストだったから午前で終わり。」
『そうだったの!?』
「おう。」
淡々と話す彼の様子からしてテストは問題なく出来たようだ。
『あ、お腹すいたよね。これが鉄朗の分。これは研磨くんの分。』
「バレー見てくか?」
『え、行ってもいいの…?』
「おう」
『なら…見て行こうかな。』
そう言って付いていく。
「あ、クロと……里紗さん。」
『あ、研磨くん!これ、研磨くんの弁当!オムライスなんだけど…食べられる?』
「…作ってきてくれたの?」
『うん、だってお昼無かったし。』
「…ありがと。」
嬉しそうに小さくそう言う。
「クロ、みんなもう先に食べてるって。」
鉄薄情な奴らだな。ま、そうなるとは思ってたけどな。」
そして着いたのはバレー部の部室。
『…私も居ていいの?」
「問題ある?」
「…ないんじゃない?」
「てことで。」
にこやかな笑顔でそう言う彼。
あまり興味がなさそうな研磨。
本当大丈夫なのかな…
なんて思いながらドアを開ける彼の背中を見る。
「やっと来た。あれ?お弁当なんて珍しーな。」
「おー、これ作ってもらった。」
「は!?誰に!」
「里紗さんにだよ。」
2人の背中で全然中が見えないが、何やらシーンとした雰囲気。
「え!?彼女ですか!?」
「黒尾さん、彼女いたんですか!?」
これは非常に不味いんじゃ…
そんな事を思っていると
「そーだけど?」
そんな問題発言が聞こえた。
研磨は呆れた顔をしている。
『ちょっとまって、鉄朗!?』
思いっきり声を出してしまい、部室内がまた静かになる。
「美女が鉄朗って言った…」
「俺、黒尾さんのことを下の名前で呼べてる女子見たことないです。」
「…世の中やっぱりイケメンが勝ち組なのか。てゆーか、何その可愛い子。いつゲットしたわけ。」
そんな彼らの声を聞きながら笑いをこらえる黒尾。
「…里紗さんはクロの彼女じゃないよ。」
「え?」
研磨が視線を送ってくる。
そんな彼にありがとう。と心の中で呟いて言った。
『えっと…事情により一緒に住むことになった森 里紗です。』
そう言うと、耐えきれなくなったのか笑い出す黒尾。
『ちょっ…笑わなくてもいいじゃない!』
「必死な里紗が面白くて。」
『ひどっ…!』
笑いながら私の頭をくしゃりと撫でる。
「まあ、そういう事だ。」
「は!?どーゆー事!?黒尾、ちゃんと説明しろよ!」
「あ、こいつが夜久。こいつは山本。犬岡、あれはリエーフ。」
リ「あれって酷いですよ〜!!!」
「え、俺の質問はスルーするの?」
何だかワイワイと騒ぎ出す。
「あーうるせえ!さっさと食べて練習!」
一喝する彼を見てキャプテンなのかな…?なんて思った。
「…里紗さん、座る?」
『ありがとう。あと、さん付けなくて大丈夫だよ。』
「…分かった。」
研磨の隣で座っているとその隣に黒尾も座る。
『鉄朗、キャプテンなの?』
「おー。」
『やっぱりそうなんだ…すごいね。』
「そうか?お前の作る飯のほーがすごいと思うけどな。」
『そ、そんな事ないよ…』
「…里紗のご飯、美味しかった。ありがとう。」
恥ずかしそうに言った小さな声だけどハッキリと届いた研磨の声。
どうしよう…可愛すぎる研磨くん……
そんな事を思っていると、
「研磨が褒めるなんてなかなかねーぞ。」
と言い、頭をポンポンと撫でた。
「おーし、練習すっぞー。」
「えーと…見ていくの?」
『お邪魔でなければ…いいですか?』
「全然いいよ。ちょっと煩いと思うけど。改めて…俺は夜久 衛輔。黒尾と同じ学年。よろしくね。」
『こちらこそ!夜久くん!あ、一応同じ年なんで敬語は大丈夫ですよ!』
「そーゆー里紗ちゃんが使ってるけどね。」
『そうだね…あとちゃん付けは恥ずかしいです。』
「おーい、行くぞー。」
『あ、待って鉄朗!』
何だかんだ言いながらも待っててくれる。
そんな姿を見てやっぱり出会えて良かった。そう思うのです。