風花に爆ぜる


「デイダラ少年、これ君のじゃない?」
「おー」

床に落ちていた小鳥のような形をした粘土を見せると、デイダラ少年はこちらを見ることもなく生返事を寄越した。拾ってやったのになんて奴だ。
もう一度、今度は近付いて渡そうとした時、黄色い髪越しの動作を見て、慌てて真上に放り投げた。手から離れて数秒もしない内に派手な音を立てて爆発したそれに、思わず青筋が立つ。

「アンタやっぱやるな、うん」
「少年、流石に怒るよ」
「だから少年って呼ぶなよ!うん!」

彼は彼で怒っているが、それとこれとは話が違う。危うく爆破される所だったこちらの身にもなってほしい。
デイダラくんにバレないように袖の中で印を結び、彼の髷目掛けて水の塊を振り落とす。既の所で避けたものの、それなりに水を被った彼は濡れた髪を振って怒りを露わにした。

「何すんだ!」
「ついさっき人を爆発しようとした人間が言うセリフかなぁ、それ」

手を身体の前に置いて臨戦態勢の少年に、ため息一つ。
年は大きく違わない筈なのに、二十歳の壁は大きかった。時々デイダラくんのノリには付いていけない。年下と関わることのなかった私にとって彼の扱いはとても難しかった。
今度サソリさんに扱いのコツを聞いてみようかと思い、しかし彼は彼で面倒な人であることを思い出して嘆息した。

「人の顔見て二回も溜息付きやがって、喧嘩売ってんのか?うん?」
「何で君はそう喧嘩っ早いかなぁ」

イタチくんを見習いなさいと、喉元まで出かかった言葉をすんでのところで飲み込む。これ以上言えば今度こそ爆破されかねない。
年の近い彼らは、はたして仲が悪かった。主にデイダラくんがイタチくんに突っかかっているのだが、私の預り知らぬ所で何かがあったらしい。
二人共真逆の性格だもんなぁと、野良猫の喧嘩を遠巻きに見るような心持ちだった。
今にも噛み付かんばかりの殺気を纏うデイダラくんに苦笑し、彼の足元に散らばる粘土細工を一つ、手に取る。

「器用だよね。これとかすごく可愛い」
「……だろ!?これの良さがわかるなんて、見る目があるな、うん」

コロッと機嫌を直したデイダラくんに「こいつチョロイな」と思ったのは致し方ないことだと思う。あれやこれやと自作の粘土を語る彼を尻目に、鳥をデフォルメした小さな粘土細工を弄ってみた。
細かな装飾があるわけでも、本物のように細やかな羽毛が生えているわけでもないのに、それは確かに鳥だった。

「こんなに可愛いのに、爆発させちゃうのは勿体無い気がするなぁ」

ポツリと呟いた言葉は、無意識の内に零れた本心だった。
散りゆく一瞬の美を是とする彼にまた何か言われる、と恐る恐るデイダラくんを伺うと、しかし彼は大きな瞳をさらに大きくしてこちらを凝視している。
はて、と首を傾げていると、ぼぼぼと音がしそうな勢いで彼の顔が赤く染まり、今度はこちらが目を丸めて彼を凝視する番だった。

「ももも勿体ないも何も、芸術は爆発だ!散りゆく一瞬の美こそが芸術なんだよ!うん!」

予想通りの文句を適当に流す。デイダラくんにしてもサソリさんにしても、二人の芸術は魅力的だと思うが如何せん過激思想過ぎる。「皆違って皆良い」なんて言葉を送りたいが、火に油を注ぐだけなのは目に見えていた。
手に持っていた鳥を宙に放ると、控えめな音を立ててそれは爆ぜた。パラパラと舞う欠片は、咲き終えた花が散る様に似ている。

「そっか、確かに花は散り際が綺麗だね」
「ようやくわかったか、うん」

つんとそっぽを向きながらも満更でもない様子のデイダラくんは、自分の感情をさらけ出していてとても素直で眩しい。
一瞬の美も永遠の美も、どちらも今があるから美しいのだと、ひっそりと思った。



(170712)