生誕に祝す


「おい」
「はい」
「何か俺に言うことはないのか」
「帰れ」

マダラの方に見向きもせず、薬草を煎じながら返していたら、火の粉が飛んできた。危うく前髪が焦げるとこだった。流石にイラっとしたのでマダラに向き直ると、隠そうともしない、不機嫌そうなむすっとした顔とご対面。わかりやすい。

「何か御用ですか?うちはの頭領様」
「……今日は何月何日だ」
「メリークリスマスイブ」
「本気で言ってるのか?」

いつもの無駄な自信はどこへやら。不貞腐れたような声音を可愛いと思うなんて、私は大分毒されている。
溢れそうになる苦笑を呑み込み、立ち上がり、マダラの前まで行く。
私から近寄るのが珍しいからか、マダラにしては珍しく驚いたようで、近付くと少しだけたじろいだ。

「誕生日おめでとう、マダラ」

頭を包むように抱き締め、耳に口を寄せ囁く。意外と恥ずかしいなこれ。顔を見られないように抱き締めたものの、結局苦しいくらいに脈打つ心臓の音でバレている気がしないでもない。
マダラは驚いてるのか呆れているのか、何の反応もなかった。シンとした沈黙が余計に羞恥心を煽り、とにかく顔だけは見られまいと抱きしめる腕に力を少しだけ込めた。

「……っ!」

腕の中でもぞりと動いたと思えば、首筋にちくりとした痛み。強く吸われたと認識する前に、今度は歯を立てられ、流石に大人しくされるがままではいられなくなった。
マダラの頭を包むように回した腕を少し緩め、しかし逃がさないように首元に肘鉄を一つ。丈夫さが取り柄のマダラは一瞬怯んだだけだったが、それでも私の意図は読めたようで、小さく舌打ちをしながら離れて行った。

「今日くらい良いだろう」
「その言葉何回も聞いた」
「……何の日か、覚えていたのか」

何だってこいつはこんなにも殊勝な態度なんだろうか。素直にならない自分が馬鹿らしく思えてしまう。今日ばかりは甘やかしてやってもいいか、と溜息一つと共に身を委ねた。




盛大に遅刻したけどマダラさんおめでとうございました
(141227)