甘味は別腹
何となく甘い物が食べたい気分だった。そう言えばバターの賞味期限が迫っていた気がする、と冷蔵庫を開けると、何と今日だった。あまり使わない物だから、すっかり忘れていた。
卵も小麦粉も揃っている。久しぶりにお菓子でも作ろう。
「カイリュー、デンリュウと甘い木の実を取って来てくれる?」
任せて!と言わんばかりに力強く腕を挙げるカイリューを一撫でし、大きな籠を渡す。撫でてと擦り寄るデンリュウをハグしてから、2匹は家の裏の実のなる木に向かった。
ぼくもわたしもと泡立て器やらボウルやらを咥えて足元をくるくる回るエーフィ達に、思わず苦笑が漏れる。前にあちこちひっくり返して全身クリームだらけになったことを、彼らは覚えてないようだ。
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「わぁ」
「これはこれは……」
帰ってきた2人は、リビングの机やキッチンを埋め尽くす焼き菓子を見て、ドアから動けずにいた。
キッチンから顔を出し、ぽかんとしている2人に、またも苦笑い。
「あはは……作り過ぎちゃった」
「なまえ、お菓子屋さんになるの?」
「これは全部、なまえが…?」
「最初はタルトだけだったんだけど、皆からの熱いリクエストがですね」
クッキーやマフィン、マドレーヌなどなど、私は勿論、ノボリくんとクダリくんの手持ちの分まで作り出したらこの有様である。部屋中焼き菓子の香りで充満していて、クダリくんの言う通り、お店でも開けそうだ。
「これがクダリくんので、こっちがノボリくんのね」
「わーい!凄くたくさん!」
「こんなに良いのですか?」
「ポケモンも食べられる物で作ったから、皆の分もあるの」
「そうなの!?じゃあ皆出ておいでー!」
「え」
「クダリまさか…」
軽やかにボールを放り投げると、赤い閃光と共にシビルドン、デンチュラ、アーケオス……次々出てくるクダリのパートナー達で、リビングが圧迫されていく。大分広い部屋ではあるが、如何せん鍛えられた最終進化形が何匹も出ると、天井が低く感じられた。
「美味しい物は皆で!」
いつも以上ににっこり笑うクダリくんに、ノボリくんと顔を合わせて苦笑する。
それからクダリくんに急かされ、結局私とノボリくんのポケモンも出したお陰で、リビングは満員御礼。
「後片付けが……」
「まぁまぁ、皆が喜んでくれたなら良かったよ」
「なまえ!これ美味しい!」
「あんまり食べ過ぎると夜ご飯食べられないよ」
「別腹別腹!」
手持ちに囲まれて幸せそうにクッキーを頬張る姿を見ると、こちらまで頬が緩む。飛び付いてくるパートナー達を受け止めながら、幸せだなぁと思った。
こいつらいつも何か食べてますね……
(150408)