非常に残念ながら寝て起きたら風邪が治っていた。…お粥アーンとか薬口移しとかそういう風邪萌えあるあるを易々と逃してしまった。いや薬無しで治っちゃうのか私!?一般人でしょうが!!

「ハァ……………。」
「…そんなにショックだったの?」
「そりゃ!!風邪萌えシチュエーションが…っ!」
「そうかそうか…、残念だったねぇ?」
「はっ……腹立つぅ…!」

当たり前にもう牢屋の中にいないはたけさん。いつもの如く鉄格子先の椅子に座って、意地悪な表情をして笑っていた。……まぁ、もう終わったしまったことには仕方ない。一応、薄っすらとだが風邪ありがとうシチュエーションは貰っ…たようだし(あんまり覚えてないが)。

「はたけさん……」
「はーい?」
「元気になったら暇が再発しました。」
「あー…。」

そうだ。そうなのだ。術を特訓しようにも印を教えてくれないと始まらないので、そういった意味合いを込めて監視員(46)を見つめる。ポリポリと顎を掻きながら、その問題があったか…。と呟いていた。

「外に出たくて出たくてしょうがないけど…はたけさんに言っても困らせるだけですもんね。我慢します。」
「…あれ?駄々こねるかと思ったのに」
「だって今までとっっってもこねたけど出れたことないから。言っても…ね。」

しおらしい私は自分でも気持ち悪いが、実際、事実なのである。はたけさんには随分と迷惑を掛けているし、さすがに私の良心も痛むらしい。少し伸びて肩についた髪で、いかに多く三つ編みが作れるかで遊ぼう。

「………」

どういった視線か分からないものが飛んできているが、それを問うてもどうにもならないことを知ってしまっている。…なんかちょっと大人になった?私(25歳)。あー、今日の夜ご飯何かなぁ。

***

「名前」
「へ」

多分深夜になる時間帯。毎日昼寝をしてしまうせいでいつもの如く起きていた。ら、帰ったはずのはたけさんが鉄格子越しにいた。…急に現れるって忍の流行りなの?

「起きてた?」
「え、あ……はい。余裕で」
「そっか。元気だね」
「…ま、まあ…。て、あの…家に帰ったんじゃ「出る?」
「え?」
「外。行く?」

な………にを言ってるのかこの人は。微笑んでくれてはいるが、こちとら驚き過ぎて目が点。そんな間抜けな顔が面白かったのか、笑いながら鉄格子のドアを開けた。

「そんなに驚くことか?」
「お…驚きますよ!そりゃ!だって…今まで何言っても絶対ダメだったのに」
「そうだね。まー、たまには?」
「たまにはって……。え、本当に良いんですか?嘘とか言わない?」
「言わないよ。そんな酷い嘘は流石につかない。」

この言葉に確信を得た私は、バッと立ってなぜか敬礼。テンション上がり過ぎたせいだな。ぜひ!!と叫んだ私に、いつもの微笑みをくれたはたけさん。じゃあ行こうか、と言われて謎に腰に手を回される。

「え、え何この素晴らしい展開」
「…まぁ、そう言ってられるのも今のうちかな」
「え、ちょ、どうい……うわあああぁぁあ!!……」