「そうか…限界が来てんのか…。」

名前が静かに気を失ってしまい、寝静まってから俺はナルトの元に報告に来ていた。今日はたまたまシカマルもいたが、話を聞いてピンときたらしい。悩ますように頭を掻いた。

「術に掛けられてっかもしんねぇけど…一般人なんすよね?」
「多分ね。チャクラの量も、忍耐力も…反射神経も忍には程遠い」
「んーーー!なんとか出してやりてぇんだけど…上が聞かねぇんだってばよ…。」
「まだ"アレ"のこと言ってんのか?」
「ああ…」

シカマルの言う、アレ、とはもちろん予言の書である。そもそもどこ発信の誰が書いたものか分からないそれを、なぜここまで相談役達は気にするのか。重要書類を保管する火影の書庫のあったからか?溜息が聞こえる中、ナルトがバッと顔をあげた。

「元はと言えばさ!!カカシ先生がさ!!あんなもん見つけるからさ!!」
「いやぁ…俺も見つけたくて見つけたわけじゃないんだって」
「カカシ先生が六代目の時には何もなかったのに…。なんで今なんだってばよ…。」
「…」

そこも引っ掛かるところだ。あんな何年もの前の巻物を、どうして今回の件と結びつけたがるのか。何か知ってるなら教えてくれればいいものの、そこは口を割らないのがあの人達らしい。

「それに、また出たんだ」
「なんだよ」
「行方不明者だ。今回は5人。みんな一般人の男だ」
「またかよ…」

ナルトの言葉に反応したシカマルは頭を抱えていた。関係はないかもしれないが、確かにタイミングが悪すぎる。それと関連付けたくなるのも分からなくはない。だが、名前はもう限界だ。

「とりあえず、なるべく早く処分を決めてやってくれ。これ以上はあの子がもたない」
「そうだな…。3日以内、で何とかなるか?カカシ先生」
「頷くしかないんでしょ?まあ頑張るよ」
「すまねぇな、」

俺はそろそろ戻るよ、と告げて部屋を後にする。足が向かう先は家ではない。名前のいる地下だ。今、あの子を一人にしたらかなりの確率で自殺する。それだけは、どうしても食い止めたかった。

…そういえば彼女の監視員になってから、少しずつ家に帰らなくなった。あいつは、元気だろうか。と思うのに。思う、だけだ。身体の向かう先はブレずに変わらなかった。

***

「…六代目、入れ込みすぎじゃねえか?名字名前に」
「え?そうか?俺にはただ心配してるだけに見えたんだけどな」
「ナルト、お前そういう思考だけは変わんねえなぁ…」
「は!?どこが「六代目、すげぇ焦ってたろ」
「え?そうか?」
「…ったく。そりゃ、監視対象を死なすわけにはいかねぇが、名字名前の元に影分身を置いてこっちに来てる。家にも全然帰ってねぇらしいしな。…そこまでするか?普通」
「……まぁ、言われてみればそうだけどよ…。」
「それが普通の女ならまだしも、どこの里にも戸籍もねえわ、記憶もない奴だ。入れ込み過ぎんのは危険だと思うんだが…」
「…もう遅ぇ、ってか?」
「ああ。多分な…。一番厄介なのは、本人の自覚がねぇってとこだ。何も、なけりゃいいんだが…」
「カカシ先生に限ってんなことねえって!…多分。」
「だと、いいが……。」