「おはよう」
「あー…おは……、って顔!?」

ん?と微笑むはたけさんは昨日ぶりで、朝目覚めたらいつもの定位置にいた。朝イチ戻ってきてくれたんだ、と思うと嬉しいがそれよりも衝撃なのは彼の顔だ。喧嘩にでも巻き込まれたかのごとく、所々腫れていて痛々しい。

「いやぁ、ちょっと転んでね。」
「いや…転んだごときじゃそんな顔には…。それに顔から転びますか普通…。」
「飲み過ぎちゃって」
「の……み過ぎ…ですか……。」

至って何にもない!と微笑んだ表情で訴えてくるも、全くそう見えない。絶対殴られ…てる。はず。でもそれを隠すってことはなかなかのプライベートってことなのか。…でもはたけさんは無駄にスッキリした顔をしてて、気のせいか嬉しそうにも見える。

「名前」
「…はい?」
「今日は何して暇潰そっか。」
「…こ、こわっ……!」
「え何が?俺?…あ、顔?」
「いや全部です…」
「なんでよ」
「も…もう言葉には表せないといいますか…!ちょ、近寄って来ないでください!!」
「え?中入って来いって?大胆だなぁ名前は」
「言ってない!!!」

***

通称、はたけさんボコニコ(ボコボコなのにニコニコ)事件から数日。結局本当の理由は教えてくれなかった(しつこく聞いたが教えてくれないので折れた)。まあ、顔の腫れも消えてちょっと変なテンションは落ち着いたようだ。そして今日は何故か外がずっと煩いので、何でも屋(はたけさん)にあの、と声を掛ける。

「今日、何か騒がしいですけど…」
「ああ、今日は縁日でね。屋台の準備か何かじゃない?」
「縁日…」
「木の葉最大のお祭りだからね。夜には花火も上がるし…そろそろ人で溢れかえるんじゃないかな」
「へえ…。楽しそう…。」
「興味あるの?」
「………べ、別に。」

ニコニコニコと笑って、ふーん。と言ってくるはたけさんが腹立つ。見破られてる感すごい。…だって、だって!!縁日なんてそんな楽しいイベント!!はたけさんと行けたら、とか思うけどこの人はもういい歳の人で。多分興味ないだろうし。そもそも私が行きたいとごねても、外に出られない身ですので。ええはい。

「んー、行く?」
「………はっ?」
「いや、行きたいんでしょ?なら、行く?」
「え…いや……行きたいですけど…。逆にいいんですか?」
「多分ダメだろうね。…普通は。」
「え?」

影分身の術、とはたけさんが唱えた瞬間、ボフッと二人のはたけさんが登場。……お、おおお!!三人もはたけさんいるんですが逆ハーレム!と目をキラキラさせていれば、気付いたら鉄格子の中に入ってきていた皆さん。

「いやいやここ牢屋…」
「監視員ですから。」
「いやぁ、生名前可愛いね〜」
「食べちゃいたいね。」
「いや三人一気に話さないで!?」

私の言葉に、三人のはたけさん同士でお前が黙れ、の言い合いをしている。いやなんか面白い絵図だけど。よく聞けばすごいこと言われてたような気がしたけど!てかよく見たら目の保養パラダイス…。ガチの逆ハーレム!!そんな頬を染めてうっとりする私(?)を背に、次はじゃんけんをし出すはたけ様×3。

「ハイ。俺の勝ちね」
「お前本体なんだから…たまには分身に譲ってあげようとかいう気ないの?」
「いや、だから平等にじゃんけんしたでしょ」
「裏で仕組んでたんじゃないの?俺ら(分身達)が負けるように。お前、そういう狡いとこあるからね」
「…お前達本当煩いよね…。で?俺役と名前役は決めたわけ?」
「は?それお前に関係ないでしょ」
「名前役の方は、名前のチャクラちょっと貰っといた方が都合いいと思うけど」
「「…!」」

そこから分身のはたけ様達がじゃんけんしてて、勝ったらしい右側のはたけさんが満面の笑みをして(負けたはたけさん側は灰になって)いた。…ちょっと恐いぐらいに。

でもそのはたけさんがだんだんと近付いてくるから、反射的に一歩ずつ離れていく私。…だったが、トン、と背中が壁について逃げ場がないことを知る。顔を上げれば、迫ってきていた分身はたけさん。

「なんで逃げるの?名前。」
「い…いや…、なんででしょう…?」
「でもちょっと怯えてるのも可愛いね。」
「…!」

いや、そう言うあなたが恐いからです。

なんて言えない!!と、泳がせた視線。けれど気付いたら顔の右側にはたけさんの手が付かれていて。はっと意識が戻る。

……これは俗に言う壁丼では!?あの有名な女の子の夢であるアレ!?しかもはたけさんから?!テンション上がりすぎて丼にしちゃったじゃないか。夢小説的展開ありがとう壁ドン。生ドン。はたけドン…!!

「ハハ。いつもの名前だね」
「…エ?」