絶賛壁ドンされ中の幸せ野郎な私、名字名前ですがなんとまさかの展開。聞く話によると、なんと今からはたけさんと一緒に縁日に行けるんだそうです!!(今までの幽閉は嘘だったのか何だったんだって話にもなるが)それにあたって外出中は、はたけさん分身×2がはたけさんと私に変化して、ここ(牢屋)にいてくれるとのこと。そして、今…

「俺が名前に変化するから、チャクラを少し欲しいんだ。その方が変化の質も上がるからさ」
「あ、分かりました。チャクラ…を、お裾分けしたらいいんですね?」
「そうそう。で、その方法なんだけど…キ「調子に乗るな」
「…ったく。心狭いねえ。」
「?」

ドンはたけ(私に壁ドンをする分身はたけさん)の言葉を遮ったのは、どうやら本体らしいはたけさん。呆れた表情で私に振り返ると、

「…え」

ドンはたけさんは自然と私に近寄ってきているではないか!…鼻と鼻がこんにちはし掛けている。ドンからの鼻キスとかもう王道路線まっしぐらありがとう…!!!そんな私を余所に、くちびるを親指で撫でられる。ぞく、と何かがふるえた。

「…おい、やりす「ここはダメなんだって。あいつの心…蟻並みだと思わない?」
「あ……、…あ、り…?」
「だからここで我慢するよ」
「!」

おでこにチュッと小さな音を落とされた時には、ドンはたけ越しに本体を押さえる分身はたけさんがいた。やいやい言い合っていたので、ドンはたけと共にそちらに顔を向ける。近すぎだ!俺だってまだしてないのに!、お前奥手だもんね、うるさいよ分身!…面白すぎる会話である。

ついついドンはたけと二人で笑ってしまった。彼はそれに拍車を掛けたいらしく、私を抱き寄せてくるものだから本体が暴れ散らしていた。どうやらドンはたけはSっ気が酷いようだ。そんなこんなで幸せラブはたけ複数ドリームを終えたのである。

*

「しかしあいつら酷かったな…。」
「でも全部はたけさんでしょ?」
「……そこが何とも言えないとこだけどね。」

夕方。無事縁日に来た私達は、数十分前の話に花を咲かせていた。空が明るい時に外に出られた幸せと、隣にはたけさんがいてくれる幸せ。しかも浴衣まで着せてくれて(強引にはたけさんも着せた)。ただ、私達はお面を付けている。いや、幽閉しているはずの女がまさか監視員と二人で縁日なんぞ、バレた日にははたけさんの何かが全部死ぬだろう。だから、お面を付けることに抵抗はなかった。

私はとにかく、はたけさんはお面を付けていようが銀髪ですぐにバレると思うんだが。と、思いつつも私は兎、はたけさんは犬の面を買ってきてもらって付けた。なんか暗部になった気分。あぁ特殊設定欲しかった……!!

「何食べたい?」
「えぇ…!どうしよう!たくさんあって選べ…、あ!!かき氷!」

謙虚ぶろうと思ったのに、私の欲望、純粋。お店を指差してはたけさんの手を引っ張る。本当にお前は、とお面の下で笑ってくれている気がした。子どもっぽいのは承知だが、楽しすぎてどうしようもないのだ。

「私はレモンがいいです!はたけさんは?」
「んー俺は良いかな。名前の一口ちょうだい。」
「おおお…!!あの、かの有名なアーンですね!?了解しました!!」
「ハイハイ」

お店の人にお金を渡して、お釣りを貰っていたはたけさん。お面コンビの私達は不審に疑われるのでは…?と思ったが、ここは忍の里。全然余裕だった。しかし面を付けながらの食べ物はツライ…!!でも病院食のような牢屋での食事に比べたら、全然よかったし美味しかった。それに、いつもは鉄格子越しにいるはたけさんだって隣にいる。…彼女には、申し訳ないが。今回だけ許して下さい…!!

「はたけさんっ!」
「ん?……」
「あーん!」
「……俺、そんな歳じゃないんだけどなぁ……。」

とか言いながらお面を少し上げて口を開けてくれるとこ。そういうところだよ。好きだなぁって思ってしまう。一口食べてくれた後、甘…。と声を渋らせていたけれど。しあわせだ。

「あ!はたけさん、金魚すくいしたいです」
「うん、いいよ。かき氷は?」
「食べました!!」
「早いな。そんなに美味しかった?」
「はい!はたけさんと一緒に食べられたので」

そう言うと、やさしい微笑みと共に頭をぽんぽんと撫でられる。ドキドキと切なさが相まって、なんとも言えない感情だ。けれどある意味今しかないから。きっと今日で終わりだから。

「金魚すくい、一緒にしましょうね」
「一緒にしたいところだけど…忍は禁止だと思うよ。」
「え?何でですか?」
「昔、俺の教え子同士で誰が多く掬えるか勝負したことがあって…店の金魚、全部掬っちゃったんだよね…。」
「あ、そっか。そういうの得意そうですもんね、忍の皆さん」
「そうそう。そこから…って感じかな。」

だから俺は見てるよ、と笑ってくれた。私も笑った。

「私が取った金魚、はたけさんにあげますね!」
「そんなに何匹も取れるの?」
「あ、バカにした。掬えますよ、数匹ぐらい!」
「ごめんごめん。じゃあ、名前が掬った金魚は一緒に育てようか。地下だけど…」
「………はい。」

叶わなくても、嘘でも、騙されていたかった。あなたの綺麗で、やさしい嘘に。

「……名前?」
「はい?どうしましたか?」
「…いや、何でもないよ。俺の気のせいだったみたいだ」
「ふふ。変なはたけさん」

ごめんね。気のせいじゃないよ。
…知っているの。私、今日で死ぬんだってこと。