別に何がきっかけで気付いたわけじゃない。ただ、おかしいのだ。今まで頑なに私を外に出さなかった木の葉が、日中に外に出て良いなんて言うはずがない。はたけさんの独断にしては規模が大きすぎる。となると簡単だった。私はこの里にとってきっと不都合な存在なのだろう。そりゃ正体不明の怪しい奴なんて、やっと平和になったこの時代にとって邪魔だ。それでもこの1ヵ月ここで暮らせたのは、きっとナルトのおかげだろうな。

「お腹いっぱいになった?」
「はい!やきそばも美味しかったです!」
「確かにあれは美味しかったね。ソースが良い感じだった」
「ですよね〜〜!ぺろりでした。」
「食べるスピードがね。」
「一瞬でした。」

アハハと笑いながら、はたけさんに付いて歩けば気付くと少し高台まで来ていた。聞けば花火を見るには穴場スポットらしい。さすがイケメン。歳を取っても廃れない。小さなベンチがあって、誘導されるようにそこに座る。気のせいか、複数の視線を感じた気がした。

「花火見るの、久しぶりです」
「…そうなの?」
「はい。最後は、3年前に会社の帰りに偶然。だからちゃんと見るのは、きっとすごい久しぶりなんです。」
「……そっか。一緒に見るの俺でよかった?」
「もちろん!夢みたいです。あのはたけカカシさんと一緒に見られるなんて」
「…名前 ?」

名前を呼ばれた瞬間、花火が打ち上がる。ドーン、と大きな音を立てて綺麗に散っていく光。…多分私は、この風景を一生忘れないだろう。目に焼き付けるとはきっとこのことだ。隣に置かれているはたけさんの手に、自分のを遠慮がちに重ねた。驚いた目をした彼の視線が、花火を見上げる私に突き刺さる。

「…もしかしたら、全部、最後まで夢!ってオチがあったとしても…幸せでした。」
「……どうしたの」
「夜中に外に連れ出してくれて、すごい嬉しかった。パニックになったとき、一緒に寝てくれたこと、も、夢小説大好きな私にとってはご褒美でしかなくて」
「……、もういい」
「分身の術とか、暑くて死にそうだったりとか、何気ない日々も全部はたけさんのおかげで幸せでした」
「もうい「私、」

最後ははたけさんの手で終わりたいです。と口を開き掛けた瞬間、突然背中の何ヶ所かに重く鈍い痛みが走った。咄嗟のことに訳が分からない。

「っ名前!!、」
「……っ、………ぁ…」

はたけさんに叫ばれて、痺れていく手が背中の痛みの原因を探す。…触れたのは、鋭利な鉄。多分、これはクナイだ。指に何か付いた気がして目の前で見つめると、真っ赤な血だった。ひゅっと息を飲む。傷口が脈を打つように、痛みが増した。

そして理解する。…私は誰かに投げられたクナイで背中を刺されたのだ。理解すると意識が持って行かれそうになって、必死に手繰り寄せる。

「…随分気が荒いのが居るみたいだね」
「………、…」
「大丈夫か」
「…」

はたけさんが私を庇うように立っているのが分かる。質問もうっすら聞こえたが、軽く頷くだけでいっぱいいっぱいだ。痛みが酷すぎて正直、彼が何を話しているのかもよく分からない。虚ろな目で意識を保つのが必死だ。そんなぼんやりとした景色の中に、突然人のような黒い影が見えた。

「六代目…それは何の真似です」
「…君に見えてる通りだよ」
「あなたもこちら側でしょう…予定通り名字名前をここに連れてきた」

どうやらはたけさんはその人と会話をしているらしい。…私を刺した人だろうか。でも会話が途切れ途切れにしか聞こえない。それほどまでに尋常でない痛み。

「それは違う。俺は連れてこいと言われただけだ…」
「なら里に背くと!?火影であったあなたが!?」
「お前……、ミリンだな。」
「…何故?」
「今のは俺と名前の邪魔がしたいだけの殺傷に見えた。それに、花火の終わりが合図じゃなかったのか?」
「……」

意識が朦朧とする私でも分かる。この人は………きっと、はたけさんの彼女だ。ここに来て感じた複数の視線は、この人のものだったのだろうか。

「…ここでその名を呼ぶのはルール違反ですよ、カカシさん。」
「悪いね…。君が本当に暗部だって思いたくなかったんだ」
「…知ってたんですね」
「少しはね」

視界不良の中、なんだか重々しい雰囲気を感じ取る。何を話してるか聞きたいが、もうそろそろ限界だと思う。咳が急に込み上げてきたが、口から出たのは血だったから。だからこそ余計思う。

……その会話、今必要か……?
(マジで死にかけ)