※観覧注意(自傷行為有)
***以降は読まなくても大丈夫です




分からない。けれど聞いた瞬間に感じたことのない焦燥感に駆られた。無くしてはいけない、と俺の何処かの何かが叫んでいる。気付けば、必死に探していた。自分でも戸惑うほどに。…何故だ?ほんの一瞬、話しただけの女の子だと言うのに。別に好みでもない、至って普通の子じゃないか。

「…」

里中を駆けながら、あの時を思い出していた。つい最近だ、お店にその辺の女と寄ったとき。俺と目が合って涙を流したあの子。正直、適当に遊んだ子かと思っていた。思い出すも、そうなった子が多すぎて分からなかった。とびっきり美人だったり、思い入れがない限り覚えてない。…我ながら呆れるが。

けれど、何故か気になった。どうしてか分からない。それでも気になるものは気になるのだ。後日、あの店に行けば当然彼女はいて。聞いたのはただの興味だった。

「…おつり「この前、泣いてたよね?」
「………え」
「知ってるの?俺のこと」
「…!」


彼女はすごく焦っていて、あからさまに不審だった。何か隠しているのはすぐに分かった。でも同時に、嬉しくなったのだ。この子と関わりが出来たことに。…そう思っている自分が、不思議で堪らなかった。

その後あげたあのジュースも、何故かすぐにレモン味を手に取ったことも、何故か分からない。…分からない、知らないのに、俺は知っていた。そう思うくらいに自然な流れだったからだ。

「……ま、聞くまでだね」

少し遠くに見つけたその気配に、小さく呟いた。…嫌な匂いが鼻についた気がして、足を速めた。

***

「………厳しい……なぁ……。」

あれからよく考えて、考えて、…至った結果は、もう、私が死ぬ、しかなかった。やはりどうしてもはたけさんに生きててほしくて、でも大蛇丸にこの眼を差し出すわけにもいかない。…この眼を持ったまま、私がいなくなるしか思い付かなかった。また他の人間にこの眼が移って、同じことになるかもしれないとも思ったけど。かなりの人数で実験しても効果が無くて、やっと私で現れたぐらいなのだから。その可能性もきっと多くはないはずだ。

じゃあハイ!死にましょう!なんて出来るわけもなく。どうすればいいか仕事も行けずに悩んでいたわけで。色々考えて家でそうするのは家主に迷惑が掛かるから、人に見つかりにくい森の中で行えばいいと至った。もう辺りも暗いし、森の奥まできた。後は、忍ばせた包丁で首を切れば良いだけで。…でもそれができない。

「ビックリするぐらい痛いんだけど…。」

少し首に刃を立てただけで、酷い痛みだった。少量だけど血も流れたまま。もっと奥まで思い切りいかないと、多分死ぬなんて到底できない。包丁を持つ手が震えても、私の出来ることなんてこんなものだ。それに、ここで誰かが来て止めてくれるなんてハッピー夢小説での話。ここ、超現実的なんでね。ええはい。

それに、今まで辛いこともたくさんあったが楽しいこともあった。あのカカシさんとちょっとだけどお祭りに行ったりチヤホヤされたり、して…。思い出すと胸が詰まる。この結末は、ある意味悲劇のヒロインみたいな感じでいいじゃないか。だから、…だから泣くな。私。、首に宛てた、包丁がいたい。いたくても、

「…っがん……、がん、…ば「名前!」
「え…」

ぼやけた視界の先に、…待ってはいけない、でも本当は心の奥で待っていた、はたけさんがいた。うれしくて、うれしくて。ちゃんと夢小説っぽいとこあるじゃん、なんてくだけて心が落ち着いた。

「…落ち着いて、深呼吸できる?」
「大丈夫、です」
「うん、よかった…。じゃあ、とりあえずそれ置こうか」

ありがとうございます、と、それは言葉として世界に出たのか分からない。でも、来てくれただけで十分だから。会えて実感し直す、やっぱり生きてて欲しいとちゃんと思えたから。奇しくも、私の背中をいつも押してくれる人。

にこりと微笑んだあと、離さなかったそれを首元で引いた。