意識がしっかりして目を開けると、透明の世界にいた。周りを見渡すも、どんなに先も透明で誰もいない。死後の世界ってこんな感じなのか?天国とか地獄とか信じてなかったからアレだが、なんかここはシンプルすぎて。…ていうか、死後も自我があるってよく考えたら有り得ない話では…? 「そう、お前は選択を誤った」 「えっ?」 ぐるぐる思考が回って混乱しかけたとき、どこからともなく降ってきた声。振り向くも誰もいないし、ていうかさっきのだって喋ってもいないのに返答された感じが怖い。…脳内見透かされてる?は?いやなにこれ。アンタ誰?ここは、一体… 「ここはお前の眼の中だ」 「は…?」 「そして私はお前の眼だよ。名字名前」 ……ファ、ファンタジー…!?いや、眼の中って!私死んだのに眼の中にいるの?んでその眼が意識持って喋るの!?いやいやいやどこの怖い話だよ!!…なんて軽くパニックになるも、ふと思い付く。私、あの世界で災史眼を持っていた人だったと。そしたらこのファンタジーもある意味納得… 「できない…。怖…」 「相変わらずお前の脳内はいつも楽しそうだな」 「いつも…って…」 「そうだ。私はお前の"眼"だからな。何でも知ってる」 「……だから心の声も?」 「ああ。手に取るように分かる」 「ホ、ホラー…!!」 眼ごときに思考読み取られてたまるか!!と思うが、災いの眼なんだからアリなのか?こんな非現実的な…。だって私の眼が私と会話してるって!!恐怖!!それにここ眼の中だって!!……死んだ後に眼の中で眼と話す私って…。もう疑問しかない。なんじゃこりゃ。いや、その前に 「…私、死んだんじゃ?」 「そうだ。お前はあの男を思って自ら命を絶った…。だがそれは正解ではない」 「正解じゃない、って…」 「だからお前を連れ戻した」 「は?」 どこからともなく聞こえる声に、思わず漏れた声。最善…とは言い難いかもしれないが、結構悩んで出した結果で、全てを守るにはこの方法しかなかった。…でも今の言い方だと、他に最善策があるってことなのだろうか。てか連れ戻したって何!?私、死んで… 「お前は死んだ。でもまだそちらの世界に渡っていないだけだ」 「…あなたが連れ戻したから?」 「そうだ」 「……」 そんなこと出来ますか普通。出来ませんね、ええはい。…あ、そうかあなた眼の神様とかですか?そうだ、伝説の眼だわぁって大蛇丸乱舞してたもんね有り得る。でも、だからって生死を弄んでいいわけは…。と思ってハッとした。私、前の時代で死んだのにこの眼のおかげで無傷になってた。 「本当に死にたかったのか?」 「…それは」 「三度も助けてやったというのに」 「え?…」 三度、という言葉に引っ掛かった。ミリンさんが言うには、異世界を経験した人間に稀に現れる眼だと言っていた。だからはたけさんの時も、今回も分かる。もうこちらの世界に来ていたから。でも初めは?元の世界で車に轢かれた時は、まだ異世界を体験していなかった。それは、……? 「お前はたまに勘がいい」 「…心の中覗かないでよ。てかたまにって失礼!」 「まあそう言うな。お前の求めた答えをやる」 「!…、教えて」 「お前は元の世界の頃から"私"を持っていた。あの蛇などのせいではない。これは必然だったのだ」 「え、えぇ…?」 いやいやいやまさかのトリップ必然説!!?初めは特殊設定無しで凹んでたけど元々持ってたのねえげつない特殊設定!!なんてテンションが上がったりもしたが、逆にお前のせいで波乱万丈過ぎるんだよと愚痴りたくもなった。私の"眼"として私の人生見てたなら特に!!… 「そう言うな…お前が"私"を完全体にし、そして自覚がないと意思疎通ができない」 「ならもっと早くしてくれたら!!…三度目の死は体験しなくても良かったかもしれないのに、」 「…それはすまない。お前を侮っていた。本当にやるとは思っていなかった」 「クソ眼め…」 「口が悪いぞ」 腹が立つが、既に受け入れ体制になっている。この世界に来て、ぶっ飛んだことも意外とあるなんて学習してしまったせいだ。もう、この伝説の眼が喋るとかその世界にいるとか、悪い夢ならいいが内容がはっきりし過ぎているので多分違う。ならばもう、特別設定を楽しむしかないじゃないか。それに今、死ぬのを止められたというのなら、多分… 「そうだ。お前は"私"を正解しなければならない。」 「……正解すればどうなるの」 「お前の望む通りになろう」 「ヒント」 「アホか。与えられん。自分で辿り着かなければこの悲劇は繰り返されるぞ」 「…ですよね。何回間違えられる?」 「次は無い。三度も助けてしまったからな。ただ普通に死ぬぞ」 「………カオス!!」 伝説の眼のくせに!!たった三回かよこんちきしょう!!…なんて思ったがそもそも三回も助けてもらっていること自体が奇跡なのだ。ごめん調子乗った。…しかし、私が普通に死んだらアンタはどうなるんだ。また別の人間に転生するのだろうか。 「お前の元いた世界で転生するだろう。そしてまた同じ運命を辿る」 「……それはちょっと可哀想」 「お前は特殊設定有りで喜んでいたでないか。皆そうではないのか?」 「うーん…。皆はね…ちょっと違うからね…」 「ならばお前で正解するんだな、"私"を」 「…なんかちょっと上から言われてるの腹立つけど頑張りゃいいんでしょ頑張りゃ!!」 …て、啖呵を切ったはいいがどこで何頑張るんだ私?と不意に現実的になる。まさか前の世界に戻ってやり直し!とか言われたり?まあどこからやり直しかにもよるがそれだけは嫌だ。最強にご免だ!だって好きすぎて思考が歪む原因のはたけさんと、それを弱みにして脅す大蛇丸いるし。あなたのいう正解まで辿り着ける気がしな 「その通りだ」 「は?」 「お前を前の世界に戻す」 「……い、いやいや待て「そこからやり直せ。そして正解して"私"に勝てばいい……」 「い、いやいやまさか………え、ウソ」 透明だった世界がグニャリと歪んで壊れ始める。え、何これウソ死亡フラグじゃんどーすんの!?私が生きてきた世界とかじゃないとゆっくり考えて寝れもしませんぜ?!なんて反論チックなことを思ってみたが無視された。…いやこういう時こそ心の声読み取れよ!!なんて思いも虚しく私はそこから消えた。 ← |