「キッチンでする人がいますか……」 「ノリノリだったくせに」 「ち、違いますあれは…!」 「俺のシャツだけ着てたのに?」 「ぐっ…」 「ぜひって受け入れてくれたのに?」 「グウッ…!すみません私が悪かったです!!」 ハハハ、と笑うはたけさんと手を繋いで歩くのは里の中。あの後…まあ、かくかくしかじか、しまして。現在15時前です。私の服とか色々買うなんて勿体ない!と抗議したが口論に負け、結局買いに来ました。ただ、絶対(彼の隣は)目立つので、キャップ深く被って顔面隠しながらだけど。だってそれなのにこの視線の数はヤバイ。 「……はたけさんが食べた女の子の数ぐらいですね」 「え?」 「この浴びる視線の数、」 「こんなに少なかったかなァ…」 「怖っ」 「ハハハ」 あながち嘘ではないだろう。だってこんなに完璧な人だもの、ワンナイト大歓迎でしょう!!理解していても勘違いさせて、多数の女性を泣かせてきたんだろうな〜〜。はぁ。分かっていても憎めないことが、この男の一番ずるいところである。 「名前、ここ」 「え?」 「絶対似合うのあると思うんだよね。」 「……いや、ここは…「入るよ」 「えぇ…」 はたけさんが足を止めたのは、かわいい女の子が好きそうなお洒落な雑貨屋さん。服とかも置いてあるみたいで、なんでも揃いそうだ。…けどなんでだろう、物凄いお金がかかりそうな店のニオイがする。それに女慣れ感が半端なくてイヤだ…と顔で訴えても聞いてくれる人じゃありませんでした。 *** 「……買い過ぎじゃないですか?」 「そう?もっと買っても良かったぐらいだけど」 「…金銭感覚?」 「狂ってません。」 いや狂ってます。と、すぐツッコミ返した私は正常だと思う。はたけさんの右手にダンボール箱。左手には買い物袋ふたつ、私はひとつ。…これほぼ全部私の。要らない!って言ってんのに必要だね。しか返ってこない会話を何回したのか。無駄に可愛すぎるワンピースとか、お揃いのマグカップとか、家の鍵に付けるキーホルダーとか。……要る!?こちとら二週間女ですよ!? うんともすんとも言わせずに、お金を払って満足そうなはたけさんを見て、この人は貢ぎ癖があるのでは…?と心配になる程だった。こんな素性も分からん女によく……。とも思ったが、あの時、どこまで未来の映像を見せたのか分からないから、聞けなかった。…この話は、タブーだ。 「夜ご飯、なに食べたい?」 「あ、私作ります」 「…作れるの?」 「…なんですかその疑いの目は」 「いや、そんなイメージ無くってね。」 「どんなイメージですか私…」 「カレーとか失敗してそうな…」 「……「ごめんやめてその目はやめて」 あ?ふざけんなよ?みたいな表情が漏れていたらしい。すぐに謝られる感じも、なんだか他愛もない会話っぽくて思わず微笑んだ。やーーーっと夢小説的甘々感を味わえるのだ、目一杯楽しまねば。はたけさんの左手に、私が持っていた袋を掛けた。なかなか渋い声が聞こえたが知るまい。 「なら、今日は失敗したカレーにしましょうか?」 「……ゴメン。あの…うん、失敗じゃないカレーがいいな。」 「ほら私、ドジだから。上手くできないかもでしょ?それとも…」 「それ、とも…?」 「はたけさんが作ってくれるの?」 「………上手いなぁ。どこで覚えてきたのよ」 いーま!と笑えば、つられて一緒に笑ってくれる。それだけでいい。うんとワガママを言って、うんと甘えて、うんと楽しい思い出を作りたい。… 少し先に見えた青果店のおじさんと目が合って、ムフムフと微笑みながら一人勝手に走る。今日は大根がオススメだよ、と言われて振り向くもまだ遠くにはたけさんはいた。 「はたけさーん!お野菜買いましょう!ほら!大根とか!」 「…大根?それ何に使うの」 「………カレー?」 「どんなカレーにしようとしてんの…」 「だって今日のオススメだって!買わなきゃでしょ!」 「買ってもいいけどまさかカレーに入れないよね…?水っぽくなるよ?」 「なんか料理できる人感がすごくて嫌です」 「ま!名前よりかは出来ると思うよ、俺」 「……じゃあ大根入りのカレーですね?」 「…………ん?」 「だって私より料理できるんでしょう?なら、リクエストも余裕ですよね?」 「いや…待って、常識的にさ「常識に囚われてたら美味しいご飯なんて出来ませんよ!?」 「…すごい力説」 「上手くできたら、ご褒美あげますよ。」 「…何?」 「はたけさんの………を、……………してあげま「おじちゃん大根ちょうだい。一番大きくて美味いやつね!!」 「アハハもうしんどい」 ← |