あの後食べたカレーはびっくりするぐらい不味かった。

「はたけさんをもってしてもやっぱり大根は駄目ですか…」
「そりゃねぇ…。分かってたことでしょ?」

お風呂上がりに口直しのアイスを食べていたら、はたけさんもお風呂から出てきた。タオルでごしごし拭きながら出てくるパジャマ姿はただただ最強だ。しかもマスクなし!!鼻血を今すぐ出せる自信しかない。ソファに座る私の隣に、自然と座ってくれるから何のサービスかと思ったぐらい。

「…でもはたけさん出来そうだったよ」
「俺は反対したけどね」
「でもやってくれた!」
「名前がどうしてもって言うから」
「……アイス食べる?」
「ん」

口を開けられたので、アーンしてあげる。それしかもうこの口を黙らせる方法は無かった。ここの世界のハーゲンダッツもどきもなかなか美味しいし、きっとこれで許してくれるはずだ。…と、思っていたら急に迫られて重なった唇。次の瞬間、甘い何かが流れてきた。…これは、

「アイス…?」
「よくこんな甘いの食べられるね…。」
「…もしかして甘いの駄目でした?」
「得意ではないね、」
「なんで食べたの」
「アーンされたかったから?」
「…バカ?」

甘いのが苦手なのは知っていたが、勝手に知っているだけなので公に言うものではない。なので知らないフリをしたが、これはこれでいいはずだ。気がつくと隣にぴったりくっついて来られて、腰に手が回っている。手慣れてる感すごいしか思えなくてつらい。

「名前」
「はい?」
「もう一口」
「…甘いの苦手では?」
「うん。でも、ほら」
「…?どうぞ」

スプーンに掬ったアイスを差し出すと、ぱくっと食べられる。その効果音が似合う29歳って可愛すぎやしないか…?と眉を顰めるも、リプレイのようにまたすぐ唇が降ってくるものだから思考シャットダウン。流れてくる、甘くて少し温いそれを絡めるように彼の舌が絶妙に動くから、翻弄されるがままの私。そのまま少しずつ押されていて、もう背中にソファがいた。

「……これは」
「押し倒してるね」
「…今から?」
「今から。」
「アイス食べたいの」
「食べさせてあげようか?」
「…それ私が味わう頃には液体だからやだ」
「そもそもアイスなんて液体の塊でしょ」
「待って。アイスに関しては私厳しいよ」

私に跨るはたけさんを押し返して、座る体制に戻ってやった。力の差でさすがに押し倒せは出来なかったが。胡座をかく男女が向かい合うこの辺な図。ムッとした私と、キョトンとしたはたけさん。

「アイスは「名前」
「…なに!」
「……ハハ、なんだかなぁ」
「!?」

アイスについて力説する手前を止められて超絶不機嫌な私の頭を、ポンポンしてくる奴。そして軽く引き寄せられて、それでもまだ小さく笑う声が聞こえて。馬鹿にしてんのかって思ったけど、その概念はすぐ打ち破られる。

「俺もそれぐらい思われたいね」
「…はっ?」
「ムキになるお前が可愛すぎる。」
「……、…キャラじゃないですよ」
「うん、俺も思ってたとこ。」
「もうこの人怖い!」

抱き締められたままなので、背中をポコポコ殴ってみても、ハハハ。と笑われるばかりで、結局はたけさんペースなのが悔しい。

「ホント…俺のこと振り回すのお前ぐらいよ」
「はっ?私でしょ振り回されてるの」
「…自覚なし、と。」
「いやだって!……えぇ?」
「もうなんでもいいよ、」

え、と必然的に出た声は彼の肩に押し付けられる。反論はできなかった。愛おしく抱き締め直されたのが分かったからだ。…こんなに思いが伝わってくることってあるのかってぐらい。少し離されると、顔中にちゅっちゅし出すものだから照れてしんどいんですけど!!

「…も、アイス、」
「……ん、食べていいよ」
「食べっ…、…っ…られない…でしょ」
「…どうして?」
「……、っ…もー…」

顔面から首に下がっていって、吸われたり舐められたりでもう…この人アイス食べさせる気ない。美味しかったから食べたい欲があって、やんわり胸を押し返してみるけど、やさしく手を握られて絡めてくるから余裕で勝てない。

「……ねえ」
「…ん?」
「…また、買ってくれる?」
「もちろん。いくらでも買いますよ、お嬢様。」

気付いたらまた跨がれていて、パジャマを脱ぎ捨てるはたけさんはもう色気色気色気だった。程よくついた筋肉が更に妖艶さを増す。昨日私が付けた、鎖骨下の赤い痕だってそうだ(まあ私はこの二倍付けられているけれど)。本当に色気の塊。目が霞むくらい。こんな人に迫られて断れる人って一体いるのだろうか。いや絶対いない。

「じゃあ、みっつ…」
「ハハハ。かわいい欲張りだね」
「…やっぱりキャラ変!」
「もう諦めたかな。」
「諦めないで…!!」