二週間と言えど、ずっと一緒に居られるわけではない。

「あー、名前」
「んー?」
「明日、任務で朝の4時頃に出るから起こしちゃったらごめんね」

二日目の夜。歯磨きを先にし終えたはたけさんが思いついたように言った。あ、そうか。二日間ずっと一緒だったから忘れてた、仕事という存在。なんたる失態。二週間、ずっと一緒に居れると思っていた。よく考えれば分かるものを、幸せというものは思考を鈍らせる。

「……あ、そっか。そうだね」
「ま、俺としては働かず名前と居たいところだけど…」
「里を代表する人だもんね」
「こき使われてるって言う方が正しいけどね」

歯磨きをさっさと終えると、洗面所で待ってくれていたはたけさんの背中にダイブ。…よろけない所が何とも格好良い。そのままおんぶして、寝室まで運んでくれた。先に私をベッドに降ろして、隣に寝転んでいた。今日はしないのか。…毎日がっついてくれて良いんだぞ?お?

「……思考が丸見えですよ、名前さん」
「え?だって見せてるもん」
「本当にお前って子は…。」
「あ、その前に明日何時に帰って来れそうですか?」
「んー…多分夕方には帰って来れると思う」
「じゃあご飯作って待ってます!」
「良いの?嬉しいね。」
「なに食べたい?」
「ナスのお味噌汁と…サンマの塩焼きと、名前かな」
「2000点満点の返答ですね…!!」
「…俺はベタ過ぎて嫌だったけどね」
「へ?じゃあなんで言ってくれたの?」
「お前が言って欲しそうな顔してたから」
「……こりゃ女にモテるわ。」
「え?」
「いやなんでも」

それ以上聞かれないように身体をはたけさんにくっつけると目が合って、上半身だけ起き上がらせて私に覆い被さってくる。始まりの合図のようなキスは、意外と好きだ。その先をいとも簡単に想像させてくれるから。

あー…そういえばこの人朝早いのに大丈夫かなー…。なんて思った私がバカだったと翌日知ることになる。

***

「…………痛……。」

腰の痛みにより起こされた朝。もう隣にははたけさんは居なくて、時計を確認するともうお昼前だった。…可愛らしく行ってらっしゃいとかしようとか思ってたのに。奴は体力の鬼か?それともなんだバケモノなのか??ってぐらい長かった。あんまり寝てないと思う。大丈夫かな…

「やっと起きたか」
「あ!!」

お腹空いたしご飯食べるか…と渋々起き上がろうとした時、足元から聞こえた声。ビビッと勘が働いて、嬉しくて飛び跳ねて起きると、少しビックリした様子のわんこがいた。その名も…

「パックン!!!」
「元気が無いだろうからと拙者はここに置いて行かれたんじゃが……カカシの心配が過ぎたようだな」
「そんなことない!!すっっごい腰痛いもん!!パックンの飼い主元気過ぎない!?」
「…それはその勢いで言うものか?」
「ゴメン!!パックンに会えたのが嬉しくて…!!」
「……そ、そう言うことなら仕方あるまい」

もじもじ照れるパックンが可愛過ぎて思いきり抱き締めた。犬らしき悲鳴が一つも聞こえなくて、余計にテンションだけが上がってもっと抱き締めた。次見た時、パックンが気を失いかけていることを私はまだ知らない。

***

パックンが何を好んで食べるのか分からないので、一緒に朝昼兼用のパンを食べて夜ご飯の買い物に出た。サンマとナスの購入の為だ。お金ははたけさんから貰っている分を泣く泣く頂戴している。

「ねえパックン。どのサンマが美味しいと思う?」
「……お主、わしを猫と勘違いしてはおらんか?」
「…………まさか!パックンどう見ても犬だよ?」
「その間はなんじゃその間は」

無駄に鋭いなぁなんて思いつつ、適当に取ったサンマ。後はナス…と思いながら店の中を歩いていれば。

「お主、名前と言ったな」
「うん、そうだよ。覚えてくれて嬉しい!」
「……厄介な眼を持っておるな」
「あれ?気付いた?」
「お主から人間とは違う匂いがしたんじゃ」
「もはや人間の匂いでもないのか…」

ナスをカゴに入れながら答える。…スーパーでする話でないところが、ある意味面白いところだ。お金を払ってそそくさと店を後にして、帰り道を歩く。公園で遊ぶ小さな子どもとその母親が見えて、悲しい笑みだけが襲った。

「私もさ、あんな日常が欲しかったよ」
「……名前」
「…特殊設定は欲しかったのに、ここまでえげつない力だと、ね。」
「お主に他の道はないのか?…」

その言葉で理解する。パックンも、はたけさんから与えられた二週間しか私にはないと知っているのだと。なら、その後は火影様の元に行って……、も、きっと。眉を下げて心配そうに聞いてくれるだけで、胸が温かくなった。大丈夫だよ。、

「火影様の元には、行かなくて済むと思うから」
「…どういうことじゃ?」
「分かっちゃったんだ、私。どうすればいいかなんて」
「、名前……?」
「はたけさんが死ぬのは、もう、見たくないからさ……。」

無意識に横腹に手を当てる。触れたそれが、じんわりと熱を持つものだから、後10日ちょっと待ってね、と囁いた。