「俺の記憶、消したでしょ?」


ヤ……ヤヴァーーーイ!!!

な、なんて答えればいい?!そりゃ、何回か消しました…!でも大体が必要でしたことで、それに今回に至っては多分回避したであろう未来のことで…!でもこれ説明、絶対無理。…というか、したくない。だって、何て言うんだ。

…あなたは私を庇って死んだことがあります。それは未来だった出来事であって、それを防ぐために過去に行って色々工作しまして…って?………いやいやいや無理ありすぎでしょ!!

ザ★動揺MAX感がダダ漏れだったのようだ。私を抱き締める大きな身体が小刻みに震えているものだから、彼の胸に埋めていた顔をそっと離して見上げると、困ったように小さく笑っていたはたけさんが見えた。…っくぅ…!!胸ギュンが酷いよその顔…!!

「もうその反応、ハイとしか言ってないよ…名前、」
「……っいや、…これは、その…かくかくしかじかで」
「うん、かくかくしかじか…ね。」
「…え?」

次の言葉を丸飲みされるように、はたけさんの唇が落ちてきて、あのいとしい温もりが蘇る。私にとって過去のあの二週間は、数日前のことといっても過言ではない。ただ…彼は違う。この人はきちんとこの17年間を歩んできた人だ。そんな17年の思いというか、何というか。…伝わってくるのだ。啄まれるそれは、心臓の下の、奥の方が絞られるような、そんな、……

不意に涙が溢れる。伝わり過ぎたせいだろうか。だからこそ余計に、あなたの人生を変えたこと、邪魔をしてしまったこと、…謝らなければいけない。そう思って、止まないそれを中断すべく彼の胸をやんわり押し返して、

「……っはた、けさ「いい」
「え、」
「何も言わなくて、いい…」
「…っでも「ただ約束して欲しい」
「やく、そく…?」

やっと見上げることができるほど離れた瞬間、思わず目を見開いた。

「……もう、どこにも行かないでくれ、」

……泣いていた。あの、はたけさんが。

涙で埋もれていた視界は、さらに増して見えなくなっていく。勝手に何度も流れていくそれをやさしく拭ってくれる彼の手は、多分、これ以上の愛おしさはないほどに温かった。必死に頷いて、頷いて、頷くほど心の中で謝った。そして、誓った。

「……絶対、幸せに…します!」
「…アハハ。それ、俺のセリフじゃない?」
「だっ…て!それ以外浮かんで来なかった!」
「変なとこで男前なのも変わんないねえ…、お前は」
「…なんかすみません?」
「ハハ。逆にいいの?俺かなりおじさんになっちゃったけど」
「え?!どこが!?今すぐ襲いたいぐらい色気色気色気ですけど!!?」
「アハハ!…っもう名前過ぎてどうしようか、」

苦しいぐらい抱き締められて、私もどうしようかってぐらいです!と言えば一瞬で布団に押し付けられていて、熱の篭った視線を一気に浴びる。あーこれこれキター!!なんて目を瞑ってそれを待とうとした瞬間……

≪相変わらずお前過ぎてしんどいな…名前≫

「えっ!?」
「…名前?」

脳内に聞き覚えのある声が響いて、驚き過ぎてついはたけさんを押し返してしまった。え、ウソ、だって今の声……

「え、…あ、え…すみま、せん違うくて」
「どうした…?」
「………」

動揺が、隠し切れない。だって、大蛇丸にあげたじゃないか。……あの眼(災史眼)は。だから今はたけさんが生きていて、この世界も平和で……って、待て。もしも本当に奴におめめが渡っていたとしたら?多分はたけさんはここにいない。きっと何かの戦闘に駆り出されているはずだ。私でも分かる、あいつの好む世界は私利私欲に紛れた醜くて酷いものだと。……と、したら?


おめめは、大蛇丸の手に渡っていない?


≪やはり、お前はたまに賢い≫

「……いやマジか」