肩に寄り掛からせていたけれど、不安定なので膝にはたけさんの頭をダイブさせた(幸せ膝枕)。暫くは私のお腹に対面するように目を瞑る、彼のふさふさな銀髪を撫でていたけれど…気付いたら私も寝ていたようだ。

ふいに目を覚ましたのは、膝に落ちてきた滴の冷たさでだった。驚いて顔を覗き込むと、彼の頬を流れていたソレ。……どういう意味の、涙なのか。詰まる息のなか、できるだけやさしく指で拭った。まさかその手を掴まれるとは知らずに。

「!」
「……、…」

起きてたんですか、が、最後まで言えなかった。……あのはたけさんが、私の手に祈るように握るものだから。言葉が空気に紛れてきえた。…今は言葉なんか無くていいのだ。きっとそれがある方が余計で。伝わるのは、愛おしさなのか感謝なのか怒りなのか、全てが入り交じったような…何か。

…どこまで見せた
≪控えたつもりだぞ≫
だからどこまで
≪全てだ。≫
……。…それ控えてないから
≪お前はこの男に優しすぎる。これくらいで済んだことに感謝して欲しいものだ≫
誰だよ…

おめめとの会話は、相変わらず噛み合わない。けれどどこか懐かしくて、こんな時にホッとしてしまった。こんな空気を察してくれたのだろうか。だとしたら優秀過ぎる。…まるで相棒。

≪それはない≫
絶対突っ込んでくると思った…!それこそ控えてよ!てか勝手に心覗くなよ…。
≪すまない…聞き捨てならなかった≫
どんだけ嫌なんだよ

***

少し間があって、はたけさんはようやく身体を起こした。彼の第一声がここまで怖いことはない。…何を、言うの?そう思う私を余所に、ソファに座る私に跪いた。え…と漏れる私の声は届かない。彼は私の握ったままの手に顔を押し当てるようにして…腹の底から出てきたかのような、でもか細い、くぐもった…声。

「……守れなくて、ごめん……!」
「…っ」

すぐに、回避された未来での話だと思った。正直言われると思っていた。でも絶対に絶対にそれは違うくて、あなたのせいなんかじゃなくて、誰のせいでもなくて。悪いのは力を求めた大蛇丸だけで。、

「…それは、違います。」
「……どうして」
「だって、守ってくれた」
「!」
「嬉しくない方法でしたけど。」

少し顔を上げた彼に眉を下げて微笑むと、引き寄せられて腕の中に収まった。ちょっと震えていて、あんなにガタイのいい人なのに、小さな子どものようだった。抱き締められているのは私だけど、宥めているのは完全に私だ。そして感じる、本当に良かったと。あなたを守れて。ここに……居てくれて。

「…生きていてくれて、ありがとうございます。」
「……、…お前ね、…」
「いま、幸せですか?」
「え?…名前が俺を幸せにしてくれるんでしょ?」
「え?あ、そうですけどあれは勢いというか何というか…」
「は?勢い?」
「いやいやいや私にとっては死ぬほど本音ですけど!!え、はたけさん46歳ですよね?ご家族とか…」
「…居たら今こうなってないんじゃない?」
「……あ、なるほど。」
「独り身の責任、押し付けてもいい?」
「…え!?え!?逆ハーレム!?!?」
「アハハ。変わってないね」

額に唇が落ちてきて、二人で微笑んだ。しあわせだ。しあわせ、だけど……知っている。大きな問題があることを。でも今だけ、今だけはこのままで。だってそれを解決したら私、消えてしまうでしょ?


…ねえ。こういう時こそ何か言ってよ、
おめめ…