―――…私を知る者がいない木の葉って。前だって知らない間に自分の存在消しちゃったわけで、どこに行っても誰も私のことなんて知らないと思いますけど。…なんて屁理屈みたいになってしまったが、実際そうである。今すぐ眼をほじくり出されると思っていたので、ある意味拍子抜けだ(良い意味で)。

「…何故?」
「あら。生かされて嬉しくないの?」
「それはそうだけど…それよりもアンタが何考えてんのかが怖い」
「お前…意外と賢いのね。分かってるじゃない」
「…で?」
「その眼を無理矢理奪うと効力を失う。保持者が望んで譲渡しないと意味がないの」

いや絶対お前になんか望んでやんねーぞ?と一瞬の隙間もなく思った。けど、奴は表情一つ変えず気持ち悪い笑みのままだった。…まだ何かある。こちらがそう簡単に渡すはずがないんだから。

「だから今は木の葉に返してあげるのよ」
「…今じゃないってそういうこと?」
「ええ。お前は必ず、自ら私にその眼を渡したくなるわ。必ずね…」
「……すごい自信」
「私がこれを持っている限り、ね。」

知らない間に取られていたらしい予言の書を見せ付けられる。…正直、すごい量の情報を与えられたせいか頭が働かない。あいつがその…私?のことを言ってる予言の書が切り札のように見えない。でも奴がそう言うぐらいだから、きっと私にとって不利なものなのだろう。でも、それを今奪えるだけの力は到底ない。だから、もっと先にこのことを後悔したとしても、きっとどうにもならなかったことなのだ。

「じゃあね、私の可愛い名前ちゃん。早くまた来て頂戴」
「……」

……悔しい。何もかもこいつの思い通りにしか動けないことが。こんな眼を譲渡するための駒でしかないことも。全て。額に何か翳されて、意識が遠くなっていく。…ああ、私どこに行くのだろう。まあどこでもいいか…誰も私のことなんて知らないんだから。

***

「おい!起きろ!」
「…………、…ん……?」

肩を揺さぶられて意識が世界に落ちる。目を開けると、……奈良シカマル。…あれ?これって、もしかして……

「アンタこんなとこで何してんだ。酔っ払い…ではねえよな」
「………あぁ……。」
「…おい?聞いてんのか?」

まだ子どもの影を残した彼に、忍服に、死の森チックな背景。……はい、おかえり2回目。私はどうやら、大蛇丸のアジトに連れて来られる前に戻ったらしい。にしても時空間忍術使いこなし過ぎじゃない!?

「俺の顔になんか付いてんすか。」
「え?」
「すげぇ見てくるから」
「あぁ……いやそういう意味では……。」

今と同じシーンを多分数時間前にも見たなぁ…。と思っていただけです、なんてもちろん言えず。だってこの後アレでしょ?忍じゃないって聞くんでしょ?お?お?

「忍…って感じでもねえな」
「(ほらキターーー!!!)あ…多分…」
「多分?」
「なんか…記憶…が……」

いや私も同じように演じる意味な。ニヤニヤすんなよ自分(ていうかシカマルと話すの嬉しいだけ)。